対面営業・商談
行政書士が開業後に仕事を取る営業|紹介で依頼が続く人がやっていること
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
行政書士の開業後に依頼が来ないのは、実績がないからではない
結論から言うと、依頼が来ない理由は実績不足ではありません。困った瞬間に、頭の中に思い出されていないだけです。この記事では、思い出される場所に立つための順番を説明します。

開業して数か月、電話が鳴らない
名刺は配った。事務所のホームページも作った。それでも電話は鳴らない。来た依頼は、独立前から知っている人からの1件か2件だけ。次の当てはなく、日中は事務所の椅子に座って、依頼が来るのを待っている。開業してから数か月、そんな時間を過ごしている行政書士は少なくありません。
実績がないから頼まれない、は表面の理由
「実績がないから頼まれない」——そう考えるのは自然です。でも、頼む側の頭の中で何が起きているかを見ると、少し違う景色になります。
人が行政書士に仕事を頼むのは、実績を比較して選ぶときではなく、困った瞬間です。「建設業の許可が要る」「在留資格の手続きが要る」「相続の書類を作らないといけない」——そう気づいた瞬間、頭に誰かの顔が浮かぶかどうかで、依頼が来るか来ないかが決まります。
行政書士の依頼は、この「気づいた瞬間」が予告なくやってきます。だから、実績が多いか少ないかより先に、その瞬間に思い出される場所に立っているかどうかが問われます。実績がないから頼まれないのではありません。開業したことを、頼む場面で思い出してもらえていないだけです。
紹介待ち型かもしれません
いい仕事をすれば紹介は自然に出ると思っていて、思い出してもらうための働きかけをしていない——紹介待ち型かもしれません。仕事が来ないのではなく、まだ思い出される場所に立っていない、という状態です。腕のせいではない、という人が多いです。
「実績がないから」と考えると、答えは「実績を積むまで待つ」しかなくなります。でも実際に足りていないのは実績ではなく、思い出される仕組みです。この記事で渡す方法は1つだけです。「◯◯といえばこの人」を、紹介してくれる相手の頭の中に先に置くこと。これから並べる見出しは、すべてそのための順番です。専門を1つに絞る、隣の職業を押さえる、頼み方を渡す、月1回思い出してもらう、1件目を次につなぐ——この流れです。独立して働く人の営業の全体像は独立した人の営業のやり方にまとめているので、行政書士に限らない話として読みたいときはそちらも参考にしてください。
最初に決めるのは「何の行政書士か」|何でもやりますを捨てる
何でもできます、は誰にも思い出されない
行政書士が扱える業務の幅は広いです。建設業許可、在留資格、相続に関わる書類、会社設立、車庫証明、農地の手続き——挙げていけばきりがありません。
だからこそ、名刺や自己紹介で全部を並べると逆効果になります。
NG例: 名刺に「許認可全般・相続・法人設立・入管」と4つ並べる。これをやると、紹介してくれるかもしれない相手の頭の中では「で、結局何の人だっけ」になります。
OK例: 名刺と自己紹介は「建設業の許可専門」1本。他の相談が来たときは、口頭で「それも受けられます」と伝えれば十分です。
1つに絞る判断基準は3つ
何を専門にするかを決めるときの基準は3つあります。
- 前職や自分の経験とつながる分野か(建設会社に勤めていたなら建設業許可、外国人と一緒に働いていたなら在留資格)
- 周りの知人の職業で、依頼が発生しやすい分野か
- 一度きりでなく、更新や定期の届出が発生する分野か
この3つのうち、2つが重なる分野を選びます。整理するとこうなります。
| 分野 | 自分の経験との重なり | 知人の職業との重なり | 繰り返しの有無 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可 | 建設会社での勤務経験 | 建設会社・工務店の知人が多い | 更新・変更届がある |
| 在留資格 | 外国人スタッフのいる職場での経験 | 人材紹介・日本語学校の知人 | 更新手続きがある |
| 相続関係の書類 | 特になし | 保険・銀行関係の知人が多い | 基本的に一度きり |
相続関係の書類のように「繰り返しの有無」が弱くても、残り2つが重なっていれば選んでかまいません。3つ全部を満たす必要はなく、2つで十分です。
絞るのは入口だけ、断るのではない
「専門を決めると、他の仕事を断ることになるのでは」と不安になる人がいます。でも絞るのは、思い出されるときの入口だけです。受ける仕事の範囲を狭めるわけではありません。
入口が1つはっきりしていると、そこを通って他の相談も自然に来ます。「建設業の許可の人」として覚えられた相手から、「そういえば相続の書類もお願いできますか」と聞かれることは普通に起きます。入口がないと、この会話自体が始まりません。
紹介はどこから来るか|行政書士の依頼が生まれる「隣の職業」を押さえる
