対面営業・商談
閑散期にやること|忙しくなってからでは間に合わない動き
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
閑散期にやることは1つ。忙しくなってからでは間に合わない動きを先に済ませる
予定表を開くと、白い空白が何日も並んでいます。朝いちばんにメールを確認しても、依頼は1件も来ていません。去年もちょうどこの時期は暇だった気がしますが、忙しいときはそのことをすっかり忘れていました。
暇なのは、腕が落ちたからではありません。相手に忘れられたからでもありません。数か月前の忙しい時期に、次の仕事の種をまく時間を取っていなかった。その分が、今になってずれて届いているだけです。
目の前優先型かもしれません。営業がいつもあとまわしになり、自分が動かないと仕事が入らない型です。忙しいときは「今は回っているから大丈夫」と思っていたはずです。その「回っている」時期こそ、次の仕事の種をまく最後のタイミングだったのですが、目の前の納品を優先しているうちに過ぎていきます。
「閑散期 やること」で調べる人の多くが知りたいのは、今の暇の埋め方ではなく、次の繁忙期に営業を止めないための準備かもしれません。この記事ではその視点で解説します。個人事業主として動いている以上、暇な時期は誰にでも来ます。具体的にやることは、次の4つだけです。
- 過去の相手への近況連絡
- うまくいった案件の型づくり
- 見積の雛形づくり
- 事務の前倒し
この4つを選んだ基準は1つです。繁忙期になってからでも手が打てるか、閑散期のうちにしか手が打てないか。迷ったときは、この基準で判断してください。連絡と型づくりは、繁忙期に入ると後回しになりやすく、閑散期のうちにしか手を付けられません。
暇なのは腕が落ちたからではない
仕事が来ないと、つい自分の実力を疑いたくなります。ですが、多くの場合は実力の問題ではなく、営業の時間を取れていなかっただけです。忙しい数か月の間、目の前の納品に追われて、次の仕事につながる連絡を後回しにしていた。その結果が、今の空白として表れています。
閑散期は結果であって原因ではない
閑散期そのものを何とかしようとしても、今日明日で仕事が増えるわけではありません。閑散期は、数か月前の営業量が形になって出てきた結果です。原因は過去にあるので、今できることは「今の暇を埋める」ことではなく、「次の閑散期を短くする種をまく」ことです。

目の前優先型のまま次の繁忙期に入ると、同じことが半年後にもう一度起こります。閑散期を変えるには、閑散期そのものではなく、繁忙期の過ごし方を変える必要があります。この記事の最後に、その具体的なやり方を置いています。
今日やること:閑散期の持ち時間を書き出す
まず、あと何週間この暇が続きそうか、1日に営業へ使える時間はどれくらいか、紙に書き出してください。持ち時間が分かると、この後の4つの動きにどれだけ時間を割けるか判断できます。
NG例を1つ挙げます。暇だからと値下げの告知を出す、資格の勉強で1か月を全部埋める。どちらも、次の繁忙期が来たときに営業が止まる構造は変わっていません。
閑散期にやることの優先順位|「今の暇を埋める動き」と「次の繁忙期に効く動き」を分ける
閑散期にやりたくなることは色々あります。ですが、今の暇を埋めるだけの動きと、次の繁忙期に効く動きは別物です。

| 今の暇を埋める動き | 次の繁忙期に効く動き |
|---|---|
| 値下げの告知 | 過去の相手への近況連絡 |
| SNS投稿の量産 | うまくいった1件の型化 |
| 相手がいないまま新サービスを作る | 見積の雛形づくり |
| 勉強で予定を全部埋める | 帳簿・請求の前倒し |
右列だけが、繁忙期になってからでは手が回らない動きです。左列は今すぐ始められて気は紛れますが、繁忙期の忙しさには効きません。
優先順位の表(4つの動きと所要時間の目安)
| 順番 | やること | 所要時間の目安 | 繁忙期に回すと起きること |
|---|---|---|---|
| 1 | 過去の相手への近況連絡 | 1通15分 | 思い出してもらえないまま次の閑散期に入る |
| 2 | うまくいった案件の型化 | 2〜3時間 | 毎回いちから考えることになる |
| 3 | 見積の雛形づくり | 1日 | 「あとで送ります」で日が空く |
| 4 | 事務の前倒し | 数日〜1週間 | 確定申告の時期に慌てて間に合わせることになる |
(棚卸しの前段として、過去の相手を全員書き出す作業に半日ほどかかります)
繁忙期に回した動きほど、あとで取り戻すコストが高くなります。特に連絡は、相手の記憶から消えるほど再開しづらくなるので、閑散期の早い段階で手を付けておく価値があります。
なぜ連絡が一番先か(効くまで時間差がある)
近況連絡は、出してすぐ仕事になるものではありません。相手が思い出し、何かのタイミングで声をかけてくれるまで、時間差があります。だからこそ、閑散期の初日に出すほど、次の繁忙期に届きやすくなります。

