代理店・パートナー制度
一次代理店から二次代理店へ|多層構造のPRM管理設計(日本型実務)
このシリーズの全体像 PRM・代理店管理ツール 完全ガイド
多層構造のPRM(パートナー管理)を語るとき、たいていの解説は本部やメーカーの目線で階層図を描いて終わります。ですが実際に構造が壊れるのは末端からです。商材の仕入れ先が一次代理店に限られている場合、二次代理店は取引を一次代理店に依存しやすく、逃げ場が少なくなります(実際の依存度は取引先の数や契約形態など個別事情で変わります)。この記事は、その二次代理店から見た景色を起点に、権限・価格・案件登録・独占禁止法という4つの切り口で「二次代理店が納得して動き続ける設計」を整理します。
多層構造のPRM管理は「層ごとに見せるものを分ける」ことがすべて
一次代理店は、メーカーやサービス提供会社と直接契約するケースが多い代理店です。メーカー(代理店本部)をピラミッドの頂点と考えた場合、その直下にくる代理店を指します。二次代理店は一次代理店と契約するケースが多く、商材提供や営業支援、販売ノウハウ、研修などを一次代理店から受けます。

両者の違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 一次代理店 | 二次代理店 |
|---|---|---|
| 契約の相手 | メーカー・サービス提供会社(直接契約するケースが多い) | 一次代理店(契約するケースが多い) |
| 受け取る情報 | 商材情報・販売条件・研修・販促資料を直接受ける | 一次代理店経由で商材提供・営業支援・ノウハウ・研修を受ける |
| マージン | 直接契約分 | 一次のマージンが入るため低くなる場合がある |
ベンダー→卸→代理店→顧客のような多段構造では、それぞれの層に応じた権限・価格・実績の見え方を分けて管理する必要があります。この「権限・価格・実績」の3点セットが、多層PRM設計の骨格です。
設計の順番は次の4手順で進めます。
- 層を定義する(誰が一次で誰が二次か)
- 各層の権限を決める(誰が何を見られるか)
- 価格(仕切り)を層ごとに閉じる
- 実績の見え方を決める
ツール選定はこの4手順を終えたあとです。順番を逆にすると、ツールの設定画面に組織構造を無理やり合わせることになり、あとで作り直しになります。
NG例は、一次代理店も二次代理店も同じ管理画面に同じ権限で入れてしまうケースです。二次代理店が一次代理店の仕切り価格まで見えてしまい、価格の逆転や値引き合戦の引き金になります。価格が見えた瞬間に「なぜあの代理店だけ安いのか」という問い合わせにつながりやすいのは、こうしたパターンです。
層を定義する:契約の相手で線を引く(本記事の推奨)
層の線引きは営業の巧拙で決めるものではありません。S3は『一次代理店はメーカー・サービス提供会社と直接契約するケースが多く、二次代理店は一次代理店と契約するケースが多い』という傾向を示しています。本記事では、その傾向を踏まえた運用ルールとして、契約の相手で層を線引きすることを推奨します。ここを曖昧にすると、後の権限設計がすべてぶれます。
一次代理店は提供元と直接やり取りできるため、商材情報や販売条件、研修、販促資料などを直接受け取れます。つまり一次代理店には「情報の一次受け」という役割が自動的に付きます。
二次代理店のマージンは、一次代理店のマージンが間に入るため低くなる場合があります。層を増やすほど末端の取り分が薄くなる構造は、契約前に必ず開示しておく必要があります。二次代理店の担当者から「うちの仕切りがどう決まっているのか、一次さんに聞いてもはぐらかされる」という声が出るのは、この開示を怠っているサインです。隠したまま契約すると、二次代理店が実際の入金額を見て初めて事実を知ることになり、信頼関係を損ないやすくなります。
実務での手順はこうです。契約書の当事者名を一覧化し、①メーカーと直接契約している会社、②一次代理店と契約している会社、③二次代理店と契約している会社、の3列に全社を仕分けます。どの列にも入らない「口約束の紹介先」が出てきたら、そこが最初の穴です。契約書がないまま動いている紹介ルートは、権限もマージンも決めようがありません。三次代理店を作る場合も同じ手順を繰り返し、列を1つ増やすだけです。
