対面営業・商談
フリーランスが契約終了を告げられたとき|最後の挨拶メールと、次につなげる伝え方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
契約終了を告げられたら、最後の挨拶メールは「また連絡していい関係」を残すために書く
「来月末で、いったん終わりにさせてください」。長く付き合った取引先からそんな連絡が来て、返信画面を開いたまま手が止まる。そういう場面があります。お礼を書けばいいのか、理由を聞いていいのか、何も言わずに受け入れるのか。決めきれないまま夜になり、頭の中で「切られたってことは、結局わたしの仕事はその程度だったんだ」という声が大きくなっていく。こう考えてしまう人は、少なくないと思います。

この記事は、その場面から書いています。例文集として「礼儀正しく締めるメール」を渡すだけでは足りないと考えているためです。告げられた当日の返信、最終日の挨拶メール、終了後の連絡までを、一続きの流れとして渡します。
切られた理由を、すぐ自分の腕に結びつけなくていい
契約が終わる理由は、腕前だけとは限りません。先方の予算の見直し、社内の体制変更、担当者の異動、自社で抱えることにした、案件そのものが終わった。どれも、仕事の出来とは別のところで起こりえます。理由がはっきりしないうちは、どの事情だったかは外からは分かりません。
理由が分かる前に「自分の腕のせいだ」と結論を出すと、そのあとに書く返信や挨拶メールが、謝罪か言い訳になりやすくなります。まず結論を保留にする。これが最初の手順です。
挨拶メールの役目は、お礼で締めくくることではない
挨拶メールは、お礼を述べて終わる一通ではありません。終了後も連絡してよい関係を残すための一通です。
次のような文面で締めたくなることがあります。
大変お世話になりました。今後のご発展をお祈りしております。
失礼ではありません。ただ、これで終わると、相手には返信する理由がなく、自分にも半年後に連絡する口実が残りません。礼儀として完結してしまい、次につながる手がかりがゼロになります。
告げられてから最終日までの3つの手順
この記事で扱う流れは次のとおりです。
| 順番 | いつ | やること |
|---|---|---|
| ① | 告げられた当日 | 短い受け止めの返信を送る |
| ② | 数日以内 | 引き継ぎの範囲と最終日を確定する |
| ③ | 最終日の前日か当日 | 最後の挨拶メールを送る |
そのあとに、終了後の連絡(1か月後と3か月後)と、次の当てをつくる動きが続きます。
告げられた当日にやること|受け止めの返信と、確かめておく3点
当日中に返す受け止めの返信(例文)
当日は、短く返すだけにします。長く書くほど、感情が文面に混ざります。3文で足ります。
ご連絡ありがとうございます。◯月末での終了、承知しました。 最終日までの進め方について、あらためてご相談させてください。
件名は元のメールへの返信のままで構いません。この返信の役目は、「受け止めた」ことと「最終日まで責任を持ってやる」ことを伝えるだけです。
避けたいのは次の3つです。
- 理由をその場で問い詰める
- 引き止めたくて、値下げや作業量の上乗せをその場で申し出る
- 一晩置いて、気持ちの整理がつかないまま長文を送る
私は、当日の返信と最終日の挨拶メールは別の一通にしたほうがいいと考えています。2通に分けると、当日の動揺した気持ちが挨拶メールに混ざりにくくなります。
確かめておく3点
返信を送ったら、次の3点を相手に確認します。メールでも打ち合わせでも構いません。
- 最終日:契約の満了日と、最後の作業日は分けて確認する(満了日の前に作業が終わることもあります)
- 引き継ぎの範囲と相手:何を、誰に、どの形で渡すか。資料の置き場所、アカウントの扱い、進行中の案件の扱いまで
- 終了後に連絡してよい窓口:担当者の個人アドレスに送ってよいのか、別の窓口があるのか
3つめは見落とされやすい点です。終了後の連絡は、窓口を確かめておかないと、のちほど「どこに送ればいいか分からない」状態になります。確認の言い方は、たとえば次のとおりです。
最終日と引き継ぎの範囲を確認させてください。また、終了後にご連絡する場合は、このアドレスにお送りして問題ないでしょうか。
