対面営業・商談

研修講師の独立|研修会社の登録以外から、直接の依頼が来るまで

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

研修講師の独立で直接の依頼が来ないのは、実績が足りないからではない

登録先からの登壇は回っているのに、直接の問い合わせはゼロ

独立して研修講師をしていると、研修会社への登録案件は途切れずに来ます。月に何本か登壇して、報酬も振り込まれます。それなのに、受講した企業の担当者から「うちに直接来てもらえませんか」という連絡は一件も来ません。

こういうとき、多くの人はプロフィールに手を入れます。資格を足します。登壇回数を更新します。取引した会社名を並べます。実績を積み増せば、いつか名前で選ばれると思っています。

実績並べ型かもしれません

実績並べ型かもしれません。手を入れるたびに要素は増えるのに、読む担当者が自分の会社を重ねられる場面は増えていない状態です。

直接の依頼が来ないのは、実績が足りないからではありません。担当者が自分の会社の場面を重ねられる一文が、プロフィールのどこにもないからです。

独立後に直接依頼が来るまでの道筋

順番は決まっています。

  1. 研修会社に登録する
  2. 登録経由で登壇する
  3. そこで会った担当者・受講者と、登壇以外の接点を作る
  4. その接点から直接の依頼が来る

多くの人は1と2で止まっています。3を飛ばして、いきなり4を待っています。登壇の場数だけを積んでも、3の接点がなければ4には進みません。

統計が語らないこと

フリーランス全般の仕事獲得経路を聞いた調査では、稼げる獲得経路の1位が「人脈」、2位が「過去・現在の取引先」、3位が「エージェントサービス」という順位でした。研修講師に絞った統計や、研修会社経由と直接契約の比率を示す公的なデータは見当たりませんでした。ここから先は、研修講師という仕事の構造から考えます。

登壇の場数を作ってくれる研修会社と、次の仕事につながる人との接点は、別のところにあります。その違いを次の章で見ていきます。

フリーランスの営業のやり方も合わせて確認しておくといいでしょう。

研修会社の登録案件と直接依頼は、決める人と頼まれ方が違う

登録案件では、講師は割り当てられる側

研修会社に登録すると、案件は「割り当てられる」形で来ます。受講企業の担当者が会って選んだのは、研修会社の営業担当です。その営業担当が社内の講師リストから条件に合う人を選び、講師に声がかかります。

受講企業の担当者は、講師の名前も顔も知らないまま研修当日を迎えることが多いです。選ばれているのは講師個人ではなく、研修会社という窓口です。

直接依頼では、担当者が自分の会社の困りごとで選ぶ

直接依頼は逆の順番で決まります。担当者が先に講師本人と話していて、その場で「うちの現場にも効きそうか」を見ています。資格の数や登壇回数の多さより、自分の会社の困りごとに近い話をしてくれるかどうかで決めている、と考えられます。

見られているものが違います。登録案件では実績の一覧が審査され、直接依頼では会話そのものが審査されています。

登録だけで待つと起きること

登録案件だけで独立を回していると、売上は登録先の営業力で決まります。仕事量が増えるかどうかは自分の実績ではなく、研修会社が取ってくる案件の数次第になります。

条件が合わない案件でも、次が来る保証がないと断りにくくなります。すると登壇の準備で日程が埋まり、直接の入口を作る時間が後回しになります。登録案件をこなすほど、直接の依頼を作る時間が減るという構造があります。

持ち帰り表 登録案件と直接依頼の違い

項目登録案件直接依頼
誰が選ぶ研修会社の営業担当受講企業の担当者本人
何で選ぶ講師リストの条件一致自社の困りごととの近さ
講師が話す相手研修会社の担当者受講企業の担当者本人
条件を決める人研修会社講師と担当者の間
次につながるか研修会社経由で継続担当者との関係で継続

この違いを踏まえると、登録先経由で会った受講企業に自分から営業をかけたくなります。次の章で、それがなぜ近道にならないかを説明します。

やってはいけない近道。登録先経由で会った会社に直接営業する

登壇先で担当者と話せて、手応えもありました。ここで「今度は直接契約でどうですか」と声をかけたくなります。これが一番の近道に見えて、実は避けたほうがいい動きです。

登録契約で禁じられている場合がある

研修会社との登録契約には、経由した受講企業への直接営業を禁じる条項が入っていることがあります。契約書に「業務委託期間中および終了後一定期間、直接取引を行わない」といった内容がないか、まず確認してください。契約の解釈や個別の判断は、専門家に相談してください。

