対面営業・商談
契約後の最初の1週間でやること|ここで次の仕事が決まる
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
契約後にまずやるのは作業の準備ではなく、相手の不安を消す連絡
契約書を交わした翌日。嬉しさと同時に「ちゃんとやらないと」という気持ちが強くなり、頭の中は作業の段取りでいっぱいになります。相手への連絡は、契約の場での「よろしくお願いします」の一言で止まったまま、という場面は珍しくありません。
契約は営業のゴールではなく、次の仕事——同じ相手からの2件目、あるいは紹介——の営業が始まる日です。最初の1週間にやることは、着手連絡・決めたことの書面化・途中報告の3つ。この3つが、次を決めます。
「取れたから、あとは腕で応えるだけ」で止めてしまう営業
紹介待ち型かもしれません。いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらう働きかけをしていない型のことです。「契約後 進め方」を検索するのは、段取りを知らないからではありません。契約を営業のゴールだと思っていて、ここから先は腕だけで応えればいいと思っているからです。
この考え方が自然に出てくるのには理由があります。会社にいたころは「作る側」で、契約を取る係は別にいたという人も多いはずです。営業という工程を、契約が決まった時点で終わったものとして扱う習慣が体に染みついています。腕を軽んじているわけでも、手を抜こうとしているわけでもありません。契約後も営業が続くという発想を、単に教わっていないだけです。
契約直後は、頼んだ側が一番「本当にこの人でよかったか」を考えている1週間
発注する側の気持ちで見ると、景色が変わります。発注は「決めた瞬間」に不安が一番大きくなります。他にも候補がいたはずで、その中からこの人を選んだ理由を、まだ誰にも証明していない状態だからです。ここで連絡がなければ、不安は消えるのではなく「後悔」に育っていきます。
紹介待ち型から抜ける入口
仕事が減ったのだとしたら、それは腕のせいではなく、思い出してもらえなくなっただけという場合が多いです。「営業は得意じゃないから、取れたあとは黙っていい仕事をして、腕で応えるしかない」——そう思っている人ほど、この型に近いかもしれません。抜け出す入口は、性格を変えることではなく、連絡の順番を決めることです。最初の1週間を「作る週」ではなく「安心してもらう週」と決める。これだけです。この後、日別に並べていきます。
契約後1週間の進め方|日別チェックリスト7項目
1日目〜7日目に何を送るか

| 日 | やること | 送る文の一行例 | 相手が受け取るもの |
|---|---|---|---|
| 1日目 | 着手連絡 | 「本日から着手します。まず〇〇から進めます」 | 始まった安心 |
| 2日目 | 決めたことを書面で送る | 「今回の内容を整理しました。この形で進めます」 | 認識のズレがない安心 |
| 3日目 | お願いすることを一覧で送る | 「進めるにあたり、下記をお願いできますか」 | 何をすればいいかの明確さ |
| 4〜5日目 | 最初の途中報告 | 「決めたこと・迷っていることをお伝えします」 | 進んでいる実感 |
| 6日目 | 質問をまとめて1回で聞く | 「確認したいことが3点あります」 | 手間の少なさ |
| 7日目 | 来週の予定を送る | 「来週は〇〇を進める予定です」 | 先の見通し |
このチェックリストが、この記事の持ち帰りの本体です。印刷して、契約のたびに使う形にしておくと使いやすくなります。
やらなくていいこと
- 完璧な計画書を作ってから連絡する(連絡そのものが遅れます)
- 毎日の細かい進捗を送る(相手の手間になります)
- 相手の返信を待ってから動く(着手が止まります)
NG例です。1週間音沙汰なしのまま、8日目になって「順調です」とだけ送る。これでは、この1週間何をしていたのか相手には伝わりません。
業種を問わず同じ形になる理由
デザイン・開発・施工・士業・撮影で「範囲」「納期」「途中報告」の中身は違っても、送る順番は同じになります。
- デザイン:範囲は制作物の点数と修正回数
- 開発:範囲は機能の一覧と対応環境
- 施工:範囲は工事内容と使う材料
- 士業:範囲は対応する業務と対象期間
- 撮影:範囲はカット数と納品形式
中身を自分の業種の言葉に置き換えれば、そのまま使えます。
1日目:お礼だけで終えず「これからの流れ」を一通で送る
