対面営業・商談
一人親方の営業の仕方|元請けから直接、仕事をもらうまで
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
仕事が減ったのは腕のせいではない。思い出してもらう機会がゼロなだけ
現場で顔を合わせるのは、いつも一緒に入っている職長や他の職人です。元請けの担当者と話すのは朝の挨拶と帰り際のひと言くらいで、一日のうち数分もありません。
前の現場が終わってから声がかからなくなると、「営業が下手だから」「腕が落ちたから」だと思う人が多いです。実際に起きているのは、前の元請けが次の現場の人手を考えるタイミングと、こちらが顔を出すタイミングがずれているだけです。
紹介待ち型かもしれません。いい仕事をすれば次も声がかかると思っていて、思い出してもらうための働きかけを自分からしていない型です。仕事が減ったのではなく、思い出してもらえなくなった、というのが実際のところだと思います。腕が落ちたわけではありません。
一人親方の営業は、「新しい元請けを探す」より先に、「一度でも一緒にやった元請けのリストに残る」ほうが先です。数を増やす話ではなく、順番の話です。
ここで一番やってはいけないのが、元請けに電話して「何か仕事ありませんか」と聞くことです。相手は手持ちの案件を思い出す作業をその場で丸投げされるので、電話口で考えるより「今のところ無いですね」とその場で断るほうが楽になります。
この記事で渡す方法は1つだけです。現場が終わったあと30日以内に、仕事を頼まずに近況だけを届ける。これだけです。次の見出しから、なぜこの順番で動くと声がかかるのか、そのまま使える文面まで見ていきます。
元請けの担当者が一人親方に声をかける順番
監督や現場担当は、「腕のいい人」を探しているわけではありません。探しているのは「今週の月曜から入れて、電話が通じて、揉めない人」です。腕の良し悪しは、実際に現場に入ってから確かめるものであって、声をかける段階の判断材料にはなりにくいのです。

声がかかる順番には実態があります。①先週も使った人 ②連絡先がすぐ出てくる人 ③誰かが名前を出した人 ④名刺の束から探す人。この順で埋まっていき、ほとんどの案件は①と②で終わります。③まで進む時点で、すでに手薄な状況です。
つまり勝負は現場に入る前ではなく、「連絡先がすぐ出てくる人」に残れるかどうかで決まっています。ここは腕ではなく、日頃の手数で決まる部分です。
監督が一人親方に対して抱えている不安は、だいたい3つに絞られます。当日に来ない、追加が出たときに連絡がつかない、他の職人と揉める。営業で伝えるべきなのはこの3つが起きないことであって、技術力の説明ではありません。
NG例を挙げます。施工実績の写真を大量に送るのは、あまり意味がありません。監督が知りたいのは「今、空いているかどうか」だけだからです。腕の証明よりも先に、都合の証明を求められています。
持ち帰れる形にすると、名刺やLINEを渡すときに「空きが出たら連絡します」と自分から次の連絡を予告しておくことです。渡しっぱなしにすると「あとは相手の番」で止まってしまいます。予告しておけば、連絡する権利は自分の側に残ります。
一度でも一緒にやった元請けに、頼まずに連絡する型
ゼロから新しい相手を探す前に、まずやることがあります。「一度でも現場に入った元請け」と「以前の勤務先の取引先」を、思い出せる範囲で全部書き出すことです。名刺の箱、過去の請求書、電話の履歴。どこから拾ってもかまいません。

頼まない連絡の中身は3点だけです。①いつどの現場でお世話になったか ②その後どんな仕事をしているか ③いつから空くか。「仕事をください」とは書きません。書いた瞬間に、相手は断るか受けるかを迫られる立場になってしまいます。
そのまま使える文面例です。LINEやショートメールを想定した4〜5行です。
「◯◯ハウスの内装でお世話になった◯◯です。あれから同じ規模の改修を続けています。10月の後半から手が空きます。人が足りない週があれば声をかけてください」
送るタイミングは決めておきます。現場が終わって30日以内に1回、その後は空きが出る2〜3週間前に1回。月に何十件も送るような話ではありません。一度でも一緒にやった相手の数だけ、年に数回のやり取りがあれば十分です。