登録先との関係が切れると、いま回っている案件も止まる

直接営業が発覚すると、登録先との関係は基本的に終わります。一件の直接契約と引き換えに、登録先から回ってくる案件がすべて止まります。直接依頼がまだ安定していない段階でこれが起きると、収入の柱を両方失うことになります。

受講先の担当者から見ても筋が悪い

担当者から見ても、研修会社を飛ばして講師個人から声をかけられるのは、あまりいい印象になりません。信頼関係を大事にする担当者ほど、この動きで距離を置くと考えられます。

「御社の研修、今度は直接お受けできますよ」と登壇後すぐに切り出すのは避けたほうがいいでしょう。担当者にとっては、研修会社との関係をどうするかという別の問題を背負わされる形になります。

直接依頼は、登録先経由で会った受講企業ではなく、別の入口から作ります。次の章で、その入口を3つに分けて見ていきます。

直接依頼の入口は3つ。前職のつながり・過去の直接契約先・人と会う場

登録先を経由しない入口は、大きく3つあります。

前職・元同僚・以前の勤め先

独立前に会社員をしていた人は、前職の同僚や上司とのつながりがあります。ここに「研修講師として独立した」ことを伝えていない人が多いです。

営業をかける必要はありません。近況を伝えるだけでいいです。

ご無沙汰しています。実は今年から研修講師として独立しまして、〇〇のテーマで登壇する機会が増えています。またお会いできたら嬉しいです。

頼んでいません。近況を伝えているだけです。ここから「うちの会社でも今度話を聞きたい」につながることがあります。

過去に直接契約で入った会社

一度でも直接契約で研修を担当した会社があれば、そこは既にあなたを名前で選んだことのある相手です。研修から数か月経ったタイミングで、結果を聞くだけの連絡を送ります。

先日の研修から3か月ほど経ちましたが、現場での変化はいかがですか。もしよろしければ、少し伺えたら嬉しいです。

売り込んでいません。結果を聞いているだけです。担当者にとっても答えやすい内容になります。

異業種の会合・勉強会・商工会

名刺交換だけで終わらせないことが重要です。フリーランス全般の調査では、名刺を持っている人が6割です。名刺を持つこと自体は珍しくないので、それだけでは同業の6割に埋もれてしまいます。差がつくのは、会った翌日に一通送るかどうかです。

昨日はお話しできて楽しかったです。〇〇のお話、すごく参考になりました。またどこかでお会いできたら嬉しいです。

研修の話は書きません。相手の話で覚えたことを一つ書くだけでいいです。

3つの入口を今週動けるかで比べる

入口今週動けるか会う口実があるか
前職・元同僚動ける(連絡先が手元にある)近況報告で作れる
過去の直接契約先動ける(担当者名が分かっている)研修後のフォローで作れる
異業種の会合・勉強会次の開催を待つ必要がある名刺交換の翌日に作れる

前職と過去の契約先は今週動けます。異業種の場は次の機会を待つ必要はありますが、一度会えば口実は作りやすいです。3つとも並走させて構いません。

プロフィールを「実績の一覧」から「相手が自分を重ねる場面」に書き換える

入口を作れても、プロフィールが実績の一覧のままだと、担当者は自分の会社を重ねられません。

NG例

こういうプロフィールをよく見かけます。

〇〇資格保有。登壇実績150回以上。株式会社A、株式会社B、株式会社C、株式会社Dなど大手企業での研修実績多数。

資格、登壇回数、取引社名が並んでいるだけで、どんな会社の、誰が、何に困っていて、研修後にどう変わったのか、が一つも書かれていません。読んだ担当者は「すごい人だ」とは思っても、「うちの会社にも当てはまるかもしれない」とは思えません。

書き換えの型

書く要素は一つに絞ります。

  • どんな会社の
  • 誰が
  • 何に困っていて
  • 研修後に何が変わったか

これを一つだけ、具体的な場面として書きます。実績を盛らないでください。起きていないことは創作しないでください。

実績が少ないときの書き方

独立したばかりで直接の実績が少ない場合は、前職の現場経験を場面として書きます。登壇回数を水増しする必要はありません。会社員時代に自分自身が困っていたことも、立派な場面になります。

前職で新人教育を担当していたとき、マニュアルを配るだけでは現場で動けるようにならないという壁にぶつかりました。その経験から、今は「その場でやってみる」を中心にした研修を組み立てています。

