対面営業・商談
既存のお客様からもう一度仕事をもらう|聞き方と時期
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
もう一度頼まれないのは、前の仕事が悪かったからではない
声がかからない=評価が低い、と読んでしまう

納品して、お礼のやりとりをして、そこで区切りがつく。1か月、3か月、半年と経っても、次の連絡は来ない。同業の知り合いには新しい依頼が来ているのを見かけると、余計に自分だけ止まっている気がしてきます。
その間に、自分の中で判決が下ります。声がかからないってことは、前の仕事がそこまでじゃなかったんだと思う。一度そう思うと、自分から連絡するのはさらに気が引けます。下手に連絡して、やっぱり微妙な反応をされたら、それを確かめてしまうことになるからです。
だから連絡しない。連絡しないから、余計に思い出されない。この繰り返しで、気づけば「一度きりの相手」が増えていきます。
相手の側で起きていること
腕が足りないからではありません。相手の側で、次の3つが起きているだけです。
- 思い出す機会がない。発注側も日々の仕事に追われていて、過去に頼んだ相手のことを能動的に思い出す時間はほとんどありません
- 何を頼めるか知らない。相手が知っているのは前回頼んだ仕事だけです。それ以外に何を頼めるのか、相手は知らないまま止まっています
- 頼むきっかけ(節目)が来ていない。予算が動く時期、次の企画が動き出す時期など、頼むタイミングがまだ来ていないだけということも多いです
発注側は「あの人に頼めるのは前回と同じ仕事だけ」と思い込んでいることが多いです。ロゴを作ってもらった相手なら「ロゴの人」、記事を書いてもらった相手なら「あの記事の人」で止まっていて、その先の仕事の広がりまでは想像していません。声をかけていないのは、忘れているからではなく、思いついていないだけということもあります。
紹介待ち型かもしれません
ここまでの状態には名前があります。紹介待ち型です。いい仕事をすれば次は自然に声がかかると思っていて、思い出してもらうための働きかけを自分からしていない型です。
仕事が減ったのではなく、思い出してもらえなくなっただけです。腕のせいではありません。
抜ける最小行動はシンプルです。過去に仕事をした相手のうち1人に、「その後どうですか」の一通を送ること。それだけで、止まっていた流れが動き出すことがあります。
この「思い出してもらう」動きは、仕事を取る順番全体で見るとごく一部です。知り合ってから仕事を切らさないまでの流れを先に押さえておくと、今回のリピートの話がどこに位置するかが分かりやすくなります。
聞き方:「仕事ありませんか」ではなく「その後どうですか」から入る
主語を相手に置く

「空いてます」「お仕事あれば」は、主語が自分になっています。相手からすると、これは頼むか頼まないかを判断してくださいという負担だけを渡された状態です。答えようがないので、多くの場合、返事はそのまま流れます。
主語を相手に置くと、聞き方が変わります。納めたものの後日談を聞く形にすると、相手は答えやすく、その答えの中から次の仕事の種が自然に出てきます。メールでもLINEでも、この主語の置き方は変わりません。
手順は3つです。
- 納めたものを名指しする
- その後の様子を1問だけ聞く
- 返事が来てから、頼めることを添える
言い換え表(NG→OK)
| NG | OK |
|---|---|
| 何かあればお声がけください | ◯◯を納めてから2か月ですが、使ってみてどうですか |
| 最近お仕事ありませんか | 前回の△△、その後こういう反応はありましたか |
| 空いているので何でもやります | 前回の続きで□□をやるならこの時期がいいと思います |
| お安くしますので | (書かない) |
最後の「お安くしますので」は、書かないのが正解です。値引きを添えると、前回の値段が高かったと言っているのと同じ意味に受け取られてしまいます。値段を下げて気を引くより、聞き方を変えるほうが返事は来やすくなります。
