対面営業・商談
フリーランスの自己紹介の例文|実績を並べずに、相手が自分を重ねられる言い方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
実績を並べても伝わらないのは、経歴が弱いからではない
「では自己紹介をお願いします」と言われて、経験年数、担当してきた案件、使えるツールを順番に並べた。相手は「なるほど」とだけ言って、次の話題に移った——という経験はないでしょうか。

この記事では、これを実績並べ型と呼びます。分かってもらおうと実績や情報を足し続けた結果、読む人が自分を重ねる場面がなくなる型です。
実績が足りないから響かないのだと考えて、言うことを増やしたくなる人もいます。ただ、原因は話し方でも実績の量でもなく、自己紹介の中に相手の出番がないことです。
実績を並べてしまうのは、誠実に伝えようとした結果、という人が多いです。ただ、情報が増えるほど、相手が「自分もそうだ」と言える隙間は狭くなっていきます。
私の見立てでは、実績は「自分の話」なので、聞いた相手は評価する側に回ります。評価する側に回ると、自分の困りごとを思い出しにくくなります。
たとえば、こんな自己紹介があります。
フリーランスでWebデザイナーをしています。前職は制作会社に5年、独立して3年です。コーポレートサイト、LP、ECサイトまで幅広く対応でき、FigmaもWordPressも使えます。何かあればお声がけください。
経歴はきちんと伝わります。ただ、聞いた相手が「うちの場合は」と自分の話を始める入口が、どこにもありません。全部が話し手の話で終わっていて、相手の話をする場面がないのです。
クラウドソーシング大手が公開しているプロフィールの書き方ガイドでは、発注者が確認する要素は「依頼を遂行できる能力があるか」と「信頼できる人物かどうか」の2点だとしています。ここから先は私の見立てです。この2点が伝わっていれば、並べる実績は1つか2つでも足りると考えています。
この記事で渡す方法は1つだけです。実績を減らして、相手が「うちもそれだ」と言える一文を1つ入れる。それだけです。完成例文は次の章に3つ置いています。
そのまま使える自己紹介の例文(30秒・60秒・書き言葉プロフィール)
自己紹介は、話す場所によって長さを変えます。立ち話・交流会は、短い自己紹介(エレベーターピッチ)の一般的な目安である30秒程度、面談・商談は1〜2分程度が目安です。30秒であれば150字前後が基準になります。まず、Webデザイナーを例に、3つのパターンをそのまま使える形で置きます。

例文のうち、実績に当たる部分と「よく受ける相談」に当たる部分は、自分の実際の案件に置き換えてください。事実でない成果は書かないでください。
30秒版(交流会・立ち話)
はじめまして、フリーランスでWebデザイナーをしています、◯◯と申します。個人事業主の方から「ホームページは作ったけど、問い合わせにつながらない」という相談をよく受けています。 構成から見直して、問い合わせ導線を作り直す仕事が多いです。もし似た状況の方がいたら、思い出していただけたら嬉しいです。
交流会での15秒スピーチとしてさらに絞り込みたい場合は、交流会での自己紹介の作り方|覚えてもらえる15秒スピーチで作り方を扱っています。この記事は場面別の完成例文を渡すのが役割で、交流会に特化した組み立て方はそちらに譲ります。
60秒版(面談・商談)
面談・商談は、結論(強み)→具体例(実績)→貢献意欲の順で組み立てると伝わりやすいとされています。
フリーランスでWebデザイナーをしています、◯◯と申します。得意なのは、公開したのに問い合わせが来ないサイトを、構成から直すことです。 直近では、◯◯の導線を作り直し、◯◯が増えた例が◯件ありました。今日は皆さんの現場で困っていることも伺いながら、お役に立てる形を一緒に考えられればと思います。
書き言葉プロフィール版(クラウドソーシング・SNS・提案文の冒頭)
Webサイト制作を専門にしているフリーランスデザイナーです。個人事業主・小規模事業者の方から「作ったサイトが問い合わせにつながらない」というご相談をいただくことが多く、構成の見直しから携わっています。直近1年で個人事業主のサイトを◯件担当し、うち◯件で問い合わせ数の増加につながりました。まずはお気軽にご相談ください。
項目ごとの書き方をもっと詳しく詰めたい場合は、フリーランスのプロフィールの書き方で手順を解説しています。この記事はすぐ使える完成例文が中心、あちらは書き方の手順が中心という役割分担です。
太字にした一文が、相手が自分を重ねる場所です。ここだけは実績ではなく、相手側でよく起きている場面を書きます。3つの違いは、話す時間ではなく置き場所です。30秒は交流会・立ち話、60秒は面談・商談、書き言葉は相手が後から読み返せる場所、と覚えると使い分けやすくなります。
骨格は職種が変わっても同じです。中身だけ入れ替えます。
- エンジニア「フリーランスでバックエンドエンジニアをしています。『動くには動くけれど、注文が増えると遅くなる』というシステムの相談をよく受けます。 ボトルネックを特定して、直すところだけ直す仕事が多いです」
