対面営業・商談
工務店・リフォーム会社の営業|チラシより先にやること
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
仕事が途切れるのはチラシが足りないからではない。前に工事した家との線が切れているだけ
半年先の工事の予定が埋まっていない。少し前までは紹介と口コミで回っていたのに、この1年で問い合わせがはっきり減った。気づけばポスティング業者の見積を取り寄せて、チラシの枚数と単価を比べている——という状況に心当たりがあるかもしれません。

チラシを探しているとき、頭の中で起きていること
チラシやポータルサイトを検討するとき、その理由は「営業が下手だから」とは限りません。社長自身が現場に出ていて、営業に回す時間そのものが無いからです。紙に営業を代わりにやってもらおうとしている、というだけの話です。現場が最優先の会社であれば、これはむしろ自然な順番です。
目の前優先型かもしれません
目の前優先型かもしれません。営業がいつもあとまわしになり、自分が動かないと仕事が入らない状態が続く型です。「経営が分かっていないから仕事が取れない」わけではなく、腕はそのままで、仕事の取り方だけを習わないまま社長になった、という人が多いように思います。だとすれば、社長らしくなる必要はありません。会社案内を作り直すことでも、営業担当を新しく雇うことでもなく、もっと小さいところから始められます。
実際に工事した人の4人に1人は、探す前から依頼先を持っている
住宅リフォーム推進協議会の実態調査によると、リフォーム事業者についての情報入手方法は、実際に工事をした人(実施者)では「いつも工事を依頼している業者」が24.7%で最も高く、まだ検討している段階の人では「テレビ」が29.5%で最も高くなっています。
この2つの数字が並んでいるのを見ると、ひとつの見方ができます。テレビや広告で出会えるのは、まだ「やる」と決めていない層が中心ではないか、という見方です。すでに工事をする覚悟を決めた人では、単独の回答としては「いつもの業者」が最も多い、とも読めます。調査そのものが示しているのは入手方法の割合であって、それ以上のことは言っていません。ここから先は解釈として置いておきます。
この記事で渡す方法は1つだけです。過去に工事した家の名簿を1枚に戻し、引渡しからの経過年で連絡する順番を決める。新しい客を探しに行く前に、まず「いつもの業者」という1位の席に、自分の名前で座り直すということです。
施主が業者を決める一番の理由は、工事の質より先に担当者の対応
選定理由の順位

同じ調査で、実際にリフォームした人が事業者を選ぶときに重視した点を見ると、最も多かったのは「担当者の対応・人柄」で44.6%でした。次に「工事の質・技術」が32.2%、「工事価格の透明さ・明朗さ」が29.3%と続きます。
腕が要らないという話ではない
これは腕を軽く見ていい理由にはなりません。施主は工事が終わるまで、工事の質そのものを判断する材料を持っていないと考えられます。判断できないものは判断材料にならないので、判断できるところ——つまり対応——で決めているだけだと考えられます。腕がある前提で、対応の部分に差がつく。そう考えたほうが実情に近いはずです。
対応として見られている3点
現場では、次の3点が「対応」として見られていると考えられます。
- 返事が返ってくる速さ
- 現地で口で言ったことが、後から紙に同じ言葉で出てくるか
- 金額の内訳をその場で説明できるか
NG例を1つ挙げます。現地調査に行って「後日お見積りをお持ちします」とだけ伝え、そのまま3週間空いてしまう。施主から見るとこれは、腕の判断材料にはならず「この人は連絡が来ない人だ」という印象につながると考えられます。
持ち帰るとしたら、現地調査の帰り際に「◯日までにお出しします」と日付を言い切ることです。出せない日付は言わない。これだけで、44.6%の人が見ている土俵に立つための土台になります。
迷ったときの判断基準はこうです。「今、自分がこの現場で言ったことを、あとで施主が見返せる形にしているか」。口頭だけで終わった約束は、施主の記憶の中でしか残りません。日付・金額・工事内容は、その場でメモを渡すか、当日中にメールかLINEで一文だけでも送っておく。これだけで「対応がいい業者」という印象の土台になります。
チラシより先にやる3つ——OB名簿・点検の連絡・工事中の現場
①OB客名簿を1枚に戻す

項目は5つだけです。施主名/工事内容/引渡し年月/次に手を入れそうな場所/最後に連絡した日。表計算ソフト1枚で十分で、専用の顧客管理システムは要りません。
名簿を作る材料はすでに社内にあります。過去の請求書、工事写真のフォルダ、年賀状の宛先リスト。ゼロから集めるのではなく、社内に散らばっているものを1枚に集めるだけの作業です。
