対面営業・商談

無料相談はどこまで受けるか|先に線を引いておくと、値段の話に戻しやすい

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

無料相談はどこまで受けるか——線が引けないのは、親切だからではない

線が引けなくなる3つの場面

  • 初回打ち合わせで、進め方どころか設計案まで話してしまう
  • LINEやメールの「ちょっと教えてください」に、毎回答えている
  • 見積を出す前に「まず見てもらえますか」と頼まれて、現物を見てしまう

身に覚えがある人、多いんじゃないでしょうか。1つ1つは小さな親切のつもりでも、積み重なると初回の打ち合わせだけで半日仕事が終わっている、というようなことが起きます。相手からすれば「聞いたら答えてくれた」だけなので、悪気はありません。気づいたら無料でだいぶ働いている側だけが、あとで疲れます。

断れないからでも、親切だからでもない

無料で答え続けてしまうのは、性格が優しいからでも、押しに弱いからでもありません。「ここから先は有料です」と言う瞬間が、自分の値段を口にする瞬間になっていて、それが言えないからです。

値段が言えない型かもしれません。金額を言うことが、自分の値打ちを言うことになっていて、口に出せない型です。無料相談の線が引けないのも、根っこは同じところにあるという人が多いです。値段を下げているつもりはなくても、線を引かないことで結果的に無料の範囲が広がっていく。本人は「サービスのつもり」でも、外から見ると値段の話を避けているように見えることがあります。

先に答え:無料は「聞いて、進め方を示す」まで

結論を先に言います。無料の範囲は「相手の状況を聞く」「どう進めるかを示す」まで。「具体的に作る・直す・答えを出す」は有料です。

線は相談を断るために引くのではありません。値段の話に戻る場所を、先に作っておくために引きます。フリーランスの営業のやり方の中でも、無料相談の線引きは一番早い段階でつまずきやすいところです。ここでつまずくと、案件が始まる前から自分の時間を持っていかれ、その後の値段交渉にも影響します。この記事では、その線の引き方を、そのまま使える言い方で書いていきます。

無料と有料の境目——「聞く」は無料、「作る」は有料

3段階に分ける表

段階内容無料/有料
①状況を聞く困っていること・今の状態・いつまでに何が欲しいか無料
②進め方を示すどの順で何をやるか、期間の目安、費用の幅無料
③具体的に作る・直す・答えを出すラフ案、修正の指示、書面のチェック、原因の特定有料

①と②は「相手が自分で判断するための材料」です。③は「相手に渡す成果物」です。ここの違いを自分の中に持っておくと、目の前で何か頼まれたときに、迷わず線を引けます。

職種別の線の例

  • デザイナー: 方向性の話は無料。ラフ1案でも有料
  • エンジニア: 困りごとを聞くのは無料。コードを見て直し方を書いた時点で有料
  • ライター: 企画の相談は無料。見出し案を出したら有料
  • 士業: 一般的な考え方の説明は無料。個別の書面や数字を見て答えるのは有料
  • 施術者・講師: 体験1回は無料でも、個別の計画表を作ったら有料

自分の職種だとどこにあたるか、当てはめてみてください。境目は職種ごとに違っても、「聞くまでは無料」「作ったら有料」という考え方の軸は同じです。

落とし穴:答えを渡しきると、売るものが残らない

無料のうちに答えを全部渡してしまうと、有料で頼む理由が相手に残りません。

NG例です。初回打ち合わせで「こうすればいいですよ」と手順まで話してしまい、相手が「じゃあ自分でやってみます」で終わる。エンジニアなら原因の切り分け方まで教えてしまい、ライターなら見出し案を口頭で出してしまう。どれも同じ構造で、親切のつもりが自分の仕事を自分で消しています。

答えを出す前に「ここから先は有料の範囲です」と区切っておく。これは相手にとっても、どこまでが無料でどこからがお金のかかる話か分かるので、案内として受け取ってもらえます。

時間と回数で線を引く——弁護士の無料相談から借りる考え方

弁護士事務所は時間と回数で区切っている

弁護士の無料相談で無料なのは「法律相談料」の部分だけです。相談した場合にかかる法律相談料と、調停や訴訟を依頼した場合にかかる着手金・報酬金は別のものとして扱われています。

事務所によっては「無料相談は1時間まで」と時間で区切っていたり、法テラスでは1つの問題につき3回まで・1回30分程度と回数と時間の両方で枠を決めていたりします。「無料イコール全部無料」ではなく、「無料なのはこの部分だけ」と分けている考え方です。士業の仕組みそのものを真似る必要はありませんが、この「部分を区切る」発想は、職種が違っても借りられます。

事務所ごとに無料相談の範囲や金額の決め方は違うので、実際に弁護士へ相談する際は各事務所に直接確認してください。契約条件など個別の判断が必要な場面は、専門家に相談することをおすすめします。

自分の数字を先に決める

初回30分か60分か、1回きりか2回までか。これを、今日決めてください。

決め方の基準は「この時間なら相手が来なくなっても腹が立たない」範囲です。腹が立つ手前の時間、というのが目安になります。

例:

  • 初回60分・1回まで
  • メールでの質問は2往復まで
  • 現物の確認は見積の後

数字は職種や単価で変えていいです。写真の仕事なら現地の下見までは無料でも撮影プランの提出は有料、講師の仕事なら体験1回までは無料でも継続の計画表は有料、というように分ければ十分です。一番まずいのは「決めていない」状態です。決めていないから、聞かれるたびにその場で判断することになり、判断のたびに疲れます。