権限を決める:誰に何を見せ、誰が何を承認するか
権限は「閲覧」「登録」「承認」の3種類に分けて考えます。多段構造では、層ごとに権限・価格・実績の見え方を分けて管理する必要があります。持ち帰り用の権限表はこの形です。

| 権限 | 一次代理店 | 二次代理店 | メーカー |
|---|---|---|---|
| 閲覧 | 自社と配下の二次代理店の実績 | 自社の実績のみ | 全層の実績 |
| 登録 | 自社の案件を登録 | 自社の案件を登録 | 登録内容を確認 |
| 承認 | 配下の二次代理店の案件を一次判断 | なし | 最終承認・重複確認 |
閲覧の原則はシンプルです。自社と自社の配下だけが見える状態にします。一次代理店は自社配下の二次代理店の実績を見られますが、他の一次代理店の実績は見えません。二次代理店は自社の実績だけです。
一番もめるのは承認の設計です。二次代理店が登録した案件を、一次代理店が承認するのか、メーカーが承認するのか。一次代理店を飛ばして承認すると一次代理店の存在意義が消え、逆に一次代理店に全部通すと承認が滞ります。
NG例は、メーカーが二次代理店に直接連絡して案件を引き上げるケースです。契約上は一次代理店との取引なのに、実務で一次代理店を飛ばすと、信頼を大きく損ないやすく、以後、一次代理店がメーカーに案件情報を上げにくくなることがあります。
上の権限表を契約書に添付しておくと、あとで「言った言わない」になりません。
案件の重複をどう捌くか:ディールレジストレーションを多層に広げる
ディールレジストレーションは、パートナー企業が発掘した見込み案件をメーカーに登録し、メーカーがその案件に対して優先権や特別マージンなどのインセンティブを付与して保護する制度です。

流れは4段階です。①パートナーがPRM(パートナーポータル)を通じて発掘した案件情報を登録します。②メーカー側が内容を確認し、重複がないか等をチェックして承認します。③承認された期間中は、その案件が当該パートナーの排他的な案件として保護されます。④受注に至った場合、案件発掘の対価として高い報酬が支払われます。
多層に広げるときの論点は3つあります。
- 登録の名義は二次代理店か一次代理店か
- 保護期間の起算日をいつにするか
- 保護が切れたあと、他の層が同じ顧客に営業をかけていいか
実務の落とし穴は、二次代理店Aと別系統の一次代理店Bが同じ顧客に同時に当たったときです。「先に本部に登録した方が正しい」というルールだけで済ませると、登録の仕方に慣れている大きな代理店ばかりが有利になり、二次代理店は「結局、声の大きいところが勝つ」と感じやすくなります。S2の制度で保護されるのは、メーカー側が内容を確認し重複がないか等をチェックしたうえで承認した案件です。『登録しただけ』ではなく『承認された』案件が保護されるという前提のもと、重複時にどちらを優先するか、登録日時をどう扱うかという承認基準を、契約の時点で文書化して全員に明示しておく必要があります。登録に不慣れな二次代理店が不利にならないよう、一次代理店やメーカーが登録を代行・支援できる窓口を用意しておくと、不公平感を減らせます。
登録の入口は一本化してください。層ごとに別のスプレッドシートで管理すると、重複チェックがそもそも機能しません。
価格とマージンの設計:層が増えるほど末端が薄くなる問題
二次代理店のマージンは、一次代理店のマージンが入るぶん低くなる場合があります。この事実は隠さず、契約前に開示してください。

仕切り価格は層ごとに閉じます。多段構造では層に応じて価格の見え方を分けて管理する必要があります。一次代理店の仕切りが二次代理店に見えてしまうと、二次代理店は「中抜きされている」と感じやすくなります。
代わりに二次代理店へ開示するのは、二次代理店自身の仕切りと、二次代理店が受け取る報酬の計算式です。金額そのものではなく「どう決まるか」を見せます。計算式が公開されていれば、二次代理店は自分の頑張りが報酬にどうつながるかを自分で確認できます。