「よろしくお願いします」で止まる文と、次が見える文の違い

NG文例です。
このたびはありがとうございます。よろしくお願いします。
OK文例です。
このたびはありがとうございます。本日より着手いたします。まずは〇〇の確認から進め、〇日までに一度ご連絡します。進めるにあたり、△△をお送りいただけますでしょうか。
同じお礼でも、後者は「始まった」「次はいつ連絡が来るか」「何をすればいいか」の3つが相手に渡っています。
着手連絡に入れる4つ
- いつ始めるか
- 最初に何をするか
- 次にいつ連絡するか
- 相手にお願いすること
特に3の「次の連絡日を自分で宣言する」が効きます。これがあると、相手は「待つ側」から「聞かなくていい側」に変わります。
送る手段は契約の場で決めた手段に合わせる
メール・チャット・電話のどれで進めるかを、1日目に確認して固定します。相手が普段使っている手段に合わせるのが基本です。手段が混ざると「言った・聞いていない」の原因になります。
契約当日か翌日までに着手連絡を送るのが、ひとつの目安です。2日空くと、相手は「本当に始まっているのか」を考え始めます。
2〜3日目:決めたことを書面に残す——残すのは相手を疑うことではない
残すのは4つ
- 仕事の範囲(何をやって、何をやらないか)
- 納期
- 金額(内訳があれば内訳も)
- 変更が出たときの扱い
契約書がなくても、この4つをメール1通にまとめて「この内容で進めます」と送り、相手から返事をもらえば、それが書面になります。
文例です。
ご相談いただいた内容を、以下の形で整理しました。範囲:〇〇。納期:〇月〇日。金額:〇〇円(内訳:△△)。範囲外の作業が発生した場合は、別途ご相談のうえ金額を整理します。この内容で進めてよろしければ、一言ご返信ください。
建設業では契約内容の書面交付が法律で定められている
建設業法では、請負契約の当事者が契約締結時に定められた事項を書面に記載し、署名または記名押印して相互に交付することが義務付けられています。これは契約を結ぶ時点の義務であり、契約後1週間に何をするかを定めたものではありません。ただ「決めたことは書面で相互に持っておく」という考え方は、建設業に限らずどの業種でも同じように働きます。契約や書面の扱いに迷ったときは、個別の判断を専門家に相談してください。
追加の頼まれごとが出たときの返し方
進めている途中で「ついでにこれもお願いできますか」と言われる場面があります。ここで「それは追加になります」と言えず、その場でなんとなく引き受けてしまう人は少なくありません。
その場で決めなくて大丈夫です。使える一言です。
承知しました。範囲が変わりますので、内容と金額を整理して今日中にお送りします。
受けるか断るかは、整理してから返事をすればいいのです。
NG例です。「まあいいか」でその場を口頭のまま受ける。納品時に金額の話で揉める。2件目の話が消える。書面に残すのは自分を守るためだけではありません。相手が自分の上司や家族に「これはこういう理由で決まった」と説明できるようにするためでもあります。
4〜7日目:頼まれる前に途中報告を出す
途中報告は「進捗」ではなく「判断してほしいこと」を送る
「進んでいます」は、相手に何も渡していない報告です。「AとBで迷っていて、Aで進めようと思いますが問題ないですか」——これが報告になります。相手が「はい」か「いいえ」で返せる形にするのがコツです。
見せられるものがなくても送れる報告の型
- 決めたこと
- 迷っていること
- 次にやること
この3行だけで大丈夫です。着手から数日では形が見えにくい仕事——開発、士業、設計——でも、この型なら送れます。
文例です。
決めたこと:〇〇の方向で進めています。迷っていること:△△について、A案とB案のどちらがよいか検討中です。次にやること:来週〇日までにA案で形にしてご相談します。
「順調です」だけの報告がかえって不安にさせる理由
中身のない報告は「何も見ていないのでは」と受け取られやすいものです。目安として、最初の1週間は2回、その後は週1回くらいのペースで送ると、ちょうどいい頻度になります。相手が「どうなってますか」と聞いてくる前に出す。これができれば、聞かなくていい相手になれます。
NG例です。相手から「どうなっていますか」という連絡が来た時点で、報告のタイミングはもう遅れています。この一通が来てしまったら、翌日には必ず中身のある報告を返してください。
発注側から見た「頼んでよかった」と「大丈夫かな」の分かれ目
