対面営業・商談
営業で「間に合ってます」と言われたとき|その場で引いて、次に話を聞いてもらえる返し方
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
営業で「間に合ってます」と言われたら、その場は引いてかまいません。ただ、ひとつだけ置いて帰ります
言われた瞬間、自分に何を言い渡しているか
名刺を渡してすぐ、あるいはドアを開けた瞬間に「うちは間に合ってます」と返されることがあります。挨拶が終わらないうちに言われると、次の言葉が出てこなくなります。
その場では会釈して引くしかありません。問題は帰り道です。「やっぱり自分は営業に向いていない」と一人で結論を出してしまう人は多いのではないか、というのがここでの見立てです。断られた出来事そのものより、帰り道で自分に言い渡した判決のほうが重く残ります。次の相手に会うときまで、その判決を引きずったまま話すことになります。
相手が言っているのは「あなたはいらない」ではなく「今は足りている」
「間に合ってます」は、相手の今の状態を伝える言葉です。こちらの腕や人柄を評価した言葉ではありません。
断られたからつらいのではありません。断られた自分を見るのが嫌だからつらいのだと思います。相手は今日の忙しさや、今の取引先との関係を話しているだけです。あなたの仕事の質を採点したわけではありません。この違いを持っておくだけで、帰り道の一人反省会の重さが変わります。
「もう一度聞くのが怖い」ときもあります
「向いていない」と自分でもう結論を出していて、それが確定するのを避けるために次の連絡を出せなくなることがあります。もう一度連絡して同じ言葉を聞いたら、今度こそ確定してしまう気がして、連絡そのものを止めてしまうのです。
ですが、断られても自分の価値は下がりません。「間に合ってます」は一回目の状態の報告であって、二回目も同じとは限らないからです。
結論を先に言います。その場では粘らずに引いてください。代わりに「次に連絡してもいい理由」を1つだけもらって帰る。それだけで、次に話を聞いてもらえる可能性が変わります。
「間に合ってます」の中身は3通りある。聞き分けてから返す
同じ「間に合ってます」でも、中身は違います。聞き分けてから返さないと、的外れな一言を重ねることになります。

①今の頼み先で足りている
すでに付き合いのある業者や外注先がいるケースです。「いつもの人にお願いしてるので」と続くことが多い状態です。この場合は、今の頼み先を否定してはいけません。否定した瞬間、こちらの印象だけが悪くなります。
②何の話か分からないので、とりあえず断っている
名乗った直後、こちらの説明の途中で出るケースです。相手はこちらが何者か分からないまま、話を早く終わらせるために言っています。提案の中身が悪いのではなく、まだ中身が届いていないだけです。ここで食い下がると、余計に警戒されます。
③今は考える余裕がない
繁忙期や、手が離せない時間帯に出るケースです。表情や声の速さ、「今ちょっと」の一言で見分けがつきます。この場合は内容の問題ではなく、時間の問題です。内容をどれだけ丁寧に話しても、相手には届きません。
見分け方の手がかり
- 言われたタイミング(名乗った直後か、説明を聞いたあとか)
- 続く一言(「いつもの人が」「今ちょっと」「うちは結構です」)
- 相手の手元の状況(電話が鳴っている、誰かに呼ばれている、資料を片付けている)
受付や取り次ぎ経由で言われたときは、本人の言葉と決めつけない
企業を訪問した場合、「間に合ってます」は担当者本人ではなく、受付や電話を取った人の口から出ることがあります。この場合、断っているのは取り次いだ人であって、担当者が中身を見て判断した結果とは限りません。取り次ぎの人に重ねて説明しても、判断する権限がないので話は進みません。「恐れ入ります、お名刺とお資料だけお預けできますでしょうか」と一言添えて、名前を名乗ったうえで引くほうが、あとで担当者の目に触れる可能性が残ります。受付で粘っても得るものはない、というのがここでの見立てです。

その場で使える返し方と、やってはいけない返し方
3通り別のその場の一言(例文)
どれも10秒以内で言える長さにしてあります。
①今の頼み先で足りている場合 「そうですよね、頼める方がいるのが一番です。もしその方の手が回らないときがあれば、思い出していただけたらうれしいです」
②何の話か分からない場合 「失礼しました、(仕事の内容)をしている(名前)です。今日はご挨拶だけで失礼します」
③今は余裕がない場合 「お忙しいところすみません。また落ち着いた頃に改めます」
どの一言も、相手を説得する言葉ではありません。この場は引く、という宣言です。
NG例:粘る・値下げする・資料だけ押しつける
- 「でも一度だけお話だけでも」と食い下がる → 押しの強い人として記憶されます
- その場で「今なら安くします」と金額を出す → 安さで判断する人という印象がつきます
- パンフレットを渡してすぐ去る → また来る人として身構えられます
どれも、その場をしのぐための行動です。次に会える確率を上げる行動ではありません。
引き際のひと言は「ありがとうございます」で終える
断られた場面でも、最後はお礼で閉じてください。相手の記憶に残るのは話の中身より最後の印象だ、というのは私の見方です。統計として言えることではありませんが、最後に感じよく去った相手のことは覚えていても、粘って去った相手のことはあまり思い出したくないものです。
次に話を聞いてもらうために、1つだけ聞いて帰る
聞くのは1つだけ