依頼は困りごとの隣で生まれる
行政書士に依頼する人は、依頼する直前に、必ず誰かと話しています。
会社を作ろうとしている人は税理士と話しています。建設業の許可が要る人は、元請けの社長や建設会社の担当者と話しています。農地や開発に関わる手続きが要る人は不動産会社と、車庫証明が要る人は自動車販売店と、在留資格の手続きが要る人は外国人を雇う会社の担当者や日本語学校と話しています。保険の担当者や銀行の担当者が絡む場面もあります。
この「困りごとを先に聞く職業」を、この記事では隣の職業と呼びます。
隣の職業リストの作り方(手順4つ)
隣の職業を洗い出す手順は4つです。
- 自分の専門分野を書く
- その手続きが必要になる直前、依頼者は誰と話しているかを書き出す
- その職業名を並べる
- 知り合いにその職業の人がいるか、いなければ誰に紹介してもらえそうかを書く
分野ごとに整理すると、こうなります。
| 専門分野 | 隣の職業 | 出会える場所の例 |
|---|---|---|
| 建設業許可 | 元請けの社長、建設会社の担当者、金融機関の担当者 | 地域の建設業組合、金融機関の紹介 |
| 在留資格 | 外国人を雇う会社の担当者、日本語学校 | 人材関係の勉強会、日本語学校との接点 |
| 会社設立 | 税理士、司法書士、銀行の担当者 | 士業同士の勉強会、創業支援の窓口 |
| 農地・開発関連 | 不動産会社の担当者 | 地域の不動産会社との名刺交換 |
| 車庫証明 | 自動車販売店 | 地域の販売店への挨拶回り |
一般の人より隣の職業に会いに行く理由
一般の人は、同じ手続きを一生に一度しか頼みません。でも隣の職業の人は、仕事の中で同じ場面に繰り返し出会います。税理士なら顧問先のどこかで会社設立の相談が出ますし、建設会社の担当者なら許可の更新や新規の相談が出ます。
1人の税理士とつながれば、その先にいる顧問先の中から、自分の場面が生まれます。一般の人に名刺を100枚配るより、隣の職業の人に5人会うほうが、依頼につながる可能性は高くなります。
NG例: 地域の交流イベントで一般の人に名刺を100枚配る。これは、場面が来ない相手に配っていることになります。
会ったあと何を言うか|「困ったら言ってください」を言わない
困ったら言ってください、で紹介が出ない理由

隣の職業の人と名刺交換したあと、多くの人が言うのはこの一言です。「何かあれば、ぜひお声がけください」
これでは紹介は出ません。相手は「何を、どう紹介すればいいか」が分からないと動けないからです。
NG例: 「何かあればお願いします」「お仕事があれば」。頼まれ方が曖昧なほど、紹介者の頭の中に置き場所ができません。
紹介者に渡す3点セット
紹介してほしいなら、こちらから3つを先に渡します。
- 場面(いつ声をかければいいか)
- 言い方(お客さんに何と言えばいいか)
- 引き受け方(初回相談は無料か有料か、何日以内に返事するか)
たとえばこう伝えます。
「お客さんが『建設業の許可を取りたい』と言ったら、『知り合いの行政書士がいるので聞いてみます』と言って、私に電話をください。初回の相談はその場で受けます。2日以内にお返事します」
場面・言い方・引き受け方の3つがそろうと、相手は迷わず動けます。
会話例1往復
名刺交換のあと、実際に使える文面はこんな形です。
「今日はありがとうございました。もし今後、お客さんから『建設業の許可を取りたい』というお話が出たときは、私に一本お電話いただければ、その日のうちに折り返します。初回のご相談は無料でお受けしています」
売り込みではなく、「あなたのお客さんが困ったときの窓口になります」という置き方です。相手の負担が減る言い方だけを使うのがポイントです。
開業したことを思い出してもらう連絡|月1回、売り込まずに近況を送る
紹介待ち型から抜ける最小行動
隣の職業リストに載せた人に、月1回、売り込みなしで近況を送ります。これだけを続けます。
条件は2つです。依頼のお願いは書かない。相手が返信しなくていい形にする。この2つを守ると、負担なく続けられます。
近況の中身は3つの型から選ぶ
近況の中身は、次の3つの型から選びます。
- 最近やった仕事の種類(守秘に触れない範囲で。「先月は建設業の許可を1件担当しました」)
- 手続きや制度の変わり目(官公庁の案内など一次情報を自分で確認したうえで、概要と「こういう方は早めの確認がおすすめです」の一言)
- 相手の仕事に関わる一言(「建設業関係の許可の相談を、最近よくいただきます」など自分が見ている傾向)
文面例(メールまたはLINEで4〜5行)
件名: 【近況】建設業許可のご相談状況について
本文: 「お世話になっております。最近、建設業の許可に関するご相談を続けていただいています。制度の細かい確認が必要な方は、早めにご相談いただくとスムーズです。またお会いできる機会があれば嬉しいです。※返信は不要です」
最後を「返信不要です」で締めるのがポイントです。NG例は「お仕事のご依頼お待ちしております」で締めること。これをやると相手は身構えてしまいます。
