対面営業・商談
公認会計士の独立|監査法人を出たあと、最初の顧問先が決まるまで
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
最初の顧問先が決まらないのは、営業が苦手だからではない
監査法人を辞めて、公認会計士名簿の登録も終わった。名刺も刷った。それなのに、顧問先はまだ1件もない。独立を知らせた同期や先輩には「独立したんだ」と伝えたきり、次の連絡が出せないまま1か月が過ぎている——こういう状態で止まっている人は少なくありません。
監査法人にいたあいだ、仕事は割り当てられてきた
監査法人にいたあいだ、クライアントはチームに割り当てられるものでした。自分で見つけて、自分で連絡して、自分で仕事の中身を決めたことは一度もありません。独立して初めて、「誰に」「何を」「どの順番で」伝えるかが空白になります。これは腕の問題ではなく、その工程を一度もやったことがないというだけの話です。
切り出せない型かもしれない
切り出せない型かもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型です。監査で会社を見る側だった自分が、仕事をくださいと頼んだ瞬間、下に回る気がする——そう感じている人は多いと思います。
頼まなくていい。まず独立を伝えるだけでいい
頼まなくていいです。まず「独立しました」と伝えるだけでいい。頼まない連絡を先に出して、入口の一件から始める——この記事で渡す方法はこれだけです。
営業が苦手だからではありません。頼む側に回る工程を一度もやっていないからです。
独立の手続きは登録だけ。営業の準備とは切り分ける
開業登録は名簿登録と協会入会
公認会計士と名乗って開業するには、公認会計士名簿への登録と日本公認会計士協会への入会が義務付けられています。申請書類が受理されると、登録審査会で資格の有無と書類の完備を審査します。開業登録の手数料は無料です。
登録が終わっても顧問先は1件も増えない
登録が終わっても、顧問先は1件も増えません。登録は「資格を名乗れる状態」であって、「仕事が来る状態」ではないからです。
ここでよくあるのが、登録→ホームページを作る→名刺を配る→問い合わせを待つ、という順番です。この順番だと、最後の「待つ」で止まります。ホームページも名刺も悪くありませんが、それだけでは連絡先の相手が動きません。
登録と同じ週に、誰に連絡するかの表を作ってください。手順はこのあとの章で渡します。
税務を含む顧問なら手続きを確認する
顧問の中身に税務が入るかどうかで、必要な登録が変わる場合があります。ここはこの記事のソースの範囲外なので、断定はしません。登録前に日本公認会計士協会に確認してください。個別の判断は専門家に相談することをおすすめします。
「監査法人出身」は看板にならない。相手が知りたいのは何を頼めるか
NG例:経歴で止まる自己紹介
「大手監査法人で〇年、上場企業の監査を担当していました」——この自己紹介で止まる人がいます。相手が従業員10人程度の会社の社長だった場合、自分の会社に何が起きるのか想像できません。実績を足せば足すほど、相手は自分を重ねられなくなります。
何を頼めるかを一文で言う
相手が知りたいのは経歴ではなく、何を頼めるかです。一文で言えるようにしておきます。
- 月次の数字を見て、翌月の打ち手を社長と決める
- 融資の前に決算書を整える
- 上場準備で内部の管理体制を作る
3つ以上並べないでください。1つに絞って、名刺にも連絡文にも同じ一文を使います。相手によって言い方を変えると、自分でも何を頼まれる人なのか分からなくなります。
入口の一件を先に決める
いきなり顧問契約を頼まないでください。「決算書を一度見ます」「資金繰り表を1枚作ります」のように、相手が1回で頼める形にしておきます。値段もこの時点で決めておいてください。金額を言えない状態のまま連絡を出さないことが大事です。
仕事の取り方の基本は、士業や専門職として独立するすべての人に共通する部分が多くあります。全体の順番はこちらの記事にまとめています。
最初に連絡する相手は、監査で会った人ではなく独立を知らない知人
連絡先を3列に分ける表
連絡先を3つの列に分けます。
- 先に独立した同期・先輩後輩(同業の先輩は頼む相手ではなく、順番を聞く相手です)
- 前職以外の知人(学生時代の友人、地元の知り合い、家族の知り合いで会社をやっている人、経理を一人で回している人)
- 隣の専門家(税理士、社労士、弁護士、司法書士)
各列に名前を5人ずつ書き出してください。思いつかないときは、年賀状や結婚式の招待客名簿を見返すと出てきます。
列が埋まらないときの増やし方
5人に届かない列があっても、それで止まらないでください。列②は、学生時代の友人だけでなく、趣味のつながりや地元の集まりも対象になります。会社を経営していなくても、経理を任されている人なら十分です。列③の隣の専門家は、税理士や社労士の事務所に直接連絡して「独立の挨拶をしたい」と伝えるだけで会ってもらえることが多いです。士業同士は、お互いに紹介し合う相手を探しているので、めずらしい依頼ではありません。
監査で関わった会社は最初の連絡先にしない
監査で関わった会社は、最初の連絡先にしないでください。前職との取り決めや職業上の制約が絡む場合があります。ここはこの記事では扱いません。所属先や日本公認会計士協会に確認し、個別の判断は専門家に相談することをおすすめします。
順番は頼みやすい相手ではなく、独立をまだ知らない相手から
順番は、頼みやすい相手からではなく、独立をまだ知らない相手からにします。「独立しました」という近況が、口実として自然に立つからです。すでに知っている相手には、何を頼めるかが決まってから改めて出します。
一番仲のいい相手に最初に頼んで、断られて止まる——これはよくあるNG例です。仲がいいからこそ、まだ何も準備が整っていない段階の連絡は避けてください。
