対面営業・商談

管理栄養士の独立|勤め先を出たあと、最初の依頼が来るまで

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

独立した管理栄養士に最初の依頼が来ないのは、営業が下手だからではない

勤め先を出て独立した管理栄養士から、よく聞く言葉があります。「相談は来るのに、仕事にならない」。これは営業が下手なのではなく、止まっている場所が違います。手続きの前で足が止まっているだけなら、順番さえ知れば動けます。

手続きより前で止まっている場所

独立の準備というと、開業届や屋号、名刺やホームページを思い浮かべます。実際に止まっているのは、その手前です。「誰に、何と言うか」が決まっていないので、名刺ができても渡す場面が作れませんし、ホームページができても見てもらう相手が思い浮かびません。手続きの話はいったん置いて、まずここを見ていきます。

切り出せない型かもしれません

まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型かもしれません。

栄養の相談には乗れるのに、仕事として頼んでほしいと言った瞬間、押し売りになる気がする。そう感じている人が多いです。相談に答えているときは自然に話せるのに、金額の話になった途端に言葉が出なくなる、という感覚に近いかもしれません。

頼み方が下手だからではない

頼み方が下手なのではなく、構造の問題です。勤め先では「相談される側」でした。聞かれたことに答えるのが仕事で、その場でお金の話をすることはありません。独立しても同じ調子で相談を受けるので、無料が前提のまま続いてしまいます。相談と依頼のあいだにもう一段あることを、単純に習っていないだけです。

たとえば元同僚から「最近どうしてる?」と聞かれたとき、「独立して個人でやってる」で終わらせず、「こういうことを頼めるようになった」まで一言添えるだけで、相手は次に何を話せばいいか分かります。頼まずに近況を伝えるだけでもいいです。性格はそのままでいい。無理に売り込む人にならなくても、次の一歩は作れます。独立後の営業の進め方全体は独立後の営業のやり方にまとめています。

独立した管理栄養士に、仕事はどこから来るのか

新しい相手を探す前に、すでにつながっている相手を見直します。ゼロから探すより、すでにある接点を思い出すほうが早いです。

勤め先で関わった人を職種で書き出す

元同僚、他職種(ケアマネジャー、介護施設の職員、保育園、ジム、飲食店)、知人。この3つに分けて、関わった人を書き出します。もちろん、患者や利用者の個人情報は持ち出しません。書き出すのは「自分がどんな人と接点があったか」という職種と関係性だけです。書き出してみると、想像していたより多くの人と接点があったことに気づきます。

地域の拠点という選択肢

新しい相手と出会う場として、日本栄養士会が運営する「栄養ケア・ステーション」という仕組みがあります。管理栄養士・栄養士が地域住民の日常生活の場で栄養ケアを実施、提供するための仕組みであり、そのための地域密着型の拠点です。すでに関わりのある相手だけでなく、地域の中に新しく接点を作る場としても選択肢になります。個人としての関わり方や登録の条件は、公式サイトで確認してから動いてください。

経路ごとに最初の一言が違う

同じ「独立しました」でも、相手によって最初の一言は変わります。元同僚には仕事の内容から入り、地域の拠点のような初対面の場では自分の紹介より先に相手の話を聞く、という違いです。

相手最初の一言NGの一言
元同僚「実は独立して、個人でやっています」「仕事あったらお願いします」
他職種の知人「〇〇の相談を個人で受けられるようになりました」「何かあればいつでも」
友人・知人「近況報告なんだけど、独立しました」「お願いできる仕事ないかな」
地域の拠点など「一度お話を聞かせてください」(まだ何も言わない)

私の感覚では、最初の依頼は新しく出会った相手からより、もともと知っている相手から来ることのほうが多いです。どの経路が何割、とは言えませんが、書き出した相手に連絡する優先順位は上げておいて損はありません。

「相談」を「依頼」に変える最初の一言(そのまま使える文例)

