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このシリーズの全体像 対面営業のコツ完全ガイド — 会って、信頼で売る技術の全体像
打ち合わせで一通り話を聞いたつもりでも、返ってくるのは建前だけ。もう一歩踏み込みたいのに、次に何を聞けばいいか分からず終わる——という経験がある人に向けて書きます。商談全体でいつ・何を聞くかという時間配分の設計は、SPIN話法のような型が扱うテーマです。この記事が渡すのは、その中で一度建前が返ってきたあと、もう一段踏み込んで本音に届かせる5つの質問と、その並べ方です。
本音を言ってもらえないのは、信用されていないからではない
打ち合わせで「何かお困りごとはありますか」と聞いて、「特にないですね」で終わったことはないでしょうか。帰り道で「自分は懐に入るのが下手だ」と結論づけてしまう。
でも、嫌われたから建前で返されたわけではありません。相手が本音を出す準備ができていない段階で、本音でしか答えられない質問を出しているから、答えが止まっているだけです。
本音は、引き出す技術で出てくるものではありません。出しても損しない場所ができた順に、少しずつ出てくるものです。対人信頼感が高いほど本音で話す傾向があるとされています。初対面でいきなり信頼を作ることはできないので、初対面でいきなり本音を求める質問をしても出てこないのは当然です。
だからやることは「深く聞く」ではありません。「答えやすい順に並べ替える」ことです。ここから先は、その順番の話だけをします。
NG例を1つ挙げます。初対面の1問目に「御社の課題は何でしょうか」と聞くこと。相手はまだ、課題を他人に見せていい相手だと判断していません。だから「特にないです」で返ってきます。それは相手の性格の問題でも、あなたが嫌われた結果でもなく、質問の順番が早すぎただけです。
最初の打ち合わせで説明を始めた時点で、本音は閉じる
最初の打ち合わせは、自分たちのことをアピールしがちです。でも優先すべきは、相手のことを聞くことです。相手先のビジョンや戦略、顧客ターゲットをきちんと理解していないと、提案の方向性は大きくずれてしまいます。

自分が「説明から入る型」かどうかは、打ち合わせ後にメモを見ればわかります。相手が話した行数と、自分が話した行数を比べてください。自分の行数のほうが多ければ、その打ち合わせでは説明から入っています。
配分の目安を1つ持っておくと迷いません。60分の面談なら、こちらの説明は最後の15分に置きます。前半45分は相手の話を聞く時間です。説明を減らすのではなく、後ろにずらすだけで十分です。実際に時計を見ながら「まだ30分」「あと15分」と区切ると、自分から話し始めるタイミングを我慢しやすくなります。
45分は、ただ黙って相槌を打つだけの時間ではありません。相手の話の中に出てきた固有名詞や数字を拾って、そこだけ聞き返します。「先ほどの◯◯というのは」と拾うだけで、相手は「ちゃんと聞かれている」と感じ、話す量が増えていきます。相槌だけで45分をやり過ごそうとすると、相手はどこかで「本当に聞いているのか」と疑い始めます。
相手が気づいていない潜在的なニーズを見つけ、その解決策を提案するのが提案型営業の基本です。気づいていないニーズは、こちらが説明している途中には出てきません。相手が自分の状況を話している最中に、ふと出てくるものです。この「説明を後回しにする」考え方は、対面営業の極意全体に共通する土台でもあります。
「何かお困りごとは?」が空振りする理由と、置き換える一問
オープンクエスチョンは、回答者の回答範囲に制限を持たせず、自由に答えてもらうために行う質問です。でも本音を言ってくれなかったり、適当にしか答えてくれなかったりというケースが少なからずあります。「何かお困りごとはありますか」が空振りするのは、この形だからです。

かといってクローズドクエスチョンに寄せすぎるのも良くありません。Yes/Noを求める質問を続けると、相手に『尋問されているような感じ』といったネガティブな印象を与えかねません。
置き換え方はこうです。
- ×「何かお困りごとはありますか」
- ○「1点確認させていただきたいのですが、今回のご依頼は、以前から気になっていた課題があってのご相談でしょうか」(確認法)