NG例は、年賀状だけ、暑中見舞いだけで済ませることです。季節の挨拶は思い出してもらう役には立ちますが、「いつ空くか」が入っていないので発注にはつながりません。挨拶と営業は別物だと分けて考えたほうがいいです。
一人親方が使える強みは、空き情報を先に出せることです。会社組織は人員の空きを対外的に言いにくい立場にありますが、一人親方は「いつから空きます」とそのまま言えます。ここは規模の小ささが有利に働く数少ない場面です。
下請けからの脱出:孫請けのままか、元請けと直接やるか
今の取引の階層を、一度紙に書いてみてください。施主→元請け→一次下請け→自分、なのか、施主→元請け→自分、なのか。ここを即答できない人は意外と多いです。

一次と二次では、単価の交渉相手も、支払いサイトも、追加工事の言い出し先も変わります。直接契約を狙うなら、まず誰と話すことになるのかを整理しておく必要があります。
直接受けるとついてくる仕事もあります。見積、材料の手配、追加分の記録、請求。これまで元請けや一次業者が担っていた事務が、自分の側に増えます。この分を工数として自分の単価に載せているかどうかを、一度確認しておいたほうがいいです。
ここで制度の話が関わってきます。建設工事の完成を請け負うことを営業するには、公共工事か民間工事かを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。ただし、軽微な建設工事のみを請け負って営業する場合には、必ずしも許可を受けなくてもよいとされています。
軽微な建設工事の基準は、建築一式工事であれば工事1件の請負代金が一定額未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事です。それ以外の建設工事は、工事1件の請負代金が500万円未満とされています。直接受注を増やしていくと、この線に近づく場面が出てきます。
判断としては、まず「今の受注が500万円の線にいつ届きそうか」を自分の側で見ておくことです。許可の要否や個別の案件がどちらに当たるかの判断は、行政書士など専門家に相談してください。
金額を言えないまま受けている一人親方の見積の出し方
「言い値で受ける」状態が続く理由は、金額を出す前に日数と中身を分けていないからです。総額だけを出すと、相手が反応できる場所は値引き交渉しかなくなります。

持ち帰れる形はこうです。見積を3行に分けます。人工×日数/材料・運搬/諸経費。総額1本では出しません。分けた瞬間、値引きの相談は「どの行を削るか」という話に変わります。
追加工事が出たときの言い方の例です。「その分は当初の見積に入っていないので、◯日分足させてください」。その場で口頭でも伝え、あとでメールかLINEで1行残しておきます。言った/言わないの食い違いを防ぐためです。
NG例は、「気持ち程度でいいので」「そこはサービスで」と自分から言ってしまうことです。一度サービスにすると、次の現場でも同じ扱いを求められやすくなります。最初の1回が基準になってしまいます。
値引きを求められたときは、金額そのものを下げるのではなく、中身を減らして返します。「その金額なら◯◯は別日で」というように、条件を動かす形にします。値段を下げる相談ではなく、範囲を決め直す相談にするということです。
支払い条件は着工前に確認しておきます。締日、支払日、現金か手形か。これを聞くのは失礼なことではありません。直接取引をする側に立ったら、当たり前に確認する項目です。
新しい元請けと知り合うための場所と、その場でやること
一番の接点は、今入っている現場そのものです。同じ現場に入っている他業種の職人、監督、資材屋の営業。ここを名刺交換だけで終わらせないことが最初の一歩です。
建材店やホームセンターのプロカウンター、産廃業者やリース業者、設計事務所。工事の情報が最初に集まりやすい場所は、実はこのあたりです。現場以外で顔を覚えてもらう場所として意識しておく価値があります。
