対面営業・商談
工事が終わったときの挨拶|施主と近所に伝えることと、挨拶文の例文
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
工事完了の挨拶で伝えるのは4つ:お礼・終わった内容・困ったときの連絡先・次のひと言
工事完了の挨拶で伝えることは、次の4つです。
- お礼:工事中に協力してもらったことを、具体的に1つ挙げて伝える
- 工事でやったことと、注意点の確認:何をしたか、使うときに気をつけることは何か
- 不具合があったときの連絡先:誰に、どう連絡すればいいか
- 次のひと言:「気になることが出たら、小さなことでも連絡ください」
①〜③は、きちんとした会社ならたいていやっています。分かれ目は④です。④を入れるかどうかで、引き渡しが「最後の日」になるか、「つながりの始まり」になるかが変わる、と私は考えています。
仕事の取り方の全体の順番は、フリーランスの営業の進め方にまとめています。この記事は、その中の「終わったあと」の場面だけを切り出したものです。
引き渡しの日は、施主が仕事の出来を一番はっきり覚えている日
私は、引き渡しの日は、施主が仕事の出来をいちばんはっきり覚えている日だと見ています。完成した場所を目の前で見て、説明を聞いて、鍵や書類を受け取る。工事の記憶が一番新しい日です。
手に職のある人ほど、仕事の中身で勝負してきた自負があります。だから挨拶は「礼儀として済ませるもの」に分類されやすい。これは私の仮説です。この考え自体は、間違いとは言えません。腕のいい仕事は、実際に評価されています。
ただ、満足してもらえたのに次につながらないとき、腕が悪かったとは限りません。終わったあとに、施主が思い出すきっかけがなかった。そういうことも多い、と私は見ています。
施主への引き渡しの場で話す順番と、そのまま使える言い方
話す順番の表
引き渡しの場では、次の順番で話すと、言い忘れが出ません。
| 順番 | 話すこと | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | お礼 | 工事中に協力してもらった点を1つ、具体的に挙げる(駐車場を貸してもらった、在宅で立ち会ってもらった、など) |
| 2 | やったことの確認 | 図面や写真を見ながら、どこをどうしたかを一緒に確認する |
| 3 | 使い方と注意点 | 使い始めに気をつけること、手入れのしかた |
| 4 | 連絡先と保証の範囲 | 誰に連絡すればいいか。何が保証の対象か(契約書や保証書に書いてあることを、そのまま説明する) |
| 5 | 次のひと言 | 小さなことでも連絡してほしいこと、いつ連絡するか |
保証の範囲や契約上の扱いは、会社と契約内容によって違います。迷うときは、個別の判断を専門家(弁護士・行政書士など)に相談してください。
1番にお礼を置くのは、最初に感謝を伝えると、そのあとの確認や注意点の説明が、施主にとって「指示」ではなく「引き継ぎ」として聞こえやすいからだと私は思っています。
お礼で挙げる場面は、大きなことでなくて構いません。「毎朝、車を動かしてもらった」「雨の日に玄関を開けておいてもらった」。施主が覚えている場面を1つ言えると、言葉が形だけに聞こえません。
口頭の例文
5番までを1つにつなげると、こうなります。
「長い間ご協力いただき、ありがとうございました。とくに〇〇の日は在宅していただいて、助かりました。 今日で工事は終わりですが、使ってみて気になるところがあれば、小さなことでもこちらの番号に連絡ください。 1か月後に一度、様子をうかがいに連絡します」
ポイントは最後の一文です。「1か月後に連絡します」と、こちらから言っておく。これで、あとの連絡が「営業の電話」ではなく「約束した確認」になります。連絡を出す側も、受ける側も、気が楽になります。
NG例と言い換え
NG1:「何かあったら言ってください」だけで帰る
親切な言葉ですが、いつ・誰に・どこまでを言えばいいのかが分かりません。施主は「こんなことで連絡していいのか」と迷い、そのまま連絡しなくなりやすい、と私は見ています。
言い換え:「水の出が気になる、扉の閉まりが変だと思う、そのくらいのことでも、こちらの番号に連絡ください。私が出られないときは、折り返します」
NG2:お礼だけ言って、次の連絡予定を言わない
気持ちよく終わりますが、そのあと双方とも連絡する理由がなくなります。
言い換え:「1か月ほどしたら、使い心地を聞かせてもらうために連絡します。そのとき、気になることがあれば教えてください」
NG3:その場で「紹介してください」と頼んで気まずくなる
引き渡しの日は、施主がいちばん気持ちが高い日かもしれません。でも、その場で頼まれると、施主は断りにくくなります。ここで焦って頼む必要はありません。
言い換え:「また何か困ったことがあれば、話だけでも聞かせてください」。頼む言葉ではなく、思い出してもらう言葉にとどめます。
引き渡しのあとに送る挨拶文の例文(メール・はがき・LINE)