確認法が効くのは、答える範囲を1点に絞ることで、相手の「考えて答える負担」を消しているからです。「何でも聞いていいですよ」と幅を広げるより、「ここだけ教えてください」と絞るほうが、実は答えやすくなります。
NG例はオープンクエスチョンを3連続で出すことです。相手は毎回ゼロから考えることになり、3問目あたりで「特にないです」に逃げます。オープンは、相手が話し始めたあとの2問目以降に使うものです。
本音に届く5つの質問を、出す順番で並べる
本音に届く質問の型は5つあります。確認法・鎌かけ法・択一法・深堀法・小さな同意獲得法です。この5つはバラバラに覚えると現場で使えません。答える負担が軽い順に並べて、1つの流れとして持っておきます。

- 確認法「1点確認させていただきたいのですが、今回のご依頼は、以前から気になっていた課題があってのご相談でしょうか」——答える範囲が狭く、最初の一問に向きます。
- 鎌かけ法「同じくらいの規模の会社さんだと外注から内製に切り替える流れも出てきていますが、御社ではそのあたりどうお考えですか」——他社の話にすることで、否定しても相手が傷つかない形になっています。
- 択一法「今回は見た目重視で進めるか、それとも将来のメンテナンスのしやすさを優先するか」——2択にすると、選んだ理由が本音として出てきます。
- 深堀法「その背景というのは」——出てきた事実の理由を、1段だけ下げて聞きます。
- 小さな同意獲得法「似たような依頼を担当した事例が他にもあるので、次回お持ちしましょうか」——次に会う口実が、ここで作られます。
実際の流れはこうなります。確認法で気になっている課題の有無を聞き、相手が「まあ、多少は」と答えたら、鎌かけ法で近い規模の会社の動きを持ち出します。相手が前のめりになったところで択一法の2択を出し、選んだ理由を深堀法で聞く。最後に小さな同意獲得法で次回の約束を取る。この一連の流れは、1回の打ち合わせの中で数分あれば足ります。
この順番の意味は、答える負担を階段状に上げていくことです。いきなり深堀法から入ると、相手はまだ何も話していないのに理由を聞かれることになり、答えられません。確認法で小さく答えてもらってから、鎌かけ法・択一法で話す範囲を広げ、深堀法で理由まで届き、最後に次回の約束を取る。この順番を崩さないことが、5つの技法を「使える形」にします。
引き出す技術より、引き出したあとの返し方で決まる
積極的傾聴は、聴き手が話し手に必要に応じて質問したり、言葉を添えたりして話し手の本心や思考を引き出し、話し手をより深く理解するための手法です。実践法は4つあります。言語以外の表現の観察(目線・表情・声・しぐさ)、言葉の反復(おうむ返し)、要約・言い換え、話の続きを促す(「それから?」などの言葉で深掘りする)です。
おうむ返しの使いどころは、相手が言いよどんだ直後です。「人手が足りない、ですか」と最後の3語を返すだけで、相手はそこから続きを話し始めます。無理に質問を重ねる必要はありません。
要約・言い換えは、面談の中盤で1回入れます。「つまり、いま困っているのは◯◯より△△のほうだと」——ここでズレていれば、相手が訂正してくれます。訂正のやりとりそのものが、相手にとって「ちゃんと聞いてもらえている」という感覚になります。
一番外してはいけないのがここです。本音が出た瞬間に「それでしたらうちの商品が」と提案に入らないでください。1回目の本音が出た直後に提案に切り替えると、相手は自分の言葉を売り込みの材料にされたと受け取ります。そうなると、2回目の本音は出てこなくなります。本音が出たら、まず受け止める。提案はそのあとです。
打ち合わせ前に埋める『聞く順番シート』
打ち合わせに向かう前に、1枚のシートを埋めておきます。5行だけです。

- 確認する1点
- 他社の動きで置く話題
- 2択にする軸
- 深堀りする言葉の候補
- 次回の口実にする資料
たとえば独立して間もないデザイナーが依頼の相談を受けるなら、1行目は「以前から気になっていた課題があるかどうか」、2行目は「同じ規模の会社で外注から内製に切り替える動き」、3行目は「全体を作り直すか、今のデザインを活かして部分的に直すか」、4行目は「その判断をした理由」、5行目は「似たような依頼を担当した事例」。この5行が埋まっていれば、打ち合わせの骨組みはできています。