NG例は、期中に一次代理店がマージン率を一方的に下げ、すでに動いている案件にも遡って適用するケースです。「来月から契約条件を変えます」という通知だけで押し切るやり方は要注意です。二次代理店にとって取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、著しく不利益な要請でも受け入れざるを得ないような関係のもとで行われた場合、優越的地位の濫用として問題になり得ます。個別の判断は専門家に相談してください。
案件発掘の対価として高い報酬を払うという考え方は、多層構造でも変わりません。誰が発掘したかで配分を変える設計にします。
一次代理店に何をやらせるか:中間層が「ただの通過点」になると崩れる
一次代理店の役割は、商材を仕入れて右から左に流すことではありません。二次代理店に対する商材提供、営業支援、販売ノウハウ、研修の提供が本体です。
一次代理店が機能しているかどうかは、二次代理店が困ったときに最初に連絡する先が一次代理店かメーカーかで判定できます。「トラブったときはいつも本部のサポート窓口に直接電話している」という声が二次代理店から出てきたら、一次代理店はすでに通過点になっています。
メーカー側の打ち手は、一次代理店に「二次代理店の育成実績」で報いることです。対応するツールを整えれば、売上やパートナーごとの案件化率、学習状況をダッシュボードでリアルタイムに把握できるため、育成の成果は数字で確認しやすくなります。育成した二次代理店の数字が伸びていれば、一次代理店への評価に反映します。
落とし穴は、一次代理店に販売ノルマだけを課して研修コンテンツを渡さないケースです。一次代理店が自前で教材を作れない場合、結局メーカーが二次代理店に直接教えることになり、層を分けた意味がなくなります。中間層を機能させたいなら、メーカーは一次代理店に「教える力」を先に渡す必要があります。
優越的地位の濫用に触れない付き合い方(多層ほどリスクが上がる)
独占禁止法の考え方では、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為が問題になります。
判断は大きく2つの軸で見ます。ひとつは、自社の取引上の地位が相手方に優越しているかどうか。もうひとつは、その優越的地位を利用した要請が、正常な商慣習に照らして不当かどうかです。相手にとって取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、著しく不利益な要請等を行っても、相手がこれを受け入れざるを得ないような場合は、優越性の要件を満たしやすくなります。
多層構造でリスクが上がりやすい理由は、商材の仕入れ先が一次代理店に限られている場合、二次代理店の取引依存度が高くなりやすいためです。一次代理店に断られると売るものがなくなるため、依存度がメーカーと直接取引する一次代理店より高くなるケースがあります(実際の依存度は取引先の数や契約形態など個別事情によって変わります)。
具体的に気をつける場面は次のとおりです。
- 期中のマージン変更
- 在庫の押し込み
- 販促費の負担要請
- イベント参加の強制
- 退店時の条件
いずれも「書面で事前合意しているか」「断った場合に不利益がないか」の2つの質問で自己点検できます。どちらか一方でも「いいえ」なら、その運用は見直しが必要です。個別の判断は事案ごとに変わるため、契約内容や運用は弁護士など専門家に相談してください。
ツールで何を管理するか:多層対応の要件チェックリスト
PRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)は、代理店・販売店・紹介パートナーなど、パートナー企業との関係を管理し、パートナー経由の売上を最大化するための考え方と仕組みです。CRMが自社の直販営業チームの顧客情報を一元管理し、営業活動を効率化するためのツールであるのに対し、PRMはパートナー企業の営業活動を支援するためのツールで、自社のベンダーチームがパートナー企業のスタッフと双方向で情報を共有します。基本的な機能や選び方はPRMツールの選び方でまとめています。PRM・代理店管理ツール全体を体系的に知りたい方はPRM・代理店管理ツール 完全ガイドもあわせてご覧ください。
多層構造で必須の要件は次の5つです。
| 要件 | 満たさないとどうなるか |
|---|---|