頼めることを一つだけ添える
相手は前回の仕事しか知りません。だから、頼めるメニューを1つだけ見せます。3つ並べると、それだけで売り込みに読まれてしまいます。
- ロゴを作った相手なら「名刺・封筒への展開」
- 記事を書いた相手なら「同じ読者向けの続編」
- 施工した相手なら「次の季節の点検」
サービス一覧のPDFを添付するのはNGです。相手は選ぶための情報ではなく、今の自分に関係のある1つの提案を待っています。
時期:相手の節目に合わせる。自分の手が空いたときに聞かない
連絡していい3つのタイミング
- 納めたものの結果が見える頃(使い始めて1〜2か月)
- 相手の次の期・季節・繁忙期の前(相手が予算と段取りを考える時期)
- 相手に出来事があったとき(新商品、移転、採用、SNSでの告知など)
逆に避けたいのは、自分の受注が減った瞬間に送る連絡です。焦りは文面ににじみ出ます。最近どうですかのつもりで書いた一文が、相手には暇なので仕事をくださいと読まれてしまうことがあります。自分の都合で動くか、相手の都合で動くか。この違いだけで、同じ文面でも受け取られ方が変わります。
時期×口実×一言の早見表
| 時期 | 口実 | 一言 |
|---|---|---|
| 納品直後 | お礼と次に起きることの予告 | ありがとうございました。半年ほどでまた見直しが必要になると思います |
| 1か月後 | 使い心地を1問 | 使ってみて何か気になるところはありますか |
| 3か月後 | 結果の後日談+頼めることを1つ | その後の反応はどうですか。もしよければ□□も承れます |
| 半年後 | 相手の節目に合わせた提案 | そろそろ◯◯の時期かと思いますが、いかがですか |
| 1年後 | 近況報告のみ、頼まない | ご無沙汰しています。その後お変わりないですか |
半年以上空いた相手への入り方
空いた期間を謝らないことです。謝ると、相手も気まずさを感じてしまいます。ご無沙汰しておりまして申し訳ありませんという書き出しは、相手に「そんなに気にしていなかったのに」と思わせることもあります。
近況を1行、前回の仕事を名指し、質問を1つ。この3行で送ります。
ご無沙汰しています。以前◯◯を担当させていただいた者です。その後、あの件はどうなっていますか。
返事がなくても、2週間後に別の口実で1回だけ再送します。それ以上は追わず、次の節目まで待ちます。回数をあらかじめ決めておくと、送りすぎで気まずくなることもありません。
追加受注の切り出し方:納品のときに次の種を残す
納品時に「次に起きること」を一言添える

もう一度の仕事は、後日の連絡ではなく、納品の瞬間に決まっています。
- このサイトは半年ほどで写真が古く見えてきます。その頃に差し替えを考えるといいです
- この見積の範囲は◯◯までで、△△は次の段階になります
これを納品時に言っておくと、後日の連絡は売り込みではなく約束の続きになります。ありがとうございました、またよろしくお願いしますだけで閉じてしまうと、この種を蒔く機会を逃します。逆に、次に起きることを一言添えておけば、半年後の連絡は相手にとっても「約束していた件」として届きます。
提案は「困りごとの続き」で出す
新しい商品として出さないことです。前回の相談で相手が口にしたのに、今回は手を付けなかったことを1つ拾って戻します。
手順は3つです。
- 前回のやりとりを読み返す
- 相手が口にしたのに今回やらなかったことを書き出す
- その中で相手の節目に近いものを1つ選ぶ
たとえば、前回、問い合わせが増えたら返信が回らないと言っていましたが、その後どうですか。これは新しい提案ではなく、前回の会話の続きです。困りごとの続きとして出すと、相手は「また売り込まれた」ではなく「覚えていてくれた」と受け取ります。
金額は前回を土台に話す
既存客への追加は、見積の順番が一から始まる新規案件より楽になります。前回の金額と作業量を基準にして、前回の◯割の作業量なので、この金額ですと根拠を先に言います。