頼まない連絡文。「独立しました」から始めて、仕事の話は相手に言わせる
そのまま使える連絡文3本
共通する要素は4つです。①独立したこと ②何を頼めるかの一文 ③頼んでいないこと ④近くに行く日か、会える日を具体的に書くこと。
同業の先輩向け 「独立しました。融資前の決算書整理を中心にやっています。近いうちにご挨拶に伺いたいのですが、来月どこかでお時間いただけますか」
前職以外の知人向け 「独立して会計士事務所を始めました。月次の数字を見て翌月の打ち手を決める仕事をしています。近況報告がてら、来週あたりお茶でもどうですか」
隣の専門家向け 「独立しました。融資前の決算書整理をしています。同じ地域でお仕事されているので、一度ご挨拶したいです。〇月〇日はご都合いかがですか」
電話ではなく、メールやLINEで十分
連絡は電話でなくて構いません。むしろ最初はメールやLINEのほうが向いています。相手が返事のタイミングを選べるので、「今忙しいのに」と思われる心配がありません。文面を先に作っておけば、送るときに言葉に詰まることもなくなります。声で伝えるのが得意なら電話でも構いませんが、苦手なら無理に電話を選ぶ必要はありません。
NG例:お仕事ありましたらぜひ
「何かあればご紹介ください」「お困りごとがあればいつでもご連絡ください」——これは頼んでいるのに中身がないので、相手が動けません。相手が動けるのは、「融資の前に決算書を整える仕事をしています」のように、具体が一つある文だけです。
返事が来なくても2週間後にもう一度出す文
返事が来なくても、2週間後にもう一度出します。ただし同じ文は送りません。「先日、〇〇業の会社から資金繰りの相談を受けました」のように、動いている近況を書きます。
返事がないのは、高いと思われたのでも、嫌われたのでもありません。相手の中で順番が来ていないだけです。
最初の一件は顧問契約ではなく、一回きりの相談から始めていい
入口の仕事の例と値段
- 決算書の読み合わせ1回
- 融資前の数字の整理
- 経理の流れの棚卸し1日
値段はあらかじめ決めておき、聞かれたら即答します。「最初なので無料で」を続けると、次も無料が前提になってしまいます。1回目で金額を決めておくことが、2回目以降の値段を守ることにつながります。
一回の相談から顧問に進む聞き方
相談の終わり際に、一文だけ聞きます。「この数字を毎月一緒に見る相手はいますか」。いなければ、「月に一度、この形で見ましょうか」と提案します。頼むのではなく、相手の今の状態を聞くだけで話が進みます。
決まらなかったときの終わり方
決まらなかったときは、「今回はここまでで」と自分から区切ります。断られたのではなく、入口の一件が終わっただけです。3か月後に近況で連絡する日を、その場でカレンダーに入れておきます。
来た仕事を受けるだけで止まらないための週の型
週に1回、連絡を出す時間を先に決める
週に1回、連絡を出す時間を先に決めます。例えば金曜の午前に3通。目の前の作業より先に予定に入れてください。問い合わせが来るのを待つ前提のままだと、自分から相手を探す時間がなくなっていきます。
1枚の表で回す
1枚の表で回します。列は、相手/列(①②③のどれか)/出した日/伝えた一文/返事/次に会う日。持ち帰って使える記入例です。
| 相手 | 列 | 出した日 | 伝えた一文 | 返事 | 次に会う日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大学同期・田中さん | ② | 9/1 | 融資前の決算書整理をしています | あり | 9/20 |
| 監査法人の先輩・佐藤さん | ① | 9/5 | 独立の挨拶 | なし(2週間後に再送予定) | 未定 |
| 近所の税理士・鈴木先生 | ③ | 9/8 | ご挨拶したい | あり | 9/25 |
3か月で決まらなくても腕のせいではない
3か月で決まらなくても、腕のせいではありません。見るのは連絡の本数と、相手の入れ替わりです。出した数が10通未満なら本数を疑ってください。返事が来ても入口の一件に進まないなら、「何を頼めるか」の一文を疑ってください。
まず今週、独立をまだ知らない相手に1通、連絡を出してください。それが最初の顧問先につながる一番近い道です。
よくある質問
公認会計士が独立するのに登録は必要ですか?
公認会計士と名乗って開業するには、公認会計士名簿への登録と日本公認会計士協会への入会が義務付けられています。開業登録の手数料は無料です。登録は資格を名乗れる状態であって、仕事が来る状態ではありません。
公認会計士の独立で営業はどうやればいいですか?
頼まないところから始めます。「独立しました」と何を頼めるかの一文を添えた近況連絡を、独立をまだ知らない相手から順に出します。仕事の話は相手に言わせ、最初は一回きりの相談から進めます。
監査法人時代のクライアントに営業してもいいですか?
前職との取り決めや職業上の制約が絡む場合があるため、最初の連絡先にはしません。所属先や日本公認会計士協会に確認し、個別の判断は専門家に相談することをおすすめします。
監査法人を辞めてすぐ独立しても顧問先は取れますか?
決まるかどうかは腕ではなく、連絡の本数と相手の入れ替わりで決まります。いきなり顧問契約を頼まず、決算書を一度見るような入口の一件から進めてください。
公認会計士が独立したら税理士登録も必要ですか?
顧問の中身に税務が含まれるかどうかで、必要な手続きが変わる場合があります。登録前に協会に確認し、個別の判断は専門家に相談してください。
参照した情報源
- 公認会計士の開業登録について(日本公認会計士協会)・確認日 2026-09-18
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。