続け方: 期限を自分で決める
月1回をカレンダーに固定し、「最初の紹介が来るまで半年続ける」のように、自分で期限を置きます。これは統計的な目安ではなく、続けるための自分の方針として決めるものです。
途中で「効いていない」と感じることがあっても、紹介は場面が来るまで出ません。出ていないのではなく、まだ場面が来ていないだけです。
依頼が1件来たあとにやること|やって終わりを次の1件に変える
納品時に紹介につなげる順番

依頼が1件終わったとき、次の4つを納品の日にまとめてやります。
- 完了報告
- 相手の困りごとが解決したことを確認する一言
- 「同じことで困っている方がいたら、名前を出してください」と伝える
- 誰から来た案件かを思い出し、紹介者にお礼と結果報告をする
紹介者への結果報告が次の紹介を作る
紹介した人が一番知りたいのは、「ちゃんとやってくれたか」です。報告がないと、紹介者は「どうなったか分からない人」として、二度と紹介しなくなります。
報告の文面例はこうです。
「先日ご紹介いただいた件、無事に許可がおりました。お客様にも喜んでいただけました。ありがとうございました」
NG例: 依頼者にはお礼を言うが、紹介者には何も言わずに終わる。これをやると、紹介の入口が1回で閉じてしまいます。
更新・定期の届出を「次の予定」にする
一度きりで終わらない業務、更新や定期の届出がある業務は、納品時にこう伝えておきます。
「次の届出の時期が近づいたら、こちらからご連絡します」
先に約束を置いておくと、相手は自分から探さなくてよくなります。これも、思い出される場所に立ち続けるための一手です。
開業1年目の営業でよくある失敗と、その手当て
失敗①ホームページと看板で待つ(来たら受ける型)

開業直後は、検索で見つけてもらうまでに時間がかかります。待っている間に貯金が減っていく、というのはよく聞く話です。
手当て: ホームページは「紹介された人が確認しに来る場所」と位置づけ直します。専門分野・顔・引き受け方の3つだけを整え、集客の主役にはしません。
失敗②交流会で名刺を配って終わる
名刺は入口であって、紹介ではありません。隣の職業でない人に配っても、場面は来ません。
手当て: 交流会は「隣の職業を探す場」として使います。見つけたら、翌日のうちに3点セット(場面・言い方・引き受け方)を送ります。
失敗③安く受けて実績を作ろうとする
「開業したばかりなので安くします」——これは一見誠実に見えますが、紹介者の記憶には「安い人」として残ります。あとから金額を戻すのは難しくなります。
手当て: 報酬は自分の基準で決めます。初回相談の扱い(無料か有料か)だけ先に決めておきます。報酬の表示や広告の仕方には所属する行政書士会の規程があるので、そちらを確認してください。
失敗④他の士業の業務に踏み込む
「何でもやります」の延長で、登記や税務など他の士業の独占業務に触れてしまうと、信用を失います。
手当て: 自分の業務範囲を把握し、範囲外は隣の士業に回します。回すこと自体が、紹介の往復になります。個別の判断が必要な場面は、所属する行政書士会や専門家に確認してください。
よくある質問
行政書士は開業後、どうやって仕事を取るのですか?
一般の人に広く知らせるより、依頼が生まれる直前に依頼者と話している職業(税理士・建設会社・不動産会社・自動車販売店など)とつながる方が早いです。専門を1つに絞り、その職業に「こういう場面が来たら名前を出してください」と具体的に頼みます。
行政書士の営業に飛び込みや電話は必要ですか?
必須ではありません。行政書士の依頼は困りごとの隣で生まれるので、隣の職業に会いに行き、月1回近況を送って思い出してもらう方が、知らない相手への飛び込みより続けやすく、自分の性格を変える必要もありません。
開業したばかりで実績がないとき、何を伝えればいいですか?
実績の代わりに「専門分野」「引き受け方(初回相談の扱い・返事の早さ)」「どんな場面で名前を出してほしいか」を伝えます。紹介者が知りたいのは過去の件数ではなく、安心して名前を出せるかどうかです。
ホームページやSNSだけで依頼は来ますか?
開業直後は検索で見つけてもらうまで時間がかかり、待つだけでは間に合わないことが多いです。ホームページは「紹介された人が確認しに来る場所」と位置づけ、専門・顔・引き受け方の3つを整えるだけにして、集客の主役は紹介の仕組みに置きます。
行政書士の紹介はどこからもらうのが多いですか?
統計としての数字は公開されていないため断定はできませんが、実務では税理士・社労士などの他士業、建設会社や不動産会社、自動車販売店、外国人を雇う会社など「手続きが必要になる直前に依頼者と話している職業」から生まれることが多いです。自分の専門分野ごとに、この隣の職業を書き出すところから始めます。
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