半日で終わるものと1週間かかるものを分ける
近況連絡や案件の型化は、閑散期のうちの数日で終わります。一方、事務は期限が決まっていて逃げないので、最後に回しても間に合います。順番を間違えると、事務だけで閑散期が終わってしまいます。
迷ったときの判断基準はこうです。「今やらなくても、繁忙期に入ってから追いつけるか」を自分に聞いてください。追いつけると思えるなら後回しにして構いません。追いつけないと思うものから、先に手を付けます。
NG例を1つ挙げます。暇な時期に、まず新しいサービスを作ることから始める人がいます。相手が決まっていないまま作るので、作ったあとに営業が必要になり、そこで閑散期が終わってしまいます。
閑散期の連絡は売り込みではなく近況で出す|暇なときだけ来る連絡は相手にどう見えるか
閑散期の連絡でいちばん間違えやすいのが、売り込みの形にしてしまうことです。受け手の立場で考えてみてください。
暇なときだけ「お仕事ありませんか」と連絡が来ると、相手には「今、仕事がないんだな」と伝わります。頼む側は、困っている人より、いつも仕事が回っている人に頼みたいと思うものです。だからこそ、閑散期の連絡ほど、売り込みの形にしないことが大事になります。
3行の近況連絡の書き方(文例つき)
件名は「近況です」程度で構いません。本文はこの3行です。
- 最近やった仕事を1つ(相手の業界に近いもの)
- 相手の仕事で見かけたこと・気づいたことを1つ
- 「近くに寄るときに顔を出します」
依頼のお願いは書きません。文面の例です。
ご無沙汰しております。先日、◯◯の仕事を担当しました。その中で、△△という動きを感じました。近くに伺う用事があれば、また顔を出させてください。
このくらいの分量なら、読む側の負担にもなりません。長い近況報告や実績の説明を足したくなりますが、足すほど「頼んでほしい」気配が濃くなります。3行で止めておくくらいがちょうどいいです。
過去の相手を全員書き出し、最後に連絡した日を添える
過去2年で仕事をした相手、見積を出して決まらなかった相手を全員書き出し、横に「最後に連絡した日」を添えてください。日が古い順に出していきます。1日3通までにとどめます。まとめて出すと、返事が重なって対応が雑になりやすいためです。
暇なときだけ来る連絡はどう見えるか
NG例の文面を並べます。
- 「お仕事ありましたらぜひ」
- 「割引で対応します」
- 「最近暇でして」
どれも、仕事がない事実を先に伝えてしまっています。
返事が来なくても、仕事が減ったわけではなく、思い出してもらえなくなっただけ、ということが多いです。腕のせいではありません。
うまくいった案件を1件だけ型にする|繁忙期に毎回いちからにならないために
閑散期にしかできない作業があります。うまくいった案件の棚卸しです。
直近1年で、一番すんなり決まった案件を1件だけ選んでください。複数選ばないのがポイントです。何件も並べると、それぞれの違いに気を取られて、結局どれも手順として使えないまま終わります。1件に絞るからこそ、次にそのまま真似できます。次の5つの質問で書き出します。
- どこで知り合ったか
- 最初に何を聞いたか
- 見積を何項目に分けたか
- 返事はいつ・どうもらったか
- 納品後に何をしたか
書き出した5つが、そのまま次の案件で使う手順になります。特に②「最初に何を聞いたか」は忘れやすいので、そのときの質問文をそのまま残しておいてください。
一番うまくいった1件を5つの質問で書き出す
例えばデザイナーなら、こんな1行の流れになります。「知り合い経由→打ち合わせで先に納期を聞いた→見積は設計・制作・修正回数の3項目→翌週に電話で返事→納品1か月後に近況連絡」。受注率や金額のような数字は、ここには入れません。事実として残っているのは流れだけで十分です。
見積の雛形を項目分けで作る
総額だけの見積は、値段の話しかできなくなります。項目を分けた雛形を、閑散期のうちに作っておいてください。繁忙期になると「あとで送ります」となりがちで、そのまま日が空いてしまいます。雛形があれば、当日から翌日には出せます。
断られた1件は何が起きたかだけ残す
断られた案件も1件だけ振り返ってください。書くのは事実だけです。見積を出した日、返事がなかった日数、こちらから送った連絡の回数。自分の性格や向き不向きは書きません。
残すのは反省文ではなく、次に同じ場面が来たときに参照できる記録です。感情を書かず、事実だけを短く残しておくと、あとで読み返したときにも使いやすくなります。
閑散期のうちに事務を終わらせる|確定申告の受付期間は自分で動かせない
確定申告の受付期間は、自分の繁忙期とは関係なく、国が先に決めています。例えば令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告は、受付が令和8年2月16日から3月16日までと定められていました。この時期が忙しい仕事であれば、閑散期のうちに帳簿と領収書を前倒しで整えておく必要があります。