| 階層(親子関係)を持てる | 一次・二次の紐づけが管理できず手作業になる |
| 層別の権限設定ができる | 価格や実績が層をまたいで見えてしまう |
| 層別の価格表示ができる | 「中抜きされている」という不信感を生む |
| 案件登録と重複チェックができる | 同じ顧客に複数の代理店が営業をかけて衝突する |
| 層をまたいだ実績集計ができる | 一次代理店の育成実績が数字で見えない |
対応するツールを整えれば、売上やパートナーごとの案件化率、学習状況をダッシュボードでリアルタイムに把握できます。多層構造では、一次代理店には配下の二次代理店の分だけ、メーカーには全層が見える状態を目指します。
導入の順番は、まず紙とスプレッドシートで層別の権限表を書き切ることです。書けないままツールを入れても、設定でつまずくだけです。
最後に、多層PRM権限設計シートを作ってください。一次代理店・二次代理店・メーカーの3行に対して、「閲覧できる実績の範囲」「見える価格」「案件登録の名義」「承認する人」「研修を出す側/受ける側」の5列を埋めます。このシートを埋め切ってから、上の5項目のチェックリストでツールを判定してください。
よくある質問
一次代理店と二次代理店の違いは何ですか?
契約の相手の違いです。一次代理店はメーカー・サービス提供会社と直接契約するケースが多く、メーカーをピラミッドの頂点と考えた場合その直下にくる層とされます。二次代理店は一次代理店と契約するケースが多く、商材提供や営業支援、販売ノウハウ、研修を一次代理店から受けます。本記事では、この傾向を踏まえて契約の相手で層を線引きすることを推奨しています。
二次代理店のマージンは一次代理店より低くなりますか?
低くなる場合があります。一次代理店のマージンが間に入るためです。ただし二次代理店は一次代理店から商材提供や営業支援、販売ノウハウ、研修の提供を受けられるので、その支援に見合っているかで判断します。
多層構造でPRMツールを使うとき、何を層ごとに分けるべきですか?
権限・価格・実績の見え方の3つです。加えて案件登録の名義と承認者を決めます。層をまたいで価格が見える設計は値引き合戦の原因になります。
二次代理店が登録した案件は誰が承認しますか?
設計次第ですが、入口は一本化します。ディールレジストレーションではメーカー側が重複がないか等を確認して承認し、承認期間中はそのパートナーの排他的な案件として保護されます。多層構造では一次代理店を経由させるか、メーカーが直接承認するかを契約で事前に決め、重複時の優先ルールも文書化しておきます。
一次代理店が二次代理店に不利な条件を出すのは問題になりますか?
なり得ます。取引上の地位が優越していることを利用し、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為は独占禁止法上問題になります。商材の仕入れ先が一次代理店に限られている場合、二次代理店の取引依存度は高くなりやすい傾向があります。期中のマージン変更や費用負担の要請は書面での事前合意が前提です。個別の判断は専門家に相談してください。
参照した情報源
- 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会)・確認日 2026-08-06
- ディールレジストレーション(DR申請)とは?特価の仕組み(株式会社Hiway)・確認日 2026-08-06
- 一次代理店・二次代理店とは?違いと選び方を分かりやすく解説(株式会社Hits company)・確認日 2026-08-06
- PRM(パートナー管理)システム開発の外注の進め方(株式会社LASSIC)・確認日 2026-08-06
- 一次代理店の業務内容とは?二次代理店、三次代理店の役割は?(株式会社Sidebizz)・確認日 2026-08-06
- PRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)とは?CRMとの違いからELG戦略・成功事例まで専門家が解説(partner-prop.com)・確認日 2026-08-06
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