発注側が最初の1週間に見ているのは腕ではなく「連絡が来るか」

発注した側は、納品物を見るまで腕を判断できません。判断できる材料は、連絡の早さと中身だけです。だから最初の1週間の連絡は、そのまま評価そのものになりやすいのです。
不安にさせる3つの沈黙
| 沈黙 | 相手が思うこと | 直し方 |
|---|---|---|
| 着手が見えない | 本当に始まっているのか | 1日目に着手連絡を送る |
| 返信が遅い | ちゃんと見てもらえているか | 当日中に「受け取りました」の一言を返す |
| 質問が小出し | 毎日何か聞かれて手間だ | 質問はためて1回にまとめる |
「頼んでよかった」は納品時ではなく最初の1週間で決まっている
契約から10日間、連絡がない。相手から「どうなっていますか」と連絡が来て、慌てて対応する。納品物自体はよくても、2件目の相談は別の人に流れる——という場面はよく聞く話です。腕が悪かったわけではなく、不安な10日間を作ってしまったことが原因になっています。
相手が社内で答えられる材料を渡す
発注した側は、社内で「あの人どう?」と聞かれる場面があります。そのとき「連絡が早くて安心できた」は、誰でも言いやすい言葉になります。最初の1週間の連絡は、相手がそう言うための材料を作る作業でもあるのです。
最初の1週間が、2件目と紹介につながる理由
次の仕事は納品後ではなく、進行中に決まっている

発注した側は、仕事が進んでいる最中に「次もこの人に頼むか」をもう決めていることが多いものです。納品後にお礼を言われてから営業をかけても、判断はすでに終わっています。だから契約後1週間は「今の仕事の段取り」であると同時に、「次の仕事の営業」でもあります。
「この人は連絡が早い」は紹介の一言になる
腕の良さは他人に説明しづらいものですが、「連絡が早くて安心だった」は誰でも言える言葉です。紹介は、この一言から起きることが多いといえます。紹介待ち型から抜けるのは、いい仕事を積み重ねることではなく、相手が他人に言える一言を最初の1週間で作っておくことです。
営業の流れは、知り合う→話を聞く→お金の話→返事をもらう→断られたあと→また頼まれる→仕事を切らさない、と続いていきます。契約後1週間の動きは、この中の「また頼まれる」の入口にあたります。営業全体の流れはこちらの記事で整理しています。
今日やること
いま進行中の案件があるなら、次の連絡日をこの場で決めて、一通送ってください。まだ案件がないなら、日別チェックリストを自分の業種の言葉に書き換えて保存しておいてください。これが、紹介待ち型から抜ける最小の行動になります。性格を変える必要はありません。連絡の順番を決めるだけでいいのです。
よくある質問
契約後、最初の連絡はいつまでに送ればいいですか?
契約当日か翌日まで。お礼だけでなく「いつ始めるか」「最初に何をするか」「次にいつ連絡するか」「お願いしたいこと」の4つを一通に入れます。2日空くと相手は着手しているか分からず不安になります。
受注後に契約書がない場合はどうすればいいですか?
仕事の範囲・納期・金額・変更時の扱いの4つをメール1通にまとめ「この内容で進めます」と送って返事をもらえば書面になります。建設業では契約締結時の書面交付が法律で定められています。他業種も同じ考え方で残すとよいでしょう。個別の判断は専門家に相談してください。
進捗報告はどのくらいの頻度で送ればいいですか?
最初の1週間は2回、その後は週1回が目安です。見せるものがなくても「決めたこと・迷っていること・次にやること」の3行で送れます。相手から「どうなってますか」と聞かれる前に出すのが基準です。
契約後に追加の依頼が出たときはどう対応すればいいですか?
その場で受けるか断るか決めなくて大丈夫です。「範囲が変わるので内容と金額を整理して送ります」と返し、書面で整理してから返事をします。口頭で「まあいいか」と受けると納品時に金額で揉めやすくなります。
契約後の連絡は多すぎると迷惑になりませんか?
毎日の細かい進捗や返信を求めすぎる連絡は負担になります。目安は「相手が判断することがあるときだけ返信を求める」「質問は溜めて1回で聞く」「それ以外は読むだけで済む報告にする」の3つです。
参照した情報源
- 建設業法第19条第1項(法令リード(建設業法条文データベース))・確認日 2026-09-13
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