- 士業(行政書士)「行政書士をしています。独立してすぐの方から『何から届け出ればいいか分からない』という相談をよく受けます。 必要な手続きだけに絞ってご案内しています」
- カメラマン「フリーランスでカメラマンをしています。採用ページ用の写真がなくて困っている、という会社からの相談が多いです。 撮影から選定まで一日で終わる形にしています」
実績は「量」ではなく「相手が確かめられる形」に変える
実績を並べないといっても、実績をゼロにする話ではありません。実績を出すときも、量を増やす方向ではなく、確かめられる形にする方向で直します。
先ほどのプロフィールの書き方ガイドには、書き換えの例文として、「多くの記事を執筆してきました」を「1年間で200記事を執筆。担当したKWの80%が検索上位10位以内に」に直す例があります。記載例には「月間50万PVのWebメディアにて、美容系記事を20本執筆。担当記事の約7割で、主要キーワード検索1位〜3位を獲得」という書き方も挙がっています。差は盛ったかどうかではなく、相手が確かめられる形になっているかどうかです。
数字が出せない案件もあります。守秘義務がある場合は、期間・件数・範囲・相手の業種のうち、出せるものを1つだけ出します。「◯◯業の30人規模の会社で、採用サイトの構成から公開まで担当しました」のように、業種・規模・担当した工程まで書ければ、数字を出さなくても確かめられる形になります。無理に数字をひねり出したり、あいまいな数字で盛ったりする必要はありません。
並べる本数は1つか2つまでにします。私は、3つ以上並べると記憶に残りにくく、相手が話す時間も削ってしまうと見ています。
| NG | 直し方 |
|---|---|
| 幅広く対応できます | ◯◯業の◯人規模の会社で、◯◯まで担当しました |
| いろいろな案件をやってきました | 直近1年で◯件、うち◯件は◯◯という結果でした |
| 多くのお客様にご満足いただいています | 担当した◯件のうち◯件で、継続のご依頼をいただきました |
自己紹介の骨格:5つの箱に、1つずつ入れるだけ
短い時間で相手の関心を引く話し方に、5つの構成要素を挙げているものがあります。これをフリーランスの自己紹介に置き換えると、次の5つの箱になります。

- ①名乗りと肩書き(元の要素:自分の立場・関わり)/目安20〜30字/経歴の詳細は入れない
- ②相手側でよく起きている場面(元の要素:いま感じている課題や違和感)/目安40〜60字/自分の苦労話は入れない
- ③自分がやっていること(元の要素:その課題への取り組み方)/目安20〜40字/サービスメニュー全部は入れない
- ④相手が得られる状態(元の要素:取り組みの目的・効果)/目安20〜30字/誇張した言い回しは入れない
- ⑤呼びかけの一言(元の要素:今それをやる意味)/目安15〜20字/押し売りに聞こえる文句は入れない
文字数の目安は私が置いたものです。このうち②の箱こそが、相手が自分を重ねる場所です。自分の課題ではなく、相手側でよく起きている場面を入れます。埋めるときは、次の3問に答えてから箱に落とし込みます。
- 直近で相談された内容は何か
- その人はどんな状態で相談してきたか
- 自分は最初に何をしたか
そのまま使える空欄テンプレートです。
①(名乗り):「__で__をしています、__と申します」 ②(相手の場面):「__という相談(状態)をよく受けます」 ③(やっていること):「__から__まで担当しています」 ④(得られる状態):「__という状態になった例があります」 ⑤(一言):「似た状況の方がいたら、思い出していただけたら嬉しいです」
最初に挙げたNG例を、この5つの箱で組み立て直すとこうなります。
フリーランスでWebデザイナーをしています、◯◯です(①)。個人事業主の方から「ホームページは作ったけど問い合わせにつながらない」という相談をよく受けています(②)。 構成から見直して、問い合わせ導線を作り直しています(③)。◯◯が増えた例もあります(④)。似た状況の方がいたら、思い出していただけたら嬉しいです(⑤)。
経歴も使ったツールの名前も消えました。それでも情報量が減ったわけではありません。相手が自分を重ねられる形に、組み替えただけです。
言い切れない人の逃げ道になる4つの言い回し(と、その直し方)
自信が持てないとき、つい使ってしまう言い回しがあります。初対面の相手に「専門は何ですか」と聞かれ、専門を1つに絞ると仕事が減る気がして、つい「幅広くやっています」と答えてしまう場面もその1つです。悪い言い方というより、相手が自分を重ねられなくなる言い方です。
| 逃げ道になる言い回し | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 幅広く対応できます | 誰の何の役に立つのか消える | 一番よく頼まれるものを1つだけ言う |
| 何かあればお声がけください | 相手に判断を丸投げしている | どういうときに声をかければいいか、具体的な場面で言う |
| まだ独立して間もないのですが/大した実績はないのですが | 前置きの謙遜が、そのまま相手の評価になる | 期間の短さではなく、その期間で何をしたかに置き換える |
| 元◯◯会社にいました、で止める | 前職の名前だけでは今の説明にならない | 前職といまやっていることを一続きの文にする |