ここで埋めるのは、質問の文面そのものではなく「何を確認しに行くか」です。文面まで暗記すると、その場で読み上げるだけになり、相手の話に乗れなくなります。骨組みだけ持っていって、言葉はその場で選びます。
相手のビジョンや戦略、顧客ターゲットは、事前に調べられる範囲は調べておき、その場では確認だけにします。調べればわかることをその場で聞くと、下調べをしていないことが相手に伝わってしまいます。
面談が終わったら、相手が言った言葉をそのまま1つ、1行メモに書き残してください。次回会うときの1問目は、その言葉から作ります。「前回おっしゃっていた◯◯の件ですが」と切り出せば、相手は前回の続きだと分かり、話し始めやすくなります。
このシートを持っていれば、話がうまい必要はなくなります。聞く順番だけ持っていけば十分です。
本音が出ない相手に、無理に踏み込まないほうがいい場面
世の中に対する信頼が低いと、自分の本心を取り繕ってしまい、建て前ばかり話してしまうことがあるとされています。目の前の相手が本音を出さないとき、それを相手の性格の問題にして終わらせないでください。信頼の作り方が足りていないだけかもしれません。
1回目の打ち合わせで本音が出なくても、失敗ではありません。2回目・3回目で出てくる前提で、初回は確認法だけで終えてかまいません。
踏み込みすぎているサインもあります。相手の返答が短くなる、視線が資料に落ちる、「検討します」が早めに出る——こうした変化は、言語以外の表現を観察する項目と同じものです。このサインが出たら、それ以上は深堀りしません。
引き際の一言はこうです。「今日いただいた話で十分です。次回、◯◯の事例をお持ちします」。小さな同意獲得法の形で、次につなげてから切り上げます。
今日やることは1つだけです。次の打ち合わせの1問目を、確認法の形で1行だけ書いてから行ってください。
よくある質問
顧客が「特に困っていません」としか言わないときはどうすればいいですか
オープンな質問をやめて、確認法で範囲を1点に絞ります。「1点だけ確認させてください、いまの◯◯のやり方で手間がかかっているところはありますか」のように、考える負担を減らすと答えが返りやすくなります
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンはどちらが本音を引き出せますか
どちらか一方ではなく順番の問題です。オープンは自由に答えられる反面、本音を言わず適当に答えられることがあり、クローズドは尋問された印象を与えかねません。負担の軽いクローズド寄りの確認から入り、出てきた言葉を深堀りします
初回訪問で本音まで聞き出せませんでした。失敗ですか
失敗ではありません。本音は対人信頼感が高いほど出てくるもので、初回は確認法だけで終えて、次に会う口実(他社事例の持参など)を作れば十分です
深掘りの質問はどこまでしていいですか
出てきた事実に対して「その背景というのは」と1段下げるところまでです。相手の返答が短くなる、視線が資料に落ちるなどのサインが出たら止めます
本音が出た瞬間に提案してもいいですか
すぐには切り替えません。1回目の本音で提案に入ると、相手は売り込みの材料にされたと受け取り、2回目の本音が出なくなります。まず要約・言い換えで受け止めます
参照した情報源
- 営業スキル向上のポイント|起業マニュアル(独立行政法人中小企業基盤整備機構(J-Net21))・確認日 2026-09-05
- 積極的傾聴法(アクティブリスニング)(一般社団法人日本経営心理士協会)・確認日 2026-09-05
- 本音と建前の意味とは?使い分けを解説(ダイレクトコミュニケーション株式会社(公認心理師 川島達史ほか監修))・確認日 2026-09-05
- 営業が顧客から本音を引き出す・真意をつかむ5つの質問テクニック(株式会社サプリ)・確認日 2026-09-05
- オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンのメリット・デメリット・具体例を解説(Hammock Corporation(ハンモック株式会社))・確認日 2026-09-05
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