理由は聞いていい。聞き方を変えるだけ
理由は、聞いて構いません。ただ、責める形ではなく、学ぶ形で聞きます。
今後の参考にしたいので、差し支えない範囲で、今回の終了の背景を教えていただけますか。
答えが返ってきたら、そのまま受け取ります。「予算の都合です」と言われたら、それ以上は掘りません。答えてもらえなかったり、曖昧だったりしても、追いかけないでください。聞いた事実が残れば十分です。理由を深追いすると、最終日までの空気が悪くなり、終了後に連絡する関係まで失いかねません。
法律で決まっていること|予告の期限と、理由を聞く権利
ここで、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の話を整理します。落ち着いて確かめるための材料として、知っておくと役に立ちます。

継続的な業務委託を終えるときは、予告が必要とされている
同法第16条第1項は、発注側(条文では特定業務委託事業者)が継続的業務委託を解除しようとするときについて、「少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない」と定めています。期間満了後に更新しない場合も含まれます。
ただし、災害その他やむを得ない事由により予告が困難な場合などは、例外とされています。
なお、どんな取引が対象になるのかという細かい条件(契約期間の要件など)は、この記事では確認できていないため扱いません。「来月で終わり」と言われて、自分の契約が対象になるかが気になるときは、公式資料で確かめたうえで、専門家に相談してください。
予告から満了までの間なら、理由の開示を求められる
同条第2項は、予告の日から契約満了までの間に、解除の理由の開示を求めた場合について、発注側は「遅滞なくこれを開示しなければならない」と定めています。ここにも、第三者の利益を害するおそれがある場合などの例外があります。
前の章で「差し支えない範囲で教えてください」と聞く方法を書きました。それで答えが返ってこないときに、こういう定めがあることを知っていれば、次に何を確かめればいいかが分かります。
法律は挨拶の書き方までは決めていない
予告や理由の開示は、発注側の義務を定めたものです。挨拶メールの書き方や、どんな順番で何を書くかを定めた公的な決まりは、今回の確認では見つかりませんでした。メールの文面や順番は、実務の知見として書いています。
私は、この権利を相手に突きつける道具としては使わないほうがいいと見ています。権利を盾にして関係を壊すより、確認の手段として手元に持っておくほうが、終了後に連絡できる余地が残るためです。これは私の見解です。
条文はe-Gov法令検索などの公式資料で確かめてください。自分の契約が対象になるか、予告が足りているかといった個別の判断は、弁護士など専門家への相談が必要です。この記事は一般的な考え方の説明で、個別の法的判断ではありません。
最後の挨拶メールの例文|状況別に3つ
基本の形(長く付き合った担当者あて)

順番は次の5つです。
- お礼
- 一緒にやった仕事を1つ具体的に
- 引き継ぎの状況
- 今後の連絡先
- 何で声をかけてほしいかを1行で
2つめが、いちばん大事だと私は考えています。「お世話になりました」だけの文面より、具体的な場面が1つ入っているほうが、読む側は思い出しやすくなります。
件名:【御礼】◯月末の契約終了にあたって(氏名)
◯◯様
お疲れさまです。氏名です。 ◯月末をもちまして、契約終了となりますこと、あらためてご挨拶を申し上げます。
長い間、本当にありがとうございました。 とくに、◯◯のリニューアルで、公開前夜まで一緒に確認していただいたことは、今でも印象に残っています。
引き継ぎにつきましては、◯◯の資料を◯◯に格納済みです。ご不明点が出ましたら、最終日までにお知らせください。
今後のご連絡は、このアドレスでお受けしています。 ◯◯の更新や、◯◯のようなことでお困りの際は、いつでもご連絡ください。
末筆ながら、◯◯様と御社のご活躍をお祈りしております。 氏名
「◯◯のようなことでお困りの際は」の1行が、あとで連絡する入口になります。何でもできますと広げず、自分が得意な1つに絞ってください。
