対面営業・商談
以前名刺交換した相手へのメール例文|日が空いていても、用件なしで送れる書き方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
日が空いたから送れないのではない。仕事ほしさが透ける気がして送れない
交流会や展示会で名刺交換した相手が、名刺入れの中に何十枚もたまっている。そのうちの一枚を見て、「そういえばこの人、話が合ったな」と思い出す。紹介が細ってきて、次の当てを探すうちに名刺入れを見返すこともあります。けれど、メールを書こうとして手が止まります。
送れない理由を「日が空いたから」だと思っていないでしょうか。実際はそうではない、という人も少なくありません。用件のないメールを送った瞬間、「仕事がほしくて連絡してきた」と相手に見透かされる気がして、そこで止まってしまう——そんなケースもあるのではないでしょうか。
この記事が対象にしているのは、まだ一度も仕事をしたことがなく、名刺交換だけで関係が止まっている相手です。すでに取引や面識がある相手への「ご無沙汰」メールはご無沙汰している相手へのメール例文|用件がなくても送れる書き方で扱っているので、そちらを参照してください。
名刺入れを整理しながら、「あの人、今どうしているだろう」と思う瞬間があっても、そこから先に進めない人は多いと思います。連絡先は手元にあるのに、指が止まる。用件がないことが送らない理由になっているように見えて、実際は別のところで止まっています。
切り出せない型かもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型です。頼んだ瞬間、対等じゃなくなる気がする、という感覚が根っこにあるという人が多いです。
用件をひねり出そうとするほど、文面は売り込みの形に近づきます。「サービスのご案内」「〇〇のお知らせ」。こうした言葉を入れた時点で、メールは一枚の広告になります。逆に、用件を持たない連絡のほうが、受け手には「覚えていてくれた」と読まれます。
だから、用件なしは妥協ではありません。この場面でいちばん安全な形です。この記事で渡すのは「用件を作る方法」ではなく、「用件なしで書ける型」を1つだけです。頼まずに近況を伝えるだけでもいい、というのがこの記事の立場です。
たとえばこんな書き出しは避けたいところです。
「弊社サービスをご案内させていただきたくご連絡しました」
受け手はこの1行目を読んだ時点で営業メールに分類され、開かれずに閉じられることが多いです。件名も本文も「サービス」「ご案内」が主語になった瞬間、頭の中では一枚の広告として処理されます。ここから先で渡すのは、主語を相手に戻す書き方です。
用件なしで送れるメールの型——3つのパーツで足りる
用件のないメールは、3つのパーツで組み立てます。難しい言い回しは要りません。
パーツ1: 思い出してもらう手がかり
いつ・どこで・何を話したかを1文で書きます。「先月の【交流会名】で、【相手が話していた話題】の話をさせていただいた【自分の職種】です」という形です。名刺の裏や当日のメモに残した相手の話題があれば、それを使います。
手がかりは「相手が話したこと」がいちばん強く働きます。「自分が話したこと」を書いても、相手の記憶には残りにくいものです。当日のメモが残っていない場合は、交流会の名前と開催時期だけでも手がかりになります。「〇〇交流会でお会いした」の一文があるだけで、相手は記憶をたどり始めます。
パーツ2: 相手の話に戻す一言
「あのとき話されていた〇〇、その後いかがですか」という形です。自分の近況は1文まで、相手の話に2文使います。ここが用件の代わりになります。
相手が話していた内容を覚えていない場合は、相手の業界や会社の出来事に触れる方法があります。「〇〇業界も最近は動きが多いですね」といった一言でも、手がかりとして機能します。無理に作り話をする必要はありません。「その節はありがとうございました」に続けて、業界の話題に触れるだけで十分です。
パーツ3: 頼まない締め
「特にご用件があるわけではなく、ふと思い出してご連絡しました」「ご返信はお気遣いなく」「またお会いできる機会があれば」。この3つのどれかで締めます。仕事の依頼、打ち合わせの打診、資料の送付は、1通目には入れません。3つとも短い文で十分です。長く書こうとするほど、言い訳や詫びが増えて、用件なしの軽さが崩れていきます。
3つのパーツをつなげると、こうなります。名刺交換から3か月ほどたった設定です。
件名: 6月の異業種交流会でお会いした〇〇(職種)の△△です
□□様
お世話になっております。6月の異業種交流会でお会いした、△△と申します。
あのとき話されていた【相手が話していた話題】、その後いかがでしょうか。私は相変わらず【自分の職種】として活動しております。