値下げを先に出すのは避けます。前回は高かったという意味に取られてしまうからです。追加の小さい仕事ほど金額を曖昧にしがちですが、口頭でも数字は言い切ります。
やりがちな失敗:頼み方が重すぎるか、軽すぎるか
重すぎる例

近況、実績、サービス一覧、値引きが1通に全部入った長文の営業メール。相手は読む前に閉じてしまいます。用件が多いほど、相手は「どこから読めばいいか」で止まってしまいます。
直し方は、1通1用件、5行以内、質問は1つに絞ることです。
- 改善前: ご無沙汰しております。弊社は◯◯業界で実績があり、このたびサービスを拡充しまして…
- 改善後: 前回の◯◯、その後どうですか。もしよければ続きの□□も承れます
軽すぎる例
また何かあればご連絡くださいと自分から閉じてしまう例です。これは相手に判断を丸投げした形になり、思い出す機会を自分で消してしまっています。
直し方は、◯月頃にまたご連絡しますと次の日付を自分が持つことです。相手の返事を待つ約束ではなく、自分が動く約束にします。
断られたときの受け取り方
追加を断られても、前回の仕事が否定されたわけではありません。今回はの意味で受け取り、次の節目を1つ決めてメモしておきます。
- NG: 断られた直後に値引きで追いかける、そのまま連絡を絶つ
- OK: 分かりました。◯◯の時期にまたご連絡しますの一言で閉じる
今日やれる形:10人書き出して、連絡日を決める
紹介待ち型から抜けるのに、特別な話術は要りません。まず、誰にどこまで聞けているかを紙に出すところから始めます。
過去1年に納めた相手を書き出す
手順は3つです。
- 請求書か納品メールを遡って、相手の名前を10人書く(多くても何人かまで)
- 相手ごとに「納めたもの」「その後の様子を聞いているか」を書く
- 聞いていない相手に印を付ける
多くの場合、印が付く相手の方が多いはずです。これは営業ができていないからではなく、単に聞くという工程が抜けていただけです。
相手ごとに「次の節目」を1つ書く
相手の期・季節・繁忙期・イベントのどれかを1つ選びます。分からなければ、納品から3か月後を仮置きします。
チェックリストにすると動きやすくなります。
- 名前
- 納めたもの
- 次の節目と連絡日
ここまで書いたら、カレンダーに連絡日を入れるところまでやります。
最初の1通の文面
コピペで使える文面です。
◯◯さん、ご無沙汰しています。以前納めた△△、その後お使いいただいてどうですか。もしよければ、□□の部分もお手伝いできます。◯月頃にまたご連絡します。
構成は5行です。宛名、納めたものを名指し、その後の様子を聞く1問、頼めることを1つ(省いてもよい)、◯月頃にまたで閉じる。
今日はこの1通を、1人に送るだけでいいです。性格を変える必要はありません。順番を変えるだけです。
よくある質問
リピートの依頼は、納品からどのくらい空けて連絡すればいいですか?
目安は納めたものの結果が見え始める1〜2か月後。ただし自分の都合ではなく、相手の期・季節・繁忙期の前に合わせる方が返事が来やすい。1年以上空いたら頼まず近況報告だけにする
既存のお客様に追加の仕事を提案するとき、値段は下げた方がいいですか?
先に値引きを出さない。前回の金額と作業量を基準に根拠を先に言う。値引きを添えると前回が高かったという意味に取られる
「何かあればご連絡ください」で終わってしまいます。どう続ければいいですか?
相手に丸投げする閉じ方をやめ、「◯月頃にまたご連絡します」と次の日付を自分が持つ。納品時に「次に起きること」を一言添えておくと、後日の連絡が約束の続きになる
追加の仕事を一度断られた相手に、また連絡していいですか?
いい。断りは「今回は」の意味で受け取り、次の節目を1つ決めてから連絡する。断られた直後に値引きで追いかけるのは避ける
納品から1年以上空いたお客様に連絡するのは失礼ですか?
失礼ではない。空いた期間を謝らず、近況1行+前回の仕事の名指し+質問1つの3行で送る。頼み事は入れず、返事が来てから次を考える
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