対面営業・商談
営業で断られるのが怖いとき|また連絡するために先に決めておくこと
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
営業で断られるのが怖いのは、断られるからではない
検索するとき頭にある場面
見積を出した翌日。「今回は見送らせていただきます」という返事が来て、そこでやりとりが止まる。次に連絡すべき相手の名前も、連絡先も分かっている。それなのに、メールの画面を開いては、何も書かずに閉じる。下書きフォルダに件名だけ残ったメールが増えていき、そのうち別の仕事を理由に画面を閉じるようになる。これを何度か繰り返している場面から、この記事は始めます。
怖いのは断られることではなく、断られた自分を見ること
「断られるのが怖い」と言うと、一回目の断りのことだと思われがちです。でも実際には、一回目の断りは受け止められていることが多いです。出せなくなるのは、二回目の連絡のほうです。
これは二回目が怖い型かもしれません。「向いていない」と自分でもう結論を出していて、それが確定するのを避けるために次の連絡を出せない型です。もう一度連絡して、また断られたら、今度は「タイミングが悪かった」では済まなくなる。二回続けて断られたら、自分は営業に向いていないと決まってしまう気がする。そう感じている人が多いようです。
一回目の断りが怖いのではなく、二回目の断りが「向いていない」という判決の証拠になってしまうことが怖い。これが「断られるのが怖い」の中身です。
だから「怖さをなくす」方法は効かない
「断られ慣れろ」「気にするな」「メンタルを鍛えろ」——こうしたアドバイスをよく見かけます。どれも、怖さそのものを消そうとしています。でも怖さは、消えるまで待っていると、消えるまで動けません。
「気にするな」と言われて気にならなくなるなら、最初から悩んでいません。気になるのは性格の弱さではなく、断られたあとに何をすればいいか決めていないからです。決めていない状態のまま気持ちだけ強くしようとしても、次の一歩は出てきません。
この記事の答えは逆です。怖さは残したまま、動く部分だけを先に決めておく。性格を変える必要はありません。性格はそのままで、手順だけ用意しておく方法を、ここから書きます。
「断られた」の中身を分ける——相手は何を断ったのか
一回目の断りを二回目の怖さに変えないためには、「何を断られたのか」を先にほどいておく必要があります。

断られ方は4つに分かれる
| 断りの種類 | 断り文句の例 |
|---|---|
| ①案件(内容・規模が合わない) | 「今回は他でお願いすることになりました」 |
| ②金額・条件 | 「予算的に難しく」 |
| ③時期 | 「来期また相談させてください」「今は手が回らず」 |
| ④その人自身 | 「もう結構です」 |
断られた直後は、この4つが全部まとめて「④その人自身」に見えてしまいます。でも実際に相手が断った理由は、①〜③であることがほとんどです。届いた断り文句をこの4つのどれかに当てはめてみるだけで、「自分が断られた」から「この案件・この金額・この時期が合わなかった」に見え方が変わります。
発注する側で断ったときのことを思い出す
自分が発注する側で見積を断った経験を振り返ると、④その人自身を理由に断ったことはほとんどありません。断ったのは、案件の中身、金額、時期です。予算が固まっていない段階で相見積もりを取って、結局その期は見送った。そういう断り方をしたことは何度もありますが、断った相手の腕や人柄を理由にしたことはありません。そして断った側の自分は、その件をそこまで長く覚えていません。次の案件が動き出せば、前に断った相手のことは頭から消えています。これは私の実感であって、統計ではありません。
NG例: 断り文句を「自分はダメだった」に翻訳する癖
「今回は見送ります」という言葉を、頭の中で「自分はダメだった」に翻訳してしまう癖があります。この翻訳が判決を作ります。
対処法は、翻訳しないことです。相手が言った言葉を、言葉のまま書き留めます。
- 翻訳した文: 「今回は見送りますと言われた。自分は選ばれなかった。」
- 言葉のまま置いた文: 「今回は見送り。理由は時期(来期また相談したいとのこと)。」
後者のほうが、次にすることが見えてきます。前者のまま止まっている限り、次の一手は出てきません。「自分は選ばれなかった」に対してできることは何もありませんが、「理由は時期」に対してならできることがあります。
断られたあとの動きは、断られる前に決めておく
決めておくのは3つだけ

①断られた当日に送る返事の文面 ②次に連絡する日 ③その日に連絡する口実