数字があると、断りではなく案内になる

「これ以上は無理です」は断りに聞こえます。「初回は60分でやっています」は案内に聞こえます。

同じ線でも、数字を先に出しておけば、相手は「じゃあ60分で聞きたいことをまとめよう」と自分で動けます。相手も線が見えていないから際限なく聞いてくるだけで、示されれば困りません。線を引くことは、相手の時間の使い方を助けることでもあります。

線を先に伝える言い方——問い合わせの返信と当日の冒頭

問い合わせ返信の文例

そのまま使える文面です。

初回は60分ほど、いまの状況を伺って、どう進めるのがよいかをお伝えする時間にしています。無料です。そこから先の具体的なご提案や制作は、お見積をご覧いただいてから進めます。

ポイントは、「無料です」の直後に「その先は見積で」を同じ文の中で言うことです。あとから言うと、断りに聞こえます。最初の返信メール1通に両方入れておけば、それだけで済みます。

当日の冒頭で言う一文

打ち合わせの最初に言う一文です。

今日は状況を伺って、進め方までお話しします。具体的な案はお見積の後に出しますね。

これを言っておくと、途中で「案を見せて」と言われても「それは見積の後で」と戻せます。言うタイミングは冒頭です。話が盛り上がってからでは、切り出しづらくなります。冒頭の10秒で言えることなので、慣れるまでは打ち合わせの前にメモしておいてもいいくらいです。

NG例:線を引かずに始める言い方

  • 「無料でいいですよ」
  • 「とりあえず見てみますね」
  • 「気軽に聞いてください」

この3つは線がありません。あとから引こうとすると「急に有料と言われた」と受け取られます。線は最初に引くのが一番楽で、途中から引くのが一番つらいです。同じことを伝えるにしても、最初に言うか後で言うかで、相手の受け取り方は大きく変わります。

知り合いや紹介の相手ほど、線を先に伝えておく

紹介や知り合い経由の相談は、線がゆるみやすい場面です。「知り合いだから」「紹介してもらった手前」で、つい多めに答えてしまう人は多いです。ですが、線を緩めるほど、後で「あの人には特別にやってもらった」「知り合いだから今回も」という話につながりやすくなります。関係を守りたいなら、むしろ知り合い相手にこそ、最初に同じ線を伝えておくほうが安全です。「いつもこの流れでやっています」と伝えれば、特別扱いではなく普段のやり方として受け取ってもらえます。相手を選んで線を変えると、あとで自分の首を締めるのは自分です。

線を越えたときの対応は、別記事で扱っています

ここまでは無料の範囲を先に決めておく話でした。実際に相手が線を越えてきた場面での言い方や、すでに無料で答えてしまった後の立て直し方は、無料相談から有料に切り替えるときの伝え方と例文にまとめています。あちらは決めた範囲を実際にどう切り替えて言うか、この記事は範囲そのものをどう設計するか、という役割分担です。

無料相談の線引きシート——書き込んで手元に置く

5つの欄を埋める表

項目記入欄
①無料でやること
②有料になること
③時間と回数
④最初に伝える一文
⑤越えそうなときの一文

記入例:デザイナーの場合

項目記入例
①無料でやること課題と希望を聞く、方向性を話す
②有料になることラフ案、色や書体の指定、修正
③時間と回数初回60分・1回
④最初に伝える一文初回は60分、方向性までお話しします。ラフはお見積の後で
⑤越えそうなときの一文ラフは有料の範囲なので、金額を出しますね

記入例:ライターの場合

項目記入例
①無料でやること企画の背景や目的を聞く
②有料になること見出し案、構成案、原稿
③時間と回数初回45分・1回
④最初に伝える一文初回は企画のお話までです。見出し案からはお見積の後で
⑤越えそうなときの一文見出し案は有料の範囲なので、お見積を出しますね

他の職種は、自分の言葉に置き換えてもらえば、そのまま使えます。

今日やること1つ

問い合わせ返信のテンプレに「初回○分・無料」と「その先はお見積で」の2つを書き足してください。これだけで、次の相談から線がある状態で始められます。

値段の話に戻る場所を、先に作っておく。それが線を引く目的です。

よくある質問

無料相談はどこまで受けるのが普通ですか?

相手の状況を聞いて、進め方を示すまでが無料の目安です。具体的に作る・直す・答えを出す段階は有料になります。時間なら初回30〜60分、回数なら1回までと先に決めておくと、相手にも伝えやすくなります。

無料相談で答えを教えすぎると仕事が減りますか?

減ります。無料のうちに手順や案まで渡すと、相手が有料で頼む理由が残らなくなります。答えを出す前に「ここから先は有料の範囲です」と区切っておくと、相手にとっても分かりやすくなります。

無料相談の時間は何分くらいが目安ですか?

弁護士事務所では無料相談を1時間までとしている例があり、法テラスでは1つの問題につき3回まで・1回30分程度という枠を設けています。自分の場合は「相手が来なくなっても腹が立たない時間」で決めるのがおすすめです。目安としては30分か60分、1回までにしておくと判断しやすくなります。

無料相談を有料に切り替えるタイミングはいつですか?

最初の返信で「初回は無料、その先は見積で」と言っておくのが一番楽です。すでに無料で答えてしまった場合の引き直し方や例文は、無料相談から有料に切り替える記事で扱っています。

無料相談を有料にすると言ったら、感じが悪くなりませんか?

数字を先に示しておけば、相手は自分で「その時間内で聞きたいことをまとめよう」と動けます。線が見えていないから際限なく聞いてくるだけなので、先に示すのは断りではなく案内になります。

参照した情報源

  1. 弁護士への無料相談はどこまで無料? 準備や注意点など疑問点を解決(弁護士保険のエール少額短期保険)・確認日 2026-09-20

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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