口頭で伝えたあと、文面でも一度送ります。目安は、当日から3日以内です。3日以内と決めるのは、施主の記憶が新しいうちに、名前と連絡先をもう一度手元に残すためです。決まりではなく、私の目安です。
当日〜3日以内に送るお礼メールの例文
件名の例:
〇〇様邸 工事完了のお礼(〇〇工務店 〇〇)
本文の例:
〇〇様
先日はお引き渡しの場で、お時間をいただきありがとうございました。 工事中は、駐車場をお貸しいただき、本当に助かりました。おかげで予定どおり進められました。
使い始めて気になることが出ましたら、小さなことでも、このメールか下記の電話にご連絡ください。 電話:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇(担当:〇〇)
1か月後に一度、使い心地をうかがうご連絡をいたします。 今後ともよろしくお願いいたします。
〇〇工務店 〇〇
順番は、お礼→工事中の具体的な一場面→連絡先→1か月後に連絡する予定、です。「工事中の具体的な一場面」は、引き渡しの口頭で挙げたことを、もう一度書けば足ります。同じ話を二度言うことになりますが、文面に残るほうが、施主はあとで見返せます。
はがきで送る場合の例文
年配の施主や、法人の施主には、はがきが合う場合もあります。メールより手間がかかるぶん、気持ちが伝わりやすいと私は見ています。ただ、これも相手や会社の慣習次第です。
印刷の定型文:
拝啓 先日の工事では、長い間ご協力をいただき、ありがとうございました。 おかげさまで、無事に引き渡しを終えることができました。 使い始めて気になることが出ましたら、小さなことでも下記までご連絡ください。 〇〇工務店 〇〇 電話〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
手書きで一言添える場所は、定型文の下です。ここだけは、その施主に向けた一文を、1〜2行で書きます。
玄関の手すり、お母様が使いやすいと言ってくださったのが嬉しかったです。
手書きの一言は、引き渡しの場で出た言葉を拾うのがいちばん書きやすいです。引き渡しの帰りに、メモを1行だけ残しておくと、あとで困りません。
LINEで送る短い例文
施主とLINEでやりとりしていた場合は、短く送ります。3行以内で足ります。完成後の写真を1枚つけます。
〇〇様、今日はありがとうございました。 完成写真をお送りします。 気になる点は、このLINEにいつでもどうぞ。
写真をつける理由は、施主が家族や知人に見せやすいからです。「ここ、きれいになったんだよ」と見せる場面で、写真と一緒に、工事をした人の名前も残ります。見せられた人が「どこに頼んだの?」と聞いたとき、LINEのやりとりごと見せてもらえる可能性もあります。
近所への完了挨拶:どこまで回るかと、何を言うか
回る範囲は、工事前に挨拶した家と同じでいい
近所にどこまで回るかに、決まった基準はありません。私は、着工前に挨拶した範囲を目安にするのがいちばん分かりやすいと見ています。工事前に「ご迷惑をおかけします」と伝えた家には、「終わりました」も伝える。それで話が閉じます。
全部を同じ重さで回れないときは、音・車・ほこりで迷惑をかけた家を優先します。工事中に苦情や声かけがあった家は、とくに丁寧に回ります。
近所向けの口頭例文
「〇〇様邸の工事を担当した〇〇です。本日で工事が終わりました。 長い間、音や車の出入りでご迷惑をおかけしました。ご協力ありがとうございました」
ここで、自社の宣伝はしません。名刺を渡す程度にとどめます。近所の人にとって、工事は「迷惑をかけられた側」の話です。終わったときに営業の話をされると、お礼の気持ちが消えてしまいます。
留守の家に入れる手紙の例文
留守のときは、短い手紙をポストに入れます。工事期間・お礼・連絡先を入れます。
〇〇様邸(〇〇番地)の工事は、〇月〇日をもって完了いたしました。 〇月〇日から〇月〇日まで、音や車の出入りでご迷惑をおかけしました。 ご協力いただき、ありがとうございました。 工事についてお気づきの点があれば、下記までご連絡ください。 〇〇工務店 担当〇〇 電話〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
「このあたりで工事のご相談があれば、お気軽に」を入れるかどうかは任意です。入れる場合も、1行までにします。それ以上は、お礼の手紙が広告に変わります。
NG例
- 完了の挨拶を省いて、黙って足場を片付けて帰る:着工前に挨拶していたなら、完了を言わないと、工事が終わったのかどうか分からないままになります
- チラシだけをポストに入れる:お礼の言葉がないチラシは、挨拶として受け取られにくいです
「いい仕事をすれば紹介される」が、引き渡しの日に止まる理由
施主は満足していても、人に話す場面がない
工事が終わると、施主の生活はふだんに戻ります。毎日の暮らしの中で、工事をした人の名前や電話番号を見る場面はほとんどありません。誰に頼んだかを話すのは、知人から「どこに頼んだの?」と聞かれたときくらいです。