頼まない近況の文面

「仕事ください」は書きません。近況と、できることを一つだけ添えます。頼む文ではなく、知らせる文にするのがポイントです。

ご無沙汰しています。実は先日独立して、管理栄養士として個人で活動を始めました。しばらくは献立作成と栄養相談を中心にやっています。近くに行く用事があれば、また顔を出させてください。

この文面には「お願い」の言葉が一つも入っていません。それでも、相手の中に「今度何か頼めるかもしれない」という選択肢が残ります。

相談を仕事の形にして返す言い方

無料の相談が長くなってきたら、区切りを入れます。何度もやり取りが続いて内容が具体的になってきたタイミングが合図です。

今のお話、ここから先は仕事としてお受けしています。内容と金額をまとめて送ってもいいですか。

断るのではなく、仕事の形に変える言い方です。相手を止めるのではなく、続きを作ります。

NG例

「何かあればいつでも」「お安くしますので」「勉強させてください」で終わる文面は、次につながりません。相手に次の行動を渡していないからです。「何かあれば」は相手に判断を丸投げしていますし、「お安くしますので」は頼まれる前に値段を下げています。「勉強させてください」は、仕事ではなく無料の練習として受け取られます。どれも、相手が次に何をすればいいか分からないまま終わる言葉です。

対面とメッセージで順番が変わる

対面では、先に相手の近況や状況を聞いてから、最後にさらっと自分の独立を付け足します。メッセージでは逆で、近況を先に書いて、最後に「良ければまた話を聞かせてください」で締めます。対面は聞く時間が長く取れるので後出し、メッセージは読み飛ばされる前に伝えたいことを先出しにします。

依頼が来る前に決めておく3つ(メニュー・値段の出し方・受けない範囲)

依頼が来てから考え始めると、その場しのぎになります。3つだけ、先に決めておきます。

メニューは3つまで

献立作成、栄養相談、セミナー講師。できることを並べるのではなく「誰に何を渡すか」で書きます。「なんでもできます」は、相手にとって何を頼めばいいか分からない言葉です。3つに絞っておくと、相手も自分もどれを頼むかすぐに判断できます。

値段は聞かれたら言える状態にしておく

金額そのものより、決め方を先に用意しておきます。総額だけをどんと出すのではなく、時間にかかる分と、成果物にかかる分を分けておきます。たとえば献立作成なら「作成にかかる時間の分」と「献立表そのものの分」を分けて考えておくと、相手から内容を減らしたいと言われたときも、どこを削れば金額が変わるかをその場で説明できます。聞かれてから慌てて考えると、その場で低い金額を口にしてしまいます。

受けない範囲を先に決める

診断や治療の判断には踏み込みません。「それは治療の判断になるので、主治医に確認してください」と言える線を先に決めておきます。たとえば持病のある相手から食事の量や制限について踏み込んだ質問を受けたときも、この一言があれば安心して線を引けます。資格の範囲や契約に関わる部分は、個別の判断を専門家に相談してください。線を先に決めておくと、依頼を受けたその場で慌てて断る必要がなくなります。

NG例

頼まれてから初めて値段を考え、その場で安い額を言ってしまう。これをやると、次に同じ相手から頼まれたときも、同じ安い額から動けなくなります。

独立直後にやることの順番表(手続きと連絡を同時に進める)

手続きは並行、連絡は先

開業の手続きには期限や要件があるので、税務署などで確認しながら進めます。ただし、手続きがすべて終わるのを待ってから連絡を始める必要はありません。連絡は手続きと並行して、むしろ先に始めます。手続きを理由に連絡を後回しにすると、その分だけ最初の依頼も遅れます。

順番表

知らせる会う受ける次につなぐ
独立直後元同僚・知人に近況を送る会える人から挨拶に回るまだ受けない-
依頼前相談相手に独立を伝える相手の困りごとを聞く相談として乗る次に連絡する日を決める
依頼後-納品後の様子を聞く仕事として金額を出すお礼と一緒に次の相談を聞く