Before/After

同じ経歴でも、書き方でこう変わります。

Before

〇〇資格保有。登壇実績150回以上。大手企業での研修実績多数。

After

従業員30名ほどの製造業で、現場リーダーが「叱り方」に悩んでいる会社の研修を担当しました。研修後、リーダーから部下への声かけの回数が増えたと報告を受けています。

同じ経歴の講師でも、Afterのほうは「うちも似た悩みがある」と重ねられる担当者が出てきます。

会った人から直接の依頼が来るまでの「次の接点」の作り方

入口ができて、プロフィールも書き換えました。ここから依頼になるまでには、もう一段階「次の接点」が必要です。

会った翌日の一通

会った当日か翌日に、一通だけ送ります。研修の売り込みは書きません。相手が話していた内容で、印象に残ったことを一つだけ返します。

昨日お話しした、新人の定着率のお話が印象に残っています。またお話しできたら嬉しいです。

1〜3か月後の近況

しばらく間が空いたら、近況を一行添えて送ります。自分の実績を並べるのではなく、相手の会社にも起きていそうな話に寄せます。

先月、〇〇業界の会社で研修をしたのですが、△△さんの会社でも似たようなことが起きていそうだなと思いながら話していました。

「実績を報告している」のではなく、「相手の場面を想像している」という書き方にします。

30分話を聞かせて、から始まる依頼を取り逃さない

「今度30分だけ話を聞かせてもらえますか」という軽い相談は、直接依頼の入口になりやすいものです。ここで研修プランをいきなり提案すると、相手はまだ相談段階のつもりだったのに商談に切り替わったと感じて引いてしまいます。

まずは聞きます。何に困っていて、これまで何を試したか。提案はその後でいいです。

NG例

次の2つは、次の接点を作るつもりが、実績並べに戻ってしまう例です。

  • 近況報告のたびに実績PDFを添付して送る
  • 近況を送るたびに、新しく登壇した実績を数えて書き足す

どちらも、相手の場面ではなく自分の実績に話が戻っています。次の接点は、相手が自分の会社を重ねられる内容かどうかで判断します。

独立1年目の目安。月に1回、登録以外から来た話を数える

数える3つ

月に1回、次の3つを数えます。ゼロでも記録します。

  • 登録以外から来た話の数
  • 新しく会った人の数
  • 近況を送った数

ゼロが続く月があっても構いません。数えることで、動いていたか止まっていたかが後から分かります。

登録は切らない

直接依頼が増えるまでは、登録案件を切らずに並走させます。「登録か直接か」ではなく「登録で場数を作りながら、直接の入口も並行して作る」という順番になります。登録案件を先に手放すと、収入が不安定になるだけでなく、登壇の場数も減ってしまいます。

週に営業の時間を先に置く

近況を送る時間は、登壇準備で予定が埋まる前に、曜日を決めて先に確保します。目の前の登壇準備を優先していると、次の接点を作る時間は自然には残りません。週のうち決まった曜日の決まった時間を、先に空けておきます。

持ち帰りチェックリスト

  • 月1で見る: 登録以外から来た話の数
  • 月1で見る: 新しく会った人の数
  • 月1で見る: 近況を送った数
  • 週1で動く: 近況を送る時間を曜日で固定して確保する

これを1年続けると、登録案件の割合と直接依頼の割合がどう変わったかが、記録から見えてきます。

よくある質問

研修講師の独立で、研修会社に登録するのは遠回りですか?

遠回りではありません。登壇の場数が取れます。ただし登録だけで待たず、直接の入口も並行して作ってください

研修会社経由で担当した会社に、直接営業してもいいですか?

登録契約で禁じられている場合があります。契約書を確認し、判断は専門家に相談してください。信頼の面でも筋が悪いので、直接依頼は別の入口で作りましょう

実績がほとんどない状態で、直接の依頼はどう取りますか?

前職の現場経験を「場面」として書きます。知り合いに頼み込まず、近況を伝えるだけにします。小さな相談も依頼の入口と見てください

研修講師の直接依頼はどこから来ることが多いですか?

フリーランス全般の調査では人脈と過去・現在の取引先が上位です。研修講師に限った統計は見つかりませんでした

講師のプロフィールには何を書けばいいですか?

資格や登壇回数の一覧より、誰が何に困ってどう変わったかの場面を1つ書きます。読む人が自分の会社を重ねられる形にしてください

参照した情報源

  1. 「フリーランス白書2025」を発表〜フリーランスの実態・ホンネが明らかに〜(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)・確認日 2026-09-20

本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。

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