そのとき、施主の手元に名前と連絡先がなければ、話は続きません。「どこだったかな、あとで調べておくね」で終わります。紹介が出るかどうかは、満足したかどうかよりも、この場面で名前が出てくるかどうかで決まる、と私は見ています。
行動を書いてから型名を添える
引き渡しで丁寧にお礼を言い、それで仕事は終わったと考える。いい仕事をしたのだから、紹介はそのうち来ると待つ。ここまでの動きは、真面目な人ほど自然にとっている行動です。
この状態を、ここでは「紹介待ち型」と呼びます。いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらうための働きかけをしていない状態のことです。
私は、この型にいる人は多いと見ています。そして、紹介が来なくなったとき、「仕事が減った」と感じる人が多いかもしれません。けれど、減ったのは仕事ではなく、思い出してもらえる機会のほうではないか、と私は考えています。
腕のせいとは限りません。思い出すきっかけを渡す工程が、習う機会のないまま空いていただけ、ということもあります。
「紹介してください」と言わなくていい
頼むのが苦手なら、頼まなくて構いません。紹介をお願いする言葉の代わりに、思い出してもらう言葉に置き換えます。
- 「困ったことがあれば、私に連絡ください」
- 「同じような工事で迷っている方がいたら、話だけでも聞きます」
この2つなら、施主に借りをつくらせません。施主は「頼まれた」のではなく、「いざというとき連絡できる人がいる」と受け取れます。その言葉を、引き渡しの日と、そのあとの連絡で、何度か見てもらう。それで十分だと私は思っています。
引き渡し後の連絡表:1週間・1か月・半年・1年に何を送るか
時期別の連絡表(持ち帰り用)
| 時期 | 口実 | 送る手段 | 例文の一行目 |
|---|---|---|---|
| 1週間後 | 使い心地の確認 | LINE・メール | 「その後、使い心地はいかがでしょうか。気になることはありませんか」 |
| 1か月後 | 不具合がないかの確認 | 電話・LINE | 「引き渡しから1か月がたちました。不具合などは出ていませんか」 |
| 半年後 | 季節の点検 | メール・はがき | 「雨の多い時期の前に、雨じまいの確認をお勧めします」「寒くなる前に、〇〇の点検はいかがですか」 |
| 1年後 | 1年点検のお知らせ | はがき・電話 | 「引き渡しから1年になります。点検にうかがってもよろしいでしょうか」 |
ここに書いた時期は目安です。決まりではありません。工事の種類や、施主との関係によって、変えて構いません。大事なのは、引き渡しの日に「また連絡します」と言っておいて、そのとおりに連絡することです。
連絡の口実は、点検と季節で作る
売り込みにならない口実は、次の5つです。
- 点検:使い始めの確認、1年点検
- 季節の注意:雨の前、寒くなる前、暑くなる前など
- 写真の送付:工事中や完成後の写真を、あとから送る
- 使い方の補足:説明のときに言い忘れたこと、よく聞かれることを送る
- 近くで工事をするときの挨拶:近所で別の工事をするとき、音や車の出入りを先に知らせる
どれも、「何か買ってください」とは言っていません。施主にとって、連絡が来て嫌な理由がない口実です。
今日やること
- 最近引き渡した施主を、3件書き出す
- そのうち、まだお礼を送っていない相手に、上の例文から1通だけ送る
- 予定表に、1か月後の連絡日を入れる
3件全部に送ろうとして止まるより、1通だけ送るほうが続きます。予定表への書き込みは、1分で終わります。
よくある質問
工事完了の挨拶に手土産は必要ですか?
必ず要るものではない、と私は見ています。品物より、工事中に協力してもらった点を具体的に1つ挙げてお礼を言うほうが、印象に残ります。地域や会社の慣習があれば、それに合わせてください。
近所への工事完了の挨拶はしなくてもいいですか?
義務ではありませんが、着工前に挨拶した家には、完了も伝えるのがおすすめです。音や車の出入りへのお礼を言い、宣伝はしません。留守なら、短い手紙をポストに入れます。
工事完了のお礼はメールやLINEでもいいですか?
引き渡しの場で口頭で伝えたうえで、当日〜3日以内にメールやLINEで送れば十分です。年配の施主にははがきが合う場合もあります。完成写真を添えると、施主が人に見せやすくなります。
引き渡しのあと、施主にいつ連絡すればいいですか?
目安は、1週間後・1か月後・半年後・1年後です。使い心地の確認や季節の点検を口実にすると、売り込みにならずに連絡できます。
引き渡しのときに紹介をお願いしてもいいですか?
頼むのが苦手なら、無理に言わなくて構いません。「気になることがあれば連絡ください」「同じことで迷っている方がいたら、話だけでも聞きます」と、思い出してもらう一言で十分です。
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