対面営業・商談
ファイナンシャルプランナーの集客|相談に来た人の家族や知人へ、話が広がるまで
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
FPの集客が広がらないのは、相談の中身が悪いからではない
相談のあと、それきりになる場面
家計の見直し相談を終えて1週間後、お礼のメールが1通届く。それきり、紹介も2回目の相談もない。資料も丁寧に作り込み、時間をかけて説明したはずなのに、その先の反応がない。この空白が続くと、「自分の相談には、人にすすめるほどの価値がなかったのだろうか」と自分に言い聞かせてしまう人がいます。
腕が足りなかったのではなく、お金の話は人に言いづらい
相談者はFPに、家計・保険・借金・貯金額という、ふだん人に見せないものを見せています。相談の結果に満足していても、「FPに相談してきた」とは知人に言い出しにくい。誰かに相談したこと自体が、他人には見えにくい種類の相談だからです。
紹介待ち型かもしれません。いい相談をすれば紹介は自然に出るものだと思っていて、相談者に思い出してもらう働きかけをしていない型です。でも紹介が出ないのは、相談の中身が悪かったからではありません。満足していても黙って終わるのが普通だからです。腕の評価とはあまり関係がないというのが、私の実感です。
友人同士の立ち話の相談なら、その場のお礼で完結することが多いと思います。ですがFPへの相談は、予約を取り、時間を確保し、家計の中身を見せるという段取りを踏んだ相談です。段取りを踏んだ分だけ、知人にわざわざ話すときのハードルも上がります。
広告やSNSより先に、目の前の1人の周りから
FP集客と聞くと、SNS発信や広告、セミナー集客を思い浮かべる人が多いと思います。ですがこの記事で扱うのは、そのどれでもありません。相談に来た1人が、家族と知人に話せる形を相談の中で作ること。それだけを書きます。
SNSや広告、セミナーは相談者がまだ誰もいないときの話です。すでに相談者が1人でもいるなら、その人の周り——配偶者や家族、そして知人——へ話がどう広がるかを先に整えたほうが早い。土台となる働きかけを飛ばしたまま広告やSNSに手を広げても、初めましての相談が増えるだけで、1回で終わる相談も同じ数だけ増えます。目の前の1人から仕事を広げていく考え方は、独立した人の営業の型と同じです。この記事では、相談者→配偶者・家族→知人という順番だけを追います。
相談者は家に帰って、何を話しているか
相談者は、その日のうちに家族へ何かしら話をします。何を、どう話すかで、そこから先が広がるかどうかが変わります。
配偶者に伝わる第一報は「何を言われたか」と「いくらか」の2つ
相談を終えた人が家に帰って配偶者に話す第一声は、だいたい決まっています。「保険、見直したほうがいいって」「教育費、今のままだと足りないって」。FPの名前も経歴も、この第一報には出てきません。
この一言を聞いた配偶者が「で、どうするの?」と続きを聞ける形になっているか。ここが分かれ目です。反対に、相談の内容を一言で言えない相談者は、家に帰っても「まあ、色々話は聞いた」としか言えません。配偶者は話の続きを聞きようがなく、会話はそこで終わります。
相談者が「自分の話」として語れる相談だけが広がる
家で話されるのは、FPが何を説明したかではなく、自分の家計がどうなるかという話です。相談の終わりに、相談者が自分の言葉で言い直せる一文を残せているかを確認します。
例えば「うちは車の買い替えを2年ずらせば、学資は足りる」。この一文があれば、相談者は自分の言葉として家族に話せます。「専門家がこう言っていた」ではなく「うちはこうする」に変わっているかどうかです。
NG例: 数字だけの提案書、専門用語の資料
「キャッシュフロー表」「特約」「変動・固定」といった言葉を言い換えなしで渡すと、配偶者はその資料を読めません。読めない資料は家の中で止まります。第一報が「なんか難しかった」で終わってしまいます。
相談者に渡す紙と、FPが手元で使う資料は分けます。提案の根拠や計算過程は手元用にまとめ、相談者が持ち帰るものは結論だけにします。
相談の場で、家族へ話が広がる形を作る
家に帰ってからの話し方は、相談の場でほとんど決まります。相談の終わり10分をどう使うかが分かれ目です。
終わりに「帰ってご家族にどう説明しますか」と聞く
相談の終わりに、相談者本人に説明してもらう場面を作ります。手順は3つです。①結論を相談者自身に言ってもらう。②詰まったところがあれば、言い換えて渡す。③一文に決める。