受付期間は年によって多少前後します。「例年この時期」と決めつけずに、該当する年の受付期間はその都度、国税庁の手引きで確認してください。税務の個別の判断は、専門家に相談することをおすすめします。
閑散期にやる事務の順番
- 領収書を月別に分ける
- 売上の入金を1件ずつ確認する
- 未回収の請求を洗い出して連絡する
- 帳簿を最新月まで入れる
未回収の請求を洗い出す
未回収の確認は、閑散期の方が落ち着いて手を付けられます。入金があれば、閑散期の資金の足しにもなります。順番を守る理由は単純です。未回収の請求より先に帳簿を締めてしまうと、あとから数字がずれて確認の手間が増えます。
NG例を1つ挙げます。閑散期を全部事務で埋めてしまい、連絡と型づくりに手を付けないまま繁忙期に入ってしまうケースです。事務は最後でも間に合いますが、連絡は間に合いません。
閑散期にやってはいけないこと|焦りから出る3つの動き
ここに挙げる3つは、どれも「知らないだけ」で、やってしまった人が悪いわけではありません。暇が続くと焦りが出て、つい手を出したくなる動きです。
値下げの告知
閑散期に下げた値段は、繁忙期になっても戻しにくいものです。下げるのであれば、単価そのものではなく、項目を減らして金額を下げる形にしてください。NG文面は「閑散期につき◯割引」です。
相手がいないまま新サービスを作る
作ってから売り先を探すと、閑散期が終わるころにようやく営業が始まることになります。新しいサービスを作るなら、近況連絡の返事で出てきた困りごとをもとに作ってください。
学びで暇を全部埋める
勉強は無駄ではありません。ただ、営業をしなくていい理由になりやすいという面があります。午前は連絡、午後は勉強、というように、連絡の時間を先に固定してください。
次の閑散期を作らないために|繁忙期の営業を週1回30分に固定する
閑散期の終わりにやることの中で、いちばん大事な1つです。忙しくなると営業が消えてしまう構造を変えるには、量を増やすのではなく、時間を固定することが効きます。

予定表に「毎週◯曜の朝30分は営業」と先に入れてください。案件の予定は、その後ろに入れます。予定に入れずに「時間ができたらやる」にすると、繁忙期は目の前の納品が優先され、結局その週は動かないまま終わります。
繁忙期の営業を週1回30分で予定表に固定する
30分でやることは1つだけです。近況連絡を1通出す、または会う予定を1つ入れる。繁忙期はこれ以上増やさなくて構いません。
閑散期の記録を1行残す
「いつから暇になったか」「その前の数か月、営業に何時間使ったか」を1行で書き残してください。来年の忙しい時期にこの1行を見返すと、閑散期が近づいているのが自分で分かるようになります。
今日やること:次の繁忙期の最初の週に営業の予定を入れる
社長らしくなる必要も、営業が得意になる必要もありません。週1回30分だけ、目の前の仕事より先に予定へ入れる。それだけで、閑散期の長さは変わっていきます。
営業の流れ全体は、こちらにまとめています。営業の流れ全体はこちら
よくある質問
閑散期はいつまで続きますか?
業種や相手先によって違うため、断定はできません。「いつ暇になったか」「その前の数か月に営業へ使った時間」を1行で記録しておくと、翌年は自分で見通しを立てやすくなります。閑散期の長さは、腕よりも忙しい時期の営業量で変わりやすいです。
暇な時期に営業の連絡をすると、焦っていると思われませんか?
「お仕事ありませんか」という形だと、そう伝わりやすいです。最近やった仕事・相手の業界で気づいたこと・近くに寄る予定、この3行の近況連絡であれば、仕事の有無は伝わりません。
閑散期は単価を下げて仕事を取るべきですか?
閑散期に下げた単価は、繁忙期になっても戻しにくいものです。下げるのであれば、単価そのものではなく、項目を減らして金額を下げる形にしてください。
個人事業主が暇な時期にやるべき事務は何ですか?
確定申告の前倒しが代表例です。受付期間は年によって多少前後し、令和7年分は令和8年2月16日から3月16日までが受付期間でした。あわせて領収書の月別整理、未回収の請求の確認も進めておきます。該当する年の受付期間は国税庁の手引きで確認し、個別の税務判断は専門家に相談してください。
暇な時期に勉強するのは無駄ですか?
無駄ではありません。ただ、営業をしなくていい理由になりやすい面があります。午前に近況連絡を1通出してから午後に勉強する、というように順番を決めておくとよいです。
参照した情報源
- 令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(国税庁)・確認日 2026-09-16
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