この表は、そのまま自分の予定に書き写して使えます。今どの段階にいるかが分かれば、次に何をすればいいかで迷いません。

自分から動く日を先に決める

問い合わせを待つ前提にしません。週に一度、自分から連絡を出す日を予定に入れておきます。曜日を決めて、書き出した相手に順番に連絡していくだけでも十分です。予定に入れておかないと、目の前の仕事に押されていつまでも後回しになります。

NG例

名刺やホームページ、SNSが整うまで誰にも知らせない。整うのを待っているあいだ、相手はほかの人に相談してしまいます。

会いに行く口実の作り方(対面が効く場面)

会う理由は仕事の話でなくていい

挨拶、施設見学、勉強会への同席。理由は仕事の話でなくて構いません。介護施設やジムなど、他職種の現場であれば「見学させてください」だけでも十分な口実になります。近況を伝えて、相手の困りごとを聞くだけで十分です。

会ったら聞く順番

自分の説明から始めません。相手の現場で困っていることを聞く。次に、自分ができることを一つだけ伝える。最後に、次の日程を決める。たとえば「最近、利用者さんの食事量が減っていて」と聞いたら、その場で解決策を並べるのではなく、まず最後まで聞き切ります。この順番を守るだけで、聞かれてもいないことを説明する時間がなくなります。

会った当日に送る一文

お礼と、相手が言っていた困りごとを一つ書き添えます。

本日はお時間いただきありがとうございました。〇〇でお困りとうかがったので、お力になれそうなことがあればまたご連絡します。

この一文があるだけで、相手は「話をちゃんと聞いてもらえた」と感じます。

NG例

資格や経歴の説明で時間を使い切ってしまう。相手が知りたいのは資格ではなく、自分の困りごとに答えてもらえるかどうかです。

先に独立した人がつまずきやすい3つの落とし穴

元同僚に「仕事ください」で気まずくなる

受け手は、具体的に何を頼まれたのか分かりません。近況と、できることを一つだけ伝える言い方に置き換えます。今日やれる一手は、送る前に「仕事ください」の一文を消して読み返すことです。

無料相談が続いて線が引けない

最初の一回で区切りを言わないと、ずっと無料で続きます。断る言い方ではなく、仕事の形にする言い方に変えます。今日やれる一手は、次に相談が来たら「ここから先は仕事としてお受けしています」の一言を使ってみることです。

準備が先で連絡が後になる

準備を増やす動きは、いつまでも続けられます。名刺、ホームページ、資料。どれも終わりがありません。準備を続けているあいだは連絡を出さずに済むので、気持ちのうえでは楽です。ただ、その分だけ最初の依頼が来る日も後ろにずれます。今日やれる一手は、それらが整っていなくても、今日中に1人へ近況を送ることです。

相談はすでに来ています。足りないのは営業の才能ではなく、相談を仕事の形にして返す一言だけです。頼まずに近況を伝えることから、今日始められます。焦って全部を一度にやる必要はありません。今日書き出した1人に、1通送るところから始めれば十分です。

よくある質問

管理栄養士が独立して、最初の仕事はどうやって見つけますか?

新規探しより先に、勤め先で関わった人へ近況を知らせ、来ている相談を仕事の形にして返します。頼まなくていいです。

フリーランスの管理栄養士にはどんな仕事がありますか?

献立作成・栄養相談・セミナー講師など。自分のメニューは「誰に何を渡すか」で3つまでに絞ります。

栄養ケア・ステーションとは何ですか?

管理栄養士・栄養士が地域住民の日常生活の場で栄養ケアを提供する仕組みで、地域密着型の拠点です。詳細は日本栄養士会のサイトで確認してください。

無料で相談に乗っている知人に、どうやって有料に切り替えますか?

相談の終わりに「ここから先は仕事としてお受けしています」と区切り、内容と金額を送ってよいか聞きます。

元の勤め先や元同僚に営業してもいいですか?

「仕事ください」ではなく近況と「できること一つ」を伝えます。患者・利用者の個人情報は持ち出しません。

参照した情報源

  1. 栄養ケア・ステーション | 公益社団法人 日本栄養士会(公益社団法人 日本栄養士会)・確認日 2026-09-20

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