付き合いが短い・急に終わった場合
付き合いが短いと、具体的な思い出が少なくて書けないことがあります。その場合は、短くて構いません。5〜6行で収めます。
件名:【御礼】ご契約終了のご挨拶(氏名)
◯◯様
氏名です。短い期間でしたが、お仕事をご一緒できてありがたかったです。 ご連絡の返信が早く、進めやすかったです。
◯月◯日までの引き継ぎは、ご指定の形で完了しています。 ◯◯に関することでお力になれる場面がありましたら、お声がけください。
ありがとうございました。 氏名
具体的な思い出が少ないときは、やり取りの中で助かったことを1つ書きます(返信が早かった、指示が明確だった、など)。事実を1つだけ書けば足ります。
終わり方に納得がいかなくても、メールには書きません。不満を挨拶メールに混ぜると、以降の連絡の芽がなくなります。
担当者の異動や体制変更で終わる場合
担当者の異動で終わる場合は、担当者本人と後任の両方に送ります。後任はCCに入れ、1通の中で書き分けます。
件名:【御礼・ご挨拶】◯◯の件(氏名)
◯◯様(CC:△△様)
氏名です。
◯◯様 ◯◯の立ち上げから、長くお世話になりました。個人的にも、とても勉強になりました。ありがとうございました。
△△様 はじめまして。氏名と申します。◯◯の引き継ぎ資料は、◯◯に格納しています。進行中の案件の状況は、資料の◯ページにまとめています。
今後、◯◯のことでお困りの際は、お声がけください。
氏名
担当者には個人的なお礼、後任には引き継ぎの場所を伝える、という書き分けです。後任は自分のことを知らない人なので、「何を頼めばいいか」が1行で分かるようにしておきます。
挨拶メールでやりがちなNG|相手が返信に困る書き方
次の表は、よくある書き方と言い換えの例です。

| NG | 言い換え |
|---|---|
| 力不足で申し訳ありませんでした | ◯◯をご一緒できて、ありがたかったです |
| また何かあればぜひ | ◯◯の更新などで手が足りないときは、お声がけください |
| 条件を見直しますので、継続できませんか | 書かない(終わった話を蒸し返すと、返信に困る) |
| 長い反省文 | 3行以内のお礼に絞る |
謝りすぎると、相手は否定の返信をするしかなくなる
謝罪が並ぶメールには、「そんなことはありません」と返すしかありません。これが相手の負担になります。お礼と事実で書けば、相手は「こちらこそ」と返せます。
私の見解ですが、挨拶メールで謝るのは、納期の遅れなど、実際に迷惑をかけた具体的な事実があるときだけで十分だと考えています。
売り込みすぎも、何も残さないのも外れ
料金表や新サービスの案内を付けるのは、避けてください。終わった取引のメールで売り込まれると、相手は受け取りづらくなります。
一方で、連絡先も「何で声をかけてほしいか」も書かないと、相手は思い出す手がかりを持てません。1行だけ残すのがちょうどいいです。
契約終了から3か月の連絡|「一回きり」で終わらせない
いい仕事をしていれば、また声がかかると待っていないか
納めた仕事の出来に自信がある人ほど、終了後は何もせず連絡を待ちがちではないか。私はそう見ています。いい仕事をすれば、また声がかかるはず。そう考えて、こちらからは何も送らない。この記事では、これを「紹介待ち型」と呼びます。いい仕事をすれば紹介は出ると思っていて、思い出してもらう働きかけをしていない状態です。
仕事が減った理由が、腕ではなく、思い出してもらう機会がなくなっただけ、ということもあるはずです。これは私の仮説です。相手は忙しく、毎日いろいろな仕事に追われているので、連絡のない外部の人のことは、記憶から遠くなりやすいと考えています。
抜け出す最小の行動は、終了後に短い連絡を2回だけ入れることです。
1か月後と3か月後に送る一通(例文)
1か月後:引き継ぎ後に困りごとがないかの確認
件名:その後の状況について(氏名)
◯◯様
お疲れさまです。氏名です。 引き継ぎのあと、◯◯の資料まわりで分からない点は出ていませんか。 何かあれば、遠慮なくお知らせください。ご返信は不要です。
氏名
3か月後:近況報告と、相手の役に立ちそうな情報を1つ
件名:近況のご報告(氏名)
◯◯様