引き際に、質問を1つだけ残します。
「ちなみに、今お願いしている方を見直すとしたら、どんなときですか?」 「この時期は忙しいんですね。落ち着くのはいつ頃ですか?」
質問は1つに絞ってください。2つ以上聞くと、相手は営業がまだ続いていると感じます。せっかく引いたつもりでも、押しているのと同じになってしまいます。
聞けなかったときはそれでいい
相手が明らかに話したくない様子なら、質問はしなくていいです。名刺か連絡先だけを残して帰れば十分です。聞けなかったことを引きずる必要はありません。今日は名前を覚えてもらえただけでも進歩です。
聞いたことは、その日のうちにメモに残す
相手の言葉はそのまま書いてください。「来年の春に見直すかも」のように、聞いた言葉そのままです。自分の感想(「感じ悪かった」)は書かないでください。次の連絡のきっかけになるのは、相手の言葉だけです。
帰ってからやること:お礼は短く、追いかけない
お礼の一文(連絡先をもらえた場合)
「本日は突然失礼しました。お話を聞かせていただきありがとうございました。(仕事の内容)の件でお役に立てることがあれば、いつでもご連絡ください」
3行以内に収めてください。提案や資料は付けません。お礼はお礼として、それだけで完結させます。
NG:翌日にまた連絡する/お礼に売り込みを混ぜる
「昨日の件ですが」と翌日に続けると、せっかくの引き際が台無しになります。お礼の中に料金表やサービス説明を入れるのも避けてください。相手からすれば、お礼のふりをした営業だと分かってしまいます。
記録表をつける
項目は次の5つです。
- 日付
- 相手・会社名
- どの「間に合ってます」だったか(①②③)
- 相手の言葉そのまま
- 次に連絡する時期
この表があると、二回目の連絡を気分ではなく予定で出せます。「そろそろ連絡していいのか」と毎回悩まずに済みます。
二回目の連絡は「近況を伝えるだけ」でいい
いつ出すかは、相手の言葉から決める

①の場合は、相手が言った見直しの時期の少し前に出します。③の場合は、「落ち着く」と言われた時期です。言葉がなければ、季節の変わり目など自分で日付を決めて記録表に書いておきます。ここでの時期の目安は、根拠のある統計ではなく、あくまで判断のための目安として置いています。
頼まない連絡の例文
「以前ご挨拶した(名前)です。最近こういう仕事を納めました。近くに来たのでご挨拶だけ」
仕事を頼む言葉は入れません。頼まずに近況を伝えるだけでもいい、と思っておいてください。何かを頼む連絡だと身構えられると、また「間に合ってます」で終わってしまいます。
二回目も「間に合ってます」だったら
それでも収穫はあります。相手の状態がまだ変わっていないと分かったことです。記録表に書き足して、次の時期を決め直すだけでいいです。回数で自分の値打ちを数える必要はありません。
持ち帰り表:「間に合ってます」3パターン別・その場の一言と次の一手
早見表
| 相手の状態 | 見分ける手がかり | その場の一言 | 聞いて帰る1問 | 次の連絡のきっかけ |
|---|---|---|---|---|
| ①今の頼み先で足りている | 「いつもの人が」と続く | 頼める方がいるのが一番です、と受ける | 見直すとしたらどんなときか | 相手が言った見直し時期の少し前 |
| ②何の話か分からない | 名乗った直後・説明の途中で出る | 名乗り直してご挨拶だけで失礼する | 質問はせず名乗り直しで十分 | 季節の変わり目など自分で決めた時期 |
| ③今は余裕がない | 「今ちょっと」、手元が忙しい | また落ち着いた頃に改める | 落ち着くのはいつ頃か | 相手が言った時期 |
断られた当日のチェックリスト
- その場で粘らずお礼で閉じた
- 1つだけ聞けた(聞けなくても可)
- 相手の言葉をそのまま書いた
- 次の連絡時期を記録表に書いた
- 「向いていない」と結論を出す前にこの表を見た
フリーランスの営業全体の中での位置づけ
「間に合ってます」は、営業の流れの途中で起きる一場面にすぎません。仕事を取る流れ全体はフリーランスの営業のやり方にまとめています。目の前の一言に判決を出す前に、全体の流れの中でこの場面がどこにあるかを見ておくと、気持ちの重さが変わります。
よくある質問
営業で「間に合ってます」と言われたら、もう一度だけ押したほうがいいですか?
その場では押さずに引くほうがいいです。粘ると押しの強い人として記憶されます。代わりに1つだけ聞くか、連絡先を残して帰り、次の連絡につなげてください。
「間に合ってます」と言われた相手に、また連絡してもいいですか?
いいです。相手が言ったのは今の状態であって、こちらを断り続けるという意味ではありません。頼む連絡ではなく近況を伝える連絡にし、時期は相手の言葉か自分で決めた日付で出してください。
「間に合ってます」への切り返しトークを覚えるべきですか?
一人で営業する人には、切り返しより引き際の一言と、聞いて帰る1問のほうが役に立ちます。まず相手が3通りのどれかを聞き分けて、それに合う一言を返してください。
何度も「間に合ってます」と言われて、営業に向いていない気がします
断られた回数は腕や人柄の点数ではありません。相手の状態が変わっていないと分かっただけです。記録表で次の時期を決めて、気分ではなく予定で動いてください。
お礼のメールには何を書けばいいですか?
3行以内で、時間をもらったお礼と、お役に立てることがあればご連絡くださいという一文だけにしてください。料金表や提案を付けず、翌日に続けて連絡もしないでください。
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