これだけです。マインドセットを変える、数をこなす、といった話はここでは扱いません。3つとも「何をするか」ではなく「いつ・何を」まで決めることが条件です。「そのうち連絡する」は決めたことになりません。
なぜ「前」なのか
断られた直後は、判決がもう出ている状態です。その状態で「次どうするか」を考えると、答えはほぼ「今回はやめておこう」になります。
だから決めるのは、断られる前。まだ元気なとき、見積を送る前です。見積の内容を考えている段階なら、まだ「断られるかもしれない」という前提を落ち着いて扱えます。具体的には、見積を送る直前に、メールの下書きに「見送りの返事が来たときの文」を1本作っておきます。出さずに済めば、そのまま消せばいいだけです。
決めてある人と決めていない人の違い
決めていないと、断られた瞬間にその相手との縁がそこで止まります。次にどうするか、その場で考えることになり、たいてい考えないまま日が過ぎます。
決めてあると、断られた瞬間に「次は◯月◯日」がすでに手元にあります。その日まで、何もしなくていい。決めたことをやるだけです。怖さは同じでも、動く先が決まっているかどうかで、その後が変わります。
この「決めておく」動きは、一件ごとの流れとは別に、案件をまたいで仕事を切らさないための土台にもなります。営業のどの工程でつまずいているかを含めた全体の流れは、仕事の取り方の型にまとめています。
断られた当日に送る返事の文面
お礼+次の予告の2文で終える
そのまま使える例文です。
ご検討いただきありがとうございました。今回はご縁がありませんでしたが、◯◯の時期にまた近況をお知らせしてもよろしいでしょうか。
3〜4行以内。短いほどいいです。
書いてはいけないこと
NG例1: 理由を聞く 「差し支えなければ理由を教えていただけますか」→相手に説明する負担を渡すことになります。
NG例2: 値下げを申し出る 「金額は調整できますので、もう一度ご検討いただけないでしょうか」→次に見積を出すとき、最初の金額が信用されなくなります。
NG例3: 長い弁明 「私の説明が足りず、ご不安な点があったかと思います。改めて…」→相手が慰める側に回ってしまいます。
3つに共通するのは、どれも相手にもう一度負担をかけているという点です。理由を聞けば説明させ、値下げを申し出れば判断をやり直させ、弁明すれば慰めさせる。断られた当日にすることは、ここで終わらせることだけです。
送るのは断られた当日のうち
翌日に持ち越すと、一晩のあいだに判決が固まって、出せなくなります。だから当日、しかも前もって作っておいた文面を、その場で書き直さずにそのまま送ります。書き直すと、たいてい長くなります。
次の連絡の「日」と「口実」の決め方
日は相手の断り文句から決める

| 断り文句 | 次に連絡する日の目安 |
|---|---|
| 「今は予算が」 | 相手の期首の1〜2か月前 |
| 「今回は他で」 | その案件が納品される頃 |
| 「今は手が回らない」 | 2〜3か月後 |
| 「もう少し考えます」 | 2週間後 |
日はあくまで目安です。根拠にするのは「相手の事情が変わりそうなタイミング」です。今すぐでも、忘れた頃でもなく、相手の側で状況が動きそうな時期を狙うほうが、連絡そのものが自然になります。
口実は頼みごとではなく、相手の役に立つ近況で作る
①相手の業界に近い事例ができたとき「似た規模の案件で、こういう形にまとめました」 ②相手が以前言っていた困りごとに関係する情報が見つかったとき「以前おっしゃっていた◯◯の件、参考になりそうな進め方が見つかったのでお伝えします」 ③自分のメニューが変わったとき(小さく頼める形ができた、など)「1ページだけ、診断だけ、といった小さい形でも承れるようになりました」
どれも、相手が読んで「へえ」と思える情報が先にあり、頼みごとは後ろにあるか、そもそも書かれていません。NG例: 「その後いかがでしょうか」だけの連絡。これだと相手に返す言葉がありません。
同じ提案をそのまま出さない
二回目は、一回目の「小さくした版」か「別の入口」にします。一式の制作提案が見送られたなら、まず1ページだけ、診断だけ、相談1回だけ、というように。同じ提案をそのまま出すと、相手は同じ理由でもう一度断るしかなくなります。「一式でご検討いただいたものを、まず1ページだけの形にしてみました」と入口を変えれば、相手は一回目とは別の判断として見てくれます。
二回目の連絡を出す日にやること——怖さはそのままで動く手順
決めた文面をそのまま送る
当日に見直すと、弁明や前置きが増えて長くなります。手順はこうです。
①決めておいた日の朝に下書きを開く ②宛名と日付だけ直す ③送る