特にご用件があるわけではなく、ふと思い出してご連絡いたしました。ご返信はお気遣いなく。またお会いできる機会があれば嬉しいです。
【交流会名】【相手が話していた話題】【自分の職種】の部分を自分の状況に差し替えれば、そのまま使えます。
相手が話していた内容をはっきり覚えていない場合は、次のように書けます。
件名: 6月の異業種交流会でお会いした〇〇(職種)の△△です
□□様
先日の異業種交流会では、お話しさせていただきありがとうございました。□□様の業界も最近は動きが多いと伺っており、その後の状況が気になりご連絡いたしました。
特にご用件があるわけではなく、ふと思い出してご連絡いたしました。ご返信はお気遣いなく。
空いた日数で変えるのは、詫びの量ではなく手がかりの量
空いた期間によって変えるのは、詫びの言葉の量ではありません。手がかりの量です。詫びを重ねるほど、相手に「遅れたこと」を意識させてしまいます。
| 空いた期間 | 書き出しの一文 | 手がかりの量 | 自分の近況 | NG |
|---|---|---|---|---|
| 1〜3か月 | 先日は〇〇でお話しできて楽しかったです | 1つで足りる | 一言添える程度 | 「ご連絡が遅くなり」と書く |
| 半年〜1年 | ご無沙汰しております+いつ・どこで・何の話か | 2つ | 変化があれば一文 | 手がかりを1つだけで済ませる |
| 1年以上 | 覚えていらっしゃらないかもしれませんが | 2つ以上 | 当時と今の変化を1文で | 詫びを繰り返す |
| 会った場所を思い出せない | 送る優先度を下げる | ― | ― | 無理に手がかりを作る |
この表はあくまで目安であり、統計に基づくものではありません。
1〜3か月: 詫びはいらない
「先日は〇〇でお話しできて楽しかったです」で始めます。「ご連絡が遅くなり」と書くと、遅れたことを相手に意識させてしまいます。手がかりは1つで足ります。会話の中で出た話題を1つ拾えば十分です。「先日は」で始めると直近の記憶であることが伝わり、詫びの言葉を挟む必要がなくなります。
半年〜1年: ご無沙汰+手がかりを2つ
「ご無沙汰しております」に続けて、いつ・どこで・何の話をしたかを書きます。相手の名刺の肩書や、会社の出来事に一言触れると、「調べて書いた」ことが伝わります。肩書の変化(異動や独立など)に触れられると、相手は「見てくれている」と感じやすくなります。
1年以上: 覚えていない前提で書く
「覚えていらっしゃらないかもしれませんが」は1回だけ使います。詫びは重ねません。自分の近況は「当時は〇〇をしていて、いまは△△をしています」と、変化を1文で書きます。変化を書くときは、誇張せず事実だけを短く書きます。
会った場所そのものを思い出せない相手については、送る優先度を下げてかまいません。無理に手がかりを作ろうとすると、文面がぎこちなくなります。別の相手から書き始めるほうが早く進みます。
件名は「いつ・どこで・何をしている誰か」が入っていれば開かれる
開かれる件名の形
「〇月の△△交流会でお会いした□□(職種)の◇◇です」という形にします。相手は名前より「何をしている人か」で記憶していることが多いので、職種を必ず入れます。20〜30字を目安にします。
NG件名
「ご挨拶」「ご無沙汰しております」「お世話になっております」だけの件名は、迷惑メールや一斉送信と区別がつきません。「ご提案」「ご案内」は営業メールに分類されます。返信を装って「Re:」を付けるのは、信頼を落とす行為です。
件名と本文1行目をそろえる
件名で名乗った内容は、本文1行目でも繰り返します。メールの一覧画面でプレビューに出るのは本文1行目なので、件名だけ見て開いた相手が、もう一度内容を確認できます。
良い件名と悪い件名を並べます。
- 良い「5月の〇〇展示会でお会いしたWebデザイナーの△△です」/ 悪い「ご無沙汰しております」
- 良い「先日の異業種交流会でお話しした税理士の□□です」/ 悪い「ご提案がございます」
- 良い「〇〇セミナーでご一緒したカメラマンの◇◇です」/ 悪い「Re: お世話になっております」
件名に職種を入れる理由はもう一つあります。受信トレイの中に同じ名字の相手が複数いても、職種があれば区別がつきます。
受け手はこう読み分けている——売り込みと判定される3つの合図
交流会で名刺を配る側に立って考えると、受け手は文面のうまさではなく「自分の話を覚えていたか」で読み分けています。私が現場で見てきた感覚では、そこを外すと文面がどれだけ丁寧でも営業メールとして処理されます。
売り込みと判定される3つの合図
①サービス紹介のURL・料金・資料の添付、②「ぜひ一度お打ち合わせを」という打診、③相手の名前と会った場所が入っていない一斉送信の匂い。この3つのうち1つでもあれば、営業メールの箱に入ります。①は「売るためのメール」だと即座に伝わります。②は初回にしては踏み込みすぎで、身構えさせます。③は文面がどれだけ丁寧でも宛先の個別性が感じられず、一斉送信の匂いが残ります。