ご無沙汰しています。氏名です。 最近、◯◯の案件で△△を試したところ、□□がだいぶ楽になりました。◯◯様のところでも使えそうな場面があれば、お知らせします。 ご返信は不要です。お忙しい時期かと思いますので、ご自愛ください。
氏名
2通とも、返信を求めない書き方にします。「ご返信は不要です」と書いておくと、相手は気軽に読めます。3か月後の通は、自分の宣伝ではなく、相手の役に立ちそうな情報を1つ入れるのがコツです。
連絡をやめたほうがいい場面
次のときは追いません。
- 2回送って返信がない
- 終了のときにもめた
- 相手から、連絡をやめてほしいと言われた
連絡を続けるほど関係が良くなる、とは限りません。相手が負担に感じていそうなら、そこでやめるのが判断の目安です。
次の当てを今日つくる|1社に寄りかからないための小さな一歩
1つの契約が終わったときに見直すこと
1つ、数字を出してみてください。直近の売上のうち、何割をその1社に頼っていたか。自分の数字で出します。他人の目安は要りません。
そのうえで、今の仕事が続く前提で、次の当てをつくる動きが止まっていなかったかを振り返ります。ここで人を責める必要はありません。目の前の仕事が回っているときに営業を後回しにするのは、よくある話だと思います。見直すのは、人ではなく動きです。
今日やれること:過去に仕事をした相手を5人書き出し、1人に近況を送る
紙でもメモでも構いません。過去に仕事をした相手を5人書き出します。その中から1人を選んで、近況だけを送ります。頼みごとはしません。
お久しぶりです。氏名です。 最近は◯◯の仕事をしています。◯◯さんのところは、その後いかがですか。
2行で足ります。仕事の話を切り出さなくていいので、気軽に送れます。
仕事の取り方を順番に整理したい人は、フリーランスの仕事の取り方を、順番に整理した記事もあわせて読んでみてください。
持ち帰り用のチェックリスト
- 告げられた当日に、3文の受け止めの返信を送った
- 最終日、引き継ぎの範囲と相手、終了後の窓口を確かめた
- 挨拶メールに、お礼・具体的な1つの仕事・引き継ぎ・連絡先・声をかけてほしい内容の5つを入れた
- 1か月後と3か月後の連絡を、カレンダーに入れた
- 過去に仕事をした相手を5人書き出し、1人に近況を送った
契約が終わったことと、仕事の価値が決まったことは、別の話です。最後の一通と、そのあとの2通で、また連絡していい関係は残せます。
よくある質問
契約終了の挨拶メールはいつ送ればいいですか?
告げられた当日は短い受け止めの返信だけにし、挨拶メールは最終日の前日か当日に送るのがおすすめです。2通に分けると、感情的な文面になるのを防げます。
契約終了の理由は聞いてもいいですか?
聞いて構いません。フリーランス法第16条第2項で、予告の日から契約満了までの間に開示を求めた場合、発注側は「遅滞なくこれを開示しなければならない」とされています(例外あり)。聞くときは「今後の参考に、差し支えない範囲で」と学ぶ形で聞きます。個別のケースで開示を求められるかは、専門家に相談してください。
「来月で終わりです」と急に言われました。30日前に予告する決まりはないのですか?
継続的な業務委託では「少なくとも三十日前までに」予告が必要とされています。ただし、対象になる取引の条件や例外があります。条文はe-Gov法令検索などの公式資料で確かめ、自分の契約が対象かどうかは専門家に相談してください。
契約が終わった取引先に、あとから連絡しても迷惑になりませんか?
返信を求めない近況報告なら、1か月後と3か月後に1通ずつ送るのが目安です。2回送って返信がなければ、追わないでください。
契約が終わった相手に、紹介を頼んでもいいですか?
円満に終わったのであれば、頼んでも構わないと考えます。最終日のメールに「◯◯でお困りの方がいれば」と1行添えておくと、あとで頼むときの入口になります。
参照した情報源
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 第12条~第20条(第16条 中途解除等の事前予告)(労働法令通信(法令本文の掲載ページ))・確認日 2026-10-11
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