詰まった箇所は、相談者の理解力の問題ではなく、こちらの説明が届いていなかった箇所です。その場で言い直せば、相談者はその一文を持ち帰れます。
家族用の一枚紙を持ち帰ってもらう
提案書とは別に、A4一枚を用意します。中身は次の4つだけです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 相談した日と相談者の名前 | いつ、誰の相談だったか |
| 結論3行 | 何をどうするという結論 |
| 次にやること1つ | 相談者が次にする行動 |
| 次に相談するタイミング | 例:住宅ローンの金利見直し時 |
配偶者はこの一枚紙を読むだけで、第一報の中身を理解しやすくなります。提案書を最初から読ませる必要はありません。
渡すタイミングは相談の最後、「ご家族に見せてください」と言葉を添えて手渡します。無言で封筒に入れて渡すだけだと、相談者はそのままカバンにしまって終わることもあります。
「次はご夫婦で」を事実として言う
住宅ローンや保険、教育費は、本人1人では決めにくいテーマです。「ぜひご主人もお連れください」と理由なしに頼むのはNG例です。代わりに、「ご家族の収入と保険の分を見ないと、答えが出ません」と事実として伝えます。
これは押しではなく、答えを出すための条件として言っているだけです。決めるための情報が足りていないという事実を伝えているにすぎません。初回は本人だけで構いません。ただし2回目以降、金額が動く話に進む前には、この伝え方を使います。
相談が終わったあと、思い出してもらう働きかけ
相談が終わった時点では、まだ何も広がっていません。ここから先は、相談者に思い出してもらうための連絡が必要です。
1〜2週間後の「その後どうなりましたか」
相談から1〜2週間後、営業ではなく相談の続きとして連絡します。
文例: 「先日の保険の件、手続きは進みましたか。書類でつまずく箇所があれば見ます」
相談者が動けていなければ、そこが次の相談になります。動いていれば、それだけで気にかけてもらえているという印象が残ります。電話でもメールでも構いませんが、相談者が返信しやすい手段を選びます。長文の近況報告は要りません。一言で十分です。
年1回、相談者側の出来事に紐づけて連絡する
季節の挨拶ではなく、相談で聞いた出来事——子どもの進学、ローンの固定期間終了、保険の更新、転職——を手帳に控えておき、その少し前に連絡します。
文例: 「来春、上のお子さんが高校ですね。教育費の出方が変わるので、一度見直しませんか」
出来事に紐づいた連絡は、相談者にとって「思い出された」ではなく「気にかけてもらえていた」に変わります。手帳やメモアプリに、相談者の名前と出来事、連絡予定時期をセットで残しておきます。件数が増えるほど記憶だけでは追えなくなるので、記録の形にしておくと働きかけを続けやすくなります。
NG例: 紹介依頼の一斉メール、ノベルティ、SNSフォローのお願いだけ
相談者の出来事と関係のない連絡は、家族には「売り込み」として伝わります。一斉配信のメールや、意味のないノベルティ、SNSのフォローだけを頼む連絡は、ここで話を止めてしまいます。ノベルティを配ること自体が悪いわけではありませんが、相談者の状況と無関係なタイミングで送ると「営業のための連絡」だと伝わってしまいます。連絡は必ず、相談者自身の出来事から始めます。
知人への紹介は「頼む」より「言える言葉を渡す」
家族の中で話が広がったあとの、もう一段先です。知人への紹介は、頼み方ひとつで結果が変わります。
相談者が知人に「FPに相談した」と言えるようになる条件
お金の相談は言いふらしにくいものです。だからこそ、「お金の相談をした」ではなく、「住宅購入の件で相談できる人がいる」という言い方を渡します。テーマを1つに絞った言い方であれば、知人との雑談の中でも口に乗りやすくなります。
「保険の相談に乗ってもらった」ではなく「住宅ローンの件で相談できる人がいる」と言えば、聞いた知人も自分の状況に当てはめて考えやすくなります。相談の全体像ではなく、入り口を1つ渡すイメージです。
紹介を頼む言い方の文例
紹介を頼むのは、相談者が結果に納得したあとに一度だけです。
文例: 「同じように住宅購入で迷っている方がいたら、私の名前を出してもらって構いません。まず話だけ聞きます」
NG例: 「どなたかご紹介ください」——誰を、何の件で紹介すればいいのかが空いていて、相手が動けません。
頼むタイミングも重要です。相談の途中や、結果が出る前に頼むと、相談者は下心を感じ取ります。結果に納得したという事実がある状態で、一度だけ伝えます。
紹介が来たら、紹介者に必ず一報を入れる