NG例文→直し方
近況が自分の宣伝になっている例です。
NG「〇〇サービスを始めました。ご興味があればぜひ」
これを相手の話に戻す形に直すと、こうなります。
OK「あのとき話されていた〇〇、その後いかがですか。私は相変わらず〇〇をしております」
詫びを3回重ねた例も直します。
NG「ご無沙汰しており失礼いたしました。ご連絡が遅くなり申し訳ございません。突然のご連絡失礼いたします」
OK「ご無沙汰しております。〇月の△△でお会いした際のお話が印象に残っており、ご連絡いたしました」
返事が来ない=読まれていない、ではない
返信がなくても、名前と職種は相手に届いています。次に会ったとき、「メールいただいた方ですよね」になることがあります。返事の有無で自分の値打ちを測る必要はありません。
返事が来たあと、来なかったあとの次の一手
返事が来たら: 会う口実を1つだけ
1往復目で仕事の話はしません。「近くに伺う予定があるので、お茶でも」「〇〇の話、もう少し聞かせてください」のように、相手の話を深める口実で会います。会う口実は、こちらの用事のついでという形にすると誘いやすくなります。「近くに伺うので」は、相手に負担をかけずに誘える言い方です。返信が来たら日程を1つ提案し、当日は相手の話を聞く。この3ステップで進めます。
来なかったら: 3か月後にもう1通、テーマは変える
返事がなくても、責めたり催促したりしません。「先日は失礼しました」とも書きません。相手の業界の出来事や、自分の側の変化(新しい仕事、拠点の変更など)をきっかけに、初回と同じ型でもう1通送ります。3か月という間隔にも理由があります。短すぎると催促に見え、長すぎると最初のやり取り自体を忘れられてしまいます。2通目も返事がなければ、3通目は季節の挨拶に切り替えます。
送った相手を記録する
誰に、いつ、何を書いて送ったかを1行で残します。表計算やメモで十分です。記録があれば、次の連絡で「前回〇〇の話を書きました」が使えます。記録があると、2通目を送るときの心理的な壁が下がります。
こうした一通のメールは、営業全体の流れの中では、最初の接点をつなぎ直す一手にあたります。仕事の依頼まではまだ距離がある段階だからこそ、用件なしで送れる形を持っておくと動きやすくなります。
今日やること: 名刺入れから3枚選んで、1通だけ送る
3枚の選び方
優先順は、①話が盛り上がった相手(相手の話題を覚えている)、②困っていることを口にしていた相手、③同じ業界・近い地域の相手、の順です。「仕事をくれそうな人」から選ぶと、文面が売り込みに戻ってしまいます。選ぶときに完璧を求める必要はありません。迷ったら、直感で「話しやすかった」と感じた相手から始めて構いません。
送る前チェック5項目
- いつ・どこで会ったかが1行目にある
- 相手が話したことに触れている
- 自分の近況は1文まで
- 頼み・打診・URL・料金がない
- 詫びが1回以下
この5つを満たしていれば、送って大丈夫です。
1通送ったら記録して終わり
3枚選んでも、今日は1通で十分です。送った事実を記録します。返事を待つより、明日もう1通出すほうが早く進みます。
頼まずに近況を伝えるだけでもいい。性格を変える必要はありません。順番と型の話です。
よくある質問
以前名刺交換した相手にメールを送るとき、件名はどう書けばいいですか?
「〇月の△△交流会でお会いした□□(職種)の◇◇です」のように、いつ・どこで・何をしている誰か、を件名に入れる。「ご挨拶」「ご無沙汰しております」だけの件名は開かれにくい
名刺交換から1年以上たっていても、メールを送っていいですか?
送ってよい。覚えていない前提で、いつ・どこで・何の話をしたかの手がかりを2つ以上入れる。「覚えていらっしゃらないかもしれませんが」は1回だけ。詫びは重ねない
用件がないのに連絡して、迷惑ではないですか?
用件をひねり出した「ご案内」のほうが営業メールに見える。相手が話していたことに戻す一言と「ご返信はお気遣いなく」の締めがあれば、用件なしの連絡は「覚えていてくれた」と読まれる
相手が自分のことを覚えていなかったらどうしますか?
覚えていない前提で書くのが基本。会った場所・時期・相手が話していた内容を先に書き、自分の名前と職種を添える。覚えていなくても失礼にはならない
送っても返事が来なかったらどうすればいいですか?
催促しない。3か月ほど空けて、テーマを変えてもう1通、初回と同じ型で送る。返事がなくても名前と職種は届いていて、次に会うときの手がかりになる
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