4つとも、相手が自分を重ねる手前で言葉が止まっています。直すのは話し方ではなく、止まっている場所です。
自己紹介は場所で変える:紹介・交流会・エージェント面談
自己紹介は、対面営業の作法・人脈術の中でも、最初に相手と接する場面です。収入面で効いている獲得経路は、人脈と既存の取引先が上位です。フリーランス協会の「フリーランス白書2025」では、最も稼げる獲得経路は1位が人脈、2位が過去・現在の取引先、3位がエージェントサービスという結果が出ています。1年前の「フリーランス白書2024」でも、最も収入が得られる仕事獲得経路として挙げられた上位3種(過去・現在の取引先・人脈・エージェントサービス)が、回答全体の3/4を占めるという結果が出ています。調査年は異なりますが、どちらも人脈・紹介が上位に挙がる傾向は共通しています。ここから先は筆者の見立てです。自己紹介を聞く相手は、初対面の見込み客よりも、あとで誰かに紹介してくれる人であることが多いと考えています。
相手によって、意識するところが変わります。
- 紹介してくれる人向け:その人が第三者にそのまま説明できる短さで渡します。長い実績の説明ほど、伝言のときに削られます。覚えてもらいやすいのは短い一文なので、渡す形は「◯◯で困ってる人がいたら」の一文です。
- 交流会・立ち話向け:30秒版を使い、名刺の裏や後日の連絡につながる話題を1つ残します。
- エージェント面談向け:職務経歴をただ時系列で話すのではなく、応募案件に直結する強みを要約して伝えます。案件と関係の薄い経歴まで並べると、担当者が強みを拾い直す手間が増えます。
営業ツールとして、ビジネス用メールアドレスと名刺を使っている人は6割、SNSアカウントは5割という調査もあります。話した自己紹介の内容と、名刺やSNSに書いてある文言がずれていないか、あわせて確認しておきます。
言ったあとに何が起きたかで、自己紹介を直す
自己紹介の良し悪しは、自分の手応えではなく相手の反応で測ります。見るのは次の3つです。

- 相手が自分の話を始めたか
- 質問が来たか
- 誰かの名前が出たか(「それなら◯◯さんも同じことで困っていました」のように、次につながる具体名が出るか)
反応がなかったときに直す場所には、優先順位があります。①相手が自分を重ねる一文(②の箱)、②実績の本数を減らす、③名乗りを短くする、の順です。話し方の練習は最後です。
持ち帰り用のチェックリストです。
- 30秒以内か
- 実績は2つ以下か
- 相手側で起きている場面が1つ入っているか
- 専門用語を使っていないか
- 「幅広く」「何かあれば」が入っていないか
- 紹介者がそのまま口に出せる長さか
- 名刺・SNSの文言と揃っているか
今日やることは1つだけです。直近で相談された内容を1つ思い出し、「◯◯で困っている人から相談されることが多いです」の形に直して、自己紹介に足します。それ以外は、今日は変えなくて大丈夫です。
自己紹介のあと、仕事をどう取っていくかの全体像はフリーランスの営業の仕方でまとめています。
よくある質問
フリーランスの自己紹介は何秒くらいが適切ですか?
立ち話や交流会は30秒・150字前後が目安です。面談や商談は1〜2分程度が目安とされています。場所で長さを変えます。
実績が少ない・自信がない場合、自己紹介で何を話せばいいですか?
期間の短さを詫びる前置きをやめ、直近で相談された内容を1つ具体的に言います。「多くの〜」ではなく、件数・期間・業種など確かめられる形にします。
自己紹介で前職の会社名は出したほうがいいですか?
相手の理解を助けるので出してかまいません。ただし会社名だけで止めず、いま何をしているかまで一続きの文にします。
クラウドソーシングのプロフィールと、面談での自己紹介は同じ内容でいいですか?
骨格は同じでかまいませんが、書き言葉は読み返される前提で具体的な数字を、話し言葉は相手が自分を重ねる一文を優先します。プロフィールで発注者が確認する要素は、能力と信頼性の2点だとされています。
自己紹介が上手くいったかどうか、どう判断すればいいですか?
自分の手応えではなく相手の反応で測ります。相手が自分の話を始めたか、質問が来たか、誰かの名前が出たかを見ます。
参照した情報源
- フリーランスの面談に必要な対策は?準備や質問回答のコツ・失敗の原因を解説(and HiPro(パーソルキャリア))・確認日 2026-08-26
- フリーランスのプロフィール書き方|受注を増やす例文・テンプレート付(クラウドワークス(p-journal))・確認日 2026-08-26
- エレベーターピッチとは?30秒で相手を惹きつける5つの構成と営業・社内向け例文(RICOHビジネスクラウド)・確認日 2026-08-26
- 「フリーランス白書2025」を発表〜フリーランスの実態・ホンネが明らかに〜(フリーランス協会)・確認日 2026-08-26
- フリーランスの実態・ホンネが丸わかり〜「フリーランス白書2024」を発表〜(フリーランス協会(PR TIMES))・確認日 2026-08-26
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