3分で終わる形にしておきます。「今日は相手が忙しそうだから」は延期の理由にしません。相手が忙しいかどうかは、こちらには分かりません。時間をかけて見直すほど、一言添えたくなり、その一言が言い訳や念押しになりがちです。決めた文面を疑わず、そのまま送るほうが結果として短く、失礼のない連絡になります。
返事がなかったときの扱いも先に決める
返事がないことは、断りではありません。相手が忙しい、後回しになっている、見ていない——理由はいくらでもあります。三回目の連絡日を決めておき(例: 2〜3か月後)、それが来たら今回の働きかけは一区切りにします。区切りをつけるのは「その相手との縁」ではなく「今回の働きかけ」です。人格の判決にはしません。連絡が来なかったことを「向いていない証拠」に数えないための区切りだと考えてください。
記録するのは事実だけ
残すのは、送った日、返事の有無、断り文句の言葉です。「反応が悪かった」「嫌がられた気がする」は書きません。それは翻訳です。感情や印象を書き足すほど、あとで読み返したときに「やっぱり向いていない」という結論を後押しする材料になってしまいます。事実だけを短く残すほうが、記録は軽くなります。
記録例: 「9/14 見積送付 → 9/16 見送り(理由:時期) → 次回連絡 11月上旬予定」
事実だけ残しておくと、あとで見返したときに「向いていない証拠」にはなりません。
持ち帰り: 見積を出す前に埋める「次の一手シート」
シートの6項目

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ①案件名 | 自由記入 |
| ②想定される断り文句 | 案件・金額・時期・その人自身のどれか |
| ③当日に送る返事文 | お礼+次の予告の2文 |
| ④次に連絡する日 | ◯月◯日 |
| ⑤その日の口実 | 事例・情報・メニュー変更のどれか |
| ⑥返事がなかったときの区切り日 | ◯月◯日 |
コピーしてそのまま使える形にしておきます。
埋めるタイミングは見積を出す前
出したあとに埋めようとすると、断られてから書くことになります。それでは遅いです。見積の送信ボタンを押す前に、⑥まで埋まっているかを確認します。
チェック項目: ⑥まで埋まっているか。
記入例(1件)
架空の場面: 知人の紹介で会った、社員5人の会社の社長に、ウェブサイトの制作見積を出す。
①案件名: ◯◯社 ウェブサイト制作 ②想定される断り文句: 時期(来期また相談したいと言われそう) ③当日に送る返事文: 「ご検討いただきありがとうございました。今回はご縁がありませんでしたが、来期の予算が固まる頃にまた近況をお知らせしてもよろしいでしょうか。」 ④次に連絡する日: ◯月◯日(相手の期首の1〜2か月前) ⑤その日の口実: 似た規模の会社のウェブサイト事例ができたら共有する ⑥区切り日: ◯月◯日(④から3か月後、返事がなければ一区切り)
この例で決めているのは「怖さをなくす方法」ではありません。断られる可能性を織り込んだうえで、断られた場合に何をするかを先に決めているだけです。だから見積を送る手が止まりにくくなります。
いま出しかけている見積が1本あれば、その1件分だけ、この6項目を埋めてみる。今日やれるのはそこまでです。
よくある質問
営業で断られるのが怖いのは性格のせいですか?
性格のせいではなく、断られたあとに何をするかを決めていない状態が怖さを大きくしている。決めてあれば、怖さは残っても動ける。性格はそのままでいい
断られた相手にもう一度連絡しても迷惑になりませんか?
同じ提案を同じ形で出すと迷惑になる。相手の役に立つ近況や、小さくした提案を、相手の事情が変わる時期に合わせて出せば迷惑にはなりにくい。断った側は、その件をそこまで長く覚えていないことが多い
断られた理由を聞いてもいいですか?
当日の返事では聞かない。相手に説明の負担を渡すことになる。断り文句の言葉をそのまま書き留めて、4分類(案件・金額・時期・その人自身)のどれかを自分で見立てるほうがいい
断られたあと、何回まで連絡していいですか?
回数より「日を決めてあるか」が大事。当日の返事、次の連絡、返事がなかったときの区切りの三段階を先に決め、区切り日が来たら今回の働きかけは一区切りにする。縁の終わりではない
断られたあとに値下げを申し出てもいいですか?
当日に申し出るのは避ける。次回から最初の見積が信用されなくなる。出し直すなら値下げではなく、範囲を小さくした別の提案にする
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