②引渡しからの経過年で連絡する
連絡の用件は点検の案内にします。売り込みではなく、理由のある連絡にするということです。そのまま使える文面の例です。
◯年前に浴室を工事させていただいた◯◯です。そろそろ一度、目視だけ見に伺えます。ご都合の悪い日を教えてください。
別の文面例です。キッチンを工事した施主宛てなら、たとえばこうなります。
◯年前にキッチンを工事させていただいた◯◯です。近くまで来る用事があるので、換気扇の調子だけでも見せていただけないかと思いご連絡しました。5分程度で終わります。
耐用年数を理由に「そろそろ壊れます」と言うのは避けます。言えるのは「引渡しから◯年」という、自社の記録として確認できる事実だけです。
NG例は「何かあったらいつでも言ってください」で終える連絡です。これだと施主の側が用件を考える作業を丸ごと引き受けることになるので、返事は来にくくなります。もう1つのNG例は、点検の案内のはずが「そろそろ次のリフォームはいかがですか」と提案まで一度に詰め込むことです。用件を1つに絞らないと、点検の連絡そのものが売り込みに見えてしまいます。
③工事中の現場を営業の場として扱う
近隣へのあいさつ、養生シートへの掲示、完成時の近所への声かけ。チラシと違い、実物と職人の仕事ぶりが同時に見える場所は他にありません。
3つに共通しているのは、こちらから接点の日付を決めていることです。相手の番のまま止めない、ということです。
連絡する順番は、引渡しが古い施主からにします。新しい施主ほど、まだ何かあれば自分から連絡してくるので、放っておいても関係は切れにくいからです。古い施主ほど記憶が薄れ、次にどこかを直すときに真っ先に候補から外れます。「切れかけている順」に手を付ける、というだけの考え方です。
チラシを撒くなら順番を守る——1位の枠を空けたまま2位を取りに行かない
チラシは効かない、ではない
チラシそのものを否定する話ではありません。ただ、すでに工事をした人(実施者)の情報入手方法で最も多かった回答は「いつも工事を依頼している業者」24.7%です。この1位の枠を自社が空けたまま、新しい広告で認知を広げようとするのは、遠回りになりやすいという話です。効く・効かないではなく、順番の問題として扱ってください。
撒く範囲を絞る
撒く範囲は、施工実績のある家の周辺と、いま工事中の現場の近隣に絞ります。理由は単純で、そこだけは施主が実物を見られるからです。同じ枚数を撒くなら、範囲を狭くして回数を増やすほうが、実物との距離が縮まります。
判断に迷ったら、「このチラシを見た人が、歩いて見に行ける工事現場があるか」を基準にしてください。無ければ、そのチラシは実物を見せる力を持たないまま、写真と言葉だけで信じてもらおうとしていることになります。
載せる中身を入れ替える
創業◯年、自社施工、地域密着だけを並べた面を、担当者の顔写真と「どこを・何日で・いくらで」直したという1件の実例に差し替えます。選定理由の1位が担当者の対応・人柄である以上、紙の上でも先に人を見せるということです。
NG例は、会社の沿革と施工実績の写真だけを並べたチラシです。読み手はそれを見ても、自分の家に何が起きるのかを想像しにくいと考えられます。
見積で「一式」をやめる——価格の透明さは選定理由の3位
一式をやめて行を分ける

事業者を選ぶときの重視点で「工事価格の透明さ・明朗さ」は29.3%です。総額を1本で出すと、相手にできる相談が値引きしか残りません。項目を分けた瞬間、話は「どれを外すか」という相談に変わります。
分け方の例です。解体・処分/材料/人工×日数/設備機器/諸経費。細かすぎる必要はなく、施主が指を差して「ここ」と言える粒度で十分です。
相見積もりで高いときの答え方
金額を下げる前に、中身の違いを1行で言います。
下地をやり替える前提で入れています。既存のまま貼るなら◯万円下がりますが、◯年後に同じ場所をもう一度触ることになります。
追加費用は着工前に言う
「壁を開けて土台が傷んでいた場合は追加になります」と、起こりうる場面を先に列挙して紙に残します。開けてから初めて言うと、同じ金額でも不信感につながります。
NG例は「そこはサービスしときます」です。一度サービスにすると、次の工事でも同じ扱いが前提になってしまいます。迷ったときの判断基準は、「この金額を下げた理由を、次に同じ施主から聞かれたときに同じ言葉で説明できるか」です。説明できない値引きは、その場しのぎになりやすく、あとから自分の首を絞めます。
現場に出たまま営業を回す段取り——社長がやる部分と、渡す部分
後回しになるのは意志の問題ではない
現場が終わる時間は読めません。だから営業は予定に入りません。予定に入らないものは、やる気があっても消えていきます。これは意志の弱さではなく、構造の問題です。