組合や青年部、地域の集まりは「仕事をもらう場」ではなく「名前を覚えてもらう場」だと割り切ったほうがいいです。行くなら同じ会に3回以上出るようにします。1回だけの参加では、次に会ったときに思い出してもらえません。
その場でやることはシンプルです。相手の今の現場を聞きます。どこで、何棟、いつまで。自分の話は、空いている時期を1行伝える程度にとどめます。聞く時間のほうを長く取ります。
名刺止まり型にしないための一手があります。別れ際に「来週その現場の近くを通るので、寄ってもいいですか」と、次に会う口実をその場で作っておくことです。次の接点を相手任せにしないという意味です。
NG例は、交換した名刺をそのまま箱にしまうことです。その日のうちに、会った現場名と相手が困っていたことを名刺の裏に書いておきます。次に連絡するときの材料になります。
一人親方の営業は月に何時間か:段取りに組み込む
営業がいつもあとまわしになるのは、意志が弱いからではありません。現場が終わる時間が読めないので、あらかじめ予定に組み込みにくいからです。
組み込み方の例です。雨で流れた日、現場が予定より早く終わった日を、あらかじめ「営業の日」と決めておきます。決めていないと、空いた時間はそのまま休みになります。
月の目安は、既存の元請けへの連絡3件、新規の接点1件、見積のフォロー1件。合計しても月に2〜3時間程度です。特別に営業の時間を確保しなくても、この量なら段取りに乗せられます。
記録の残し方は、ノート1冊かスマホのメモで十分です。「相手/現場名/最後に連絡した日/次にいつ連絡するか」の4項目だけ書いておきます。専用のCRMは要りません。
毎回いちから考えないための工夫として、一度書いた連絡文面をメモに保存しておき、現場名と時期だけを差し替えて使い回します。文面を毎回ゼロから考えると、それだけで後回しの理由になります。
止まったときに見るべき場所は決まっています。「次にいつ連絡するか」が空欄になっている行です。そこが、次の仕事につながる糸が切れかけている取引先です。
一人親方に限らず、手に職はあっても営業だけを教わらないまま独立した人には、共通する型があります。工程ごとの詰まり方を整理した独立した人の営業の型もあわせて読んでみてください。
よくある質問
一人親方でも建設業許可は必要ですか
建設工事の完成を請け負う営業には建設業法第3条に基づく許可が必要だが、軽微な建設工事のみを請け負う場合は不要とされている。軽微な建設工事とは、建築一式工事なら請負代金1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事、それ以外は請負代金500万円未満の工事。個別の該当判断は行政書士など専門家に相談を。
一人親方が元請けから直接仕事をもらうにはどうすればいいですか
新規開拓より先に、一度でも一緒に現場に入った元請けへ連絡を戻す。頼まずに「いつどの現場でお世話になったか/今どんな仕事をしているか/いつから空くか」の3点だけを伝える。空き時期を先に出せるのは一人親方の強み。
一人親方の営業は電話と訪問どちらがいいですか
現場監督は日中に電話に出られないことが多いので、まずLINEかショートメールで空き時期を送り、返事があった相手にだけ電話や訪問を重ねる。用件のない『何か仕事ありませんか』の電話は、相手に案件を思い出す作業を丸投げすることになるので断られやすい。
一人親方が単価を上げたいときは何から言えばいいですか
総額1本で出すのをやめて、人工×日数/材料・運搬/諸経費の3行に分ける。値引きを求められたら金額ではなく中身を減らし、「その金額なら◯◯は別日で」と条件を動かす形で返す。追加工事はその場で口頭で伝え、後で1行文字に残す。
営業する時間が取れません。月にどれくらい必要ですか
目安は月2〜3時間。既存の元請けへの連絡3件、新規の接点1件、見積のフォロー1件。雨で流れた日や現場が早く終わった日を営業の日と先に決めておく。決めていないと予備日は休みになる。
参照した情報源
- 建設産業・不動産業:建設業の許可とは(国土交通省)・確認日 2026-09-10
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