紹介を受けたら、当日中に紹介者へ一報を入れます。
文例: 「ご紹介いただいた◯◯さんとお会いしました。ありがとうございました」
相談の中身は言いません。守秘の対象です。この一報を飛ばすと、紹介者は「どうなったか分からない」まま止まり、2回目の紹介につながりにくくなります。
広がらない相談に共通する落とし穴
ここまでの形を作っていても、いくつかの落とし穴でつまずくと話は止まります。
商品の話が状況整理より先に出た
保険や金融商品の話を、相談者の家計整理が終わる前に出すと、家族には「売り込まれた」と伝わります。順番は、状況整理→結論の一文→必要なら商品の話、です。相談の冒頭で商品名を出すと、相談者はその時点から「これは商品を売るための時間だ」と身構えてしまい、家計の中身を正直に話しにくくなります。商品を勧める範囲は、自分の登録・資格でカバーできる範囲までにとどめます。税務など個別の判断が必要な場面は、専門家に確認するよう伝えます。
宿題を出しすぎて、相談者が動けないまま終わる
NG例: 「保険証券を全部集めて、家計簿を3か月つけて、ローンの残高証明を取ってきてください」
次にやることは1つに絞ります。動けた相談者だけが、「やってよかった」と家族に話せます。宿題を並べるほど、相談者は動けなくなり、話す材料も減ります。残りの宿題は、次の相談で1つずつ渡せば十分です。
話が広がりやすい相談者の見分け方
誰からでも同じように紹介が出るわけではありません。家族と相談してから決める人、職場や地域の付き合いがある人、相談の途中で「友だちも同じことで悩んでいる」と口にした人。こういう相談者には、家族用の一枚紙と、言える言葉を厚めに渡します。
反対に、相談を1人で完結させたい人、周囲との付き合いが薄いと本人が話す人には、無理に紹介の言葉を渡す必要はありません。相談そのものを丁寧に終えることを優先します。
持ち帰り: 相談1件から話が広がる形をつくるチェック表
ここまでの内容を、相談の場面ごとに整理しておきます。
3段階チェック表
| 段階 | チェック項目 |
|---|---|
| 相談中 | 相談者が自分の言葉で結論を言えたか |
| 相談中 | 家族用の一枚紙を渡したか |
| 相談中 | 次にやることは1つか |
| 相談後1〜2週間 | 「その後どうなりましたか」を送ったか |
| 相談後1〜2週間 | つまずきを次の相談にできたか |
| 相談後1〜2週間 | 言える言葉(テーマ1つ)を渡したか |
| 年1回 | 相談者の出来事を手帳に控えたか |
| 年1回 | 出来事の少し前に連絡したか |
| 年1回 | 紹介が来たら紹介者に一報を入れたか |
今日やれること1つ
直近に相談を終えた1人に、「その後どうなりましたか」を送ってください。
文例: 「先日の保険の件、手続きは進みましたか。書類でつまずく箇所があれば見ます」
紹介は頼みません。返事が来なくても構いません。思い出してもらう働きかけが1回目に入ったところから、話は広がり始めます。
よくある質問
ファイナンシャルプランナーの集客はSNSや広告から始めるべきですか?
相談者が1人でもいるなら、先にその人の周り(家族・知人)へ広がる形を作る。SNSや広告は相談者が0人のときの話で、相談後の働きかけがないまま増やしても1回で終わる相談が増えるだけ
FP相談に来た人に紹介をお願いするのは失礼になりませんか?
「どなたかご紹介ください」と頼むと相手が動けない。相談者が結果に納得したあとに一度だけ、「同じように住宅購入で迷っている方がいたら私の名前を出していい」と、テーマを1つに絞った言える言葉を渡す形なら失礼にならない
FP相談が1回で終わってしまうのはなぜですか?
相談が悪かったからとは限らない。お金の相談は言いふらしにくく、次の出来事がないと思い出されない。相談で聞いた出来事(進学・ローンの金利見直し・保険の更新)の少し前に連絡すると、2回目の相談につながる
相談者の家族にも来てもらうには、どう言えばいいですか?
住宅ローン・保険・教育費は本人だけで決めにくいので、「ご家族の収入と保険の分を見ないと答えが出ません」と事実として伝える。家族用の一枚紙(結論3行+次にやること1つ)を持ち帰ってもらうと、配偶者が読んで話が進む
紹介で来た相談者に、紹介してくれた人へのお礼は必要ですか?
物や値引きより、当日中の一報「ご紹介いただいた◯◯さんとお会いしました」が効く。相談の中身は言わない。この一報がないと紹介者は結果が分からないまま止まり、2回目の紹介が出ない
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