渡せる仕事と渡せない仕事を分ける
渡せる仕事は、名簿の入力、はがきの印刷と発送、工事写真の整理、点検日程の候補出しです。渡せない仕事は、施主と会って話すこと、金額を伝えることです。事務担当や若手に渡せるはずの仕事を、社長が一人で抱えている会社は少なくありません。
やる日を先に決める
雨で現場が流れた日、現場が早く終わった日を、あらかじめ営業の日と決めておきます。決めていない予備日は、そのまま休みになります。月の目安は、OBへの連絡3件、見積のフォロー2件、合計2〜3時間です。
たとえば「雨の日は午前中に名簿の電話・LINEを3件」「現場が15時に終わった日は、その足で近くのOB宅に顔を出す」というように、条件と行動をあらかじめセットにしておきます。天気予報を見た時点で、その日の営業をやるかどうかまで決まっている状態が理想です。
社長らしくなる必要はありません。会社案内を作り直すことでも、営業担当を雇うことでもなく、名簿1枚と月2〜3時間から始められます。
そもそもの営業の型を工程ごとに知りたい場合は、独立後の営業のやり方も参考にしてください。
今日・今週・3か月でやることの順番
| いつ | やること | かかる時間 | 終わったと判断する目安 |
|---|---|---|---|
| 今日 | 過去2年の請求書から施主名を10件書き出す | 30分 | 10行埋まったら終わり |
| 今週 | 名簿5項目を何件か埋める。引渡しが古い順に並べ替える | 2時間 | 並べ替えまで終わったら終わり |
| 今月 | 引渡しから年数が経っている順に10件へ点検の連絡を出す | 1時間 | 10件送信したら終わり |
| 3か月 | 返事があった相手に会いに行く。工事中の現場で近隣あいさつを毎回やる | 現場ごと | 訪問記録が残っていれば可 |
3か月後に見る数字は、問い合わせの総数ではありません。「OB・その紹介から来た件数」です。チラシの効果と混ざらないように、分けて数えてください。
止まったと感じたら、名簿の「最後に連絡した日」が1年以上前になっている行を見てください。そこが、切れかけている取引先です。
よくある質問
工務店の営業は何から始めればいいですか
過去に工事した施主の名簿を1枚に戻すところから始めます。実際にリフォームした人が事業者の情報を得た経路は、単独の回答としては「いつも工事を依頼している業者」24.7%が最も多く、工事をする人ほど探す前から依頼先を持っているとうかがえるためです。新規開拓より先に、その1位の枠に自社の名前を戻します。
リフォーム会社のチラシは効果がありますか
チラシがまったく効かないわけではありません。ただ、すでに工事をした人(実施者)の情報入手方法で最も多かった回答は「いつも工事を依頼している業者」24.7%です。この1位の枠を空けたまま新しい広告を打つのは遠回りになりやすいので、撒くなら施工実績のある家の周辺と工事中の現場の近隣に絞り、会社の沿革ではなく担当者の顔と工事の実例を載せることをおすすめします。
OB客に連絡すると売り込みだと思われませんか
用件を点検の案内にすれば、売り込みの連絡にはなりません。「◯年前に◯◯を工事させていただいた◯◯です。一度、目視だけ見に伺えます」のように、理由と日程だけを伝えます。「何かあったら言ってください」で終える連絡は、施主に用件を考えさせることになるので、返事が来にくくなります。
相見積もりで負けるのは価格が高いからですか
施主が事業者を選ぶときの重視点は「担当者の対応・人柄」44.6%が最も高く、「工事の質・技術」32.2%、「工事価格の透明さ・明朗さ」29.3%と続きます。金額そのものより、内訳が分かるかどうかが見られています。総額一式をやめて項目を分け、他社より高い理由を中身の違いで1行説明することをおすすめします。
社長が現場に出ていて営業の時間が取れません
現場が終わる時間が読めないと、営業は予定に入りません。雨で流れた日と現場が早く終わった日を、あらかじめ営業の日と決めておくのがおすすめです。目安は月2〜3時間(OBへの連絡3件、見積のフォロー2件)。名簿入力・はがき発送・写真整理は他の人に渡し、会って話すことだけを社長が持ちます。
参照した情報源
- 「住宅リフォームに関する消費者・事業者に関する実態調査」について(令和7年2月)(一般社団法人住宅リフォーム推進協議会)・確認日 2026-09-10
- 「住宅リフォームに関する消費者・事業者に関する実態調査」について(令和7年2月)(一般社団法人住宅リフォーム推進協議会)・確認日 2026-09-10
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