対面営業・商談

電話が苦手な人の営業|かける前に決めておくことと、メールで済ませていい場面

このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

電話が苦手なのは、口下手だからではない

電話が苦手な人が、自分に言い渡していること

「電話 苦手 営業」と検索するとき、頭の中にはもう判決が出ています。「自分は口下手だから、電話で仕事の話を切り出せない」という判決です。

これは切り出せない型かもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型です。電話は、かけた瞬間に相手の時間をもらう側に回る気がします。だから受話器の前で手が止まります。

ただしこれは、「あなたは切り出せない型です」と決めつける話ではありません。同じ感覚を持つ人が多い、という仮説として置いておきます。

本当の構造は「話す力」ではなく「終わりを決めずにかけている」こと

電話が苦手なのは、話すことが下手だからではありません。「この電話で何が決まれば切っていいか」を決めずにかけていることが原因です。

終わりが決まっていない電話は、切るタイミングを相手にゆだねる形になります。だから長引くのが怖くなり、次からかけるのが億劫になります。

たとえばこんな場面です。「その後いかがですか」とだけ言って電話をかけた。相手は「特に変わりないですね」と答え、そこで会話が止まる。気まずい沈黙のあと、「では、また」と言って切った。この1回で、電話そのものが怖くなってしまいます。

これは話し方の問題ではありません。用件と終わり方を決めずにかけたことが原因です。

性格はそのままでいい。直すのは「決め方」と「線引き」の2つ

この記事で渡すのは、話し方の練習ではありません。渡すのは2つだけです。

1つ目は、電話をかける前に決めておく3つのこと。2つ目は、電話でなくメールで済ませていい場面の線引きです。

この2つがあれば、緊張したまま電話しても仕事は進みます。性格を変える必要はありません。

なお、電話やメールより手前にある「誰に、どう会いに行くか」を含めた営業全体の順番は、フリーランスの営業のやり方で整理しています。

かける前に決めておく3つのこと(用件・してほしいこと・終わりの一言)

①用件を一文にする

電話をかける前に、用件を一文にまとめます。「見積の件で、3分だけいいですか」のように、名詞+所要時間の形にします。

NG例は「先日はありがとうございました。その後いかがですか」。これでは用件がないので、相手が意図を探ることになり、沈黙が生まれます。

用件が一文で言えない電話は、まだかける段階ではありません。その場合はメールにします。

②相手にしてほしいことを1つに絞る

この電話で相手にしてほしいことを、1つだけ決めます。候補は「返事の目安日を教えてもらう」「日程を1つ決めてもらう」「気になる項目を1つ挙げてもらう」のどれかです。

2つ以上は頼みません。決まらなくても、「では〇日にもう一度ご連絡します」と自分から次を置けば、それで終われます。

NG例は、日程と金額と追加の相談を1回の電話に詰め込むことです。相手が答えられず、こちらも着地できなくなります。

③終わりの一言を先に用意する

「では〇日にメールで送ります。ありがとうございました」を、電話をかける前に決めておきます。終わり方が決まっていれば、途中で何が起きても着地できます。

手順はシンプルです。受話器を持つ前に、メモに3行書きます。用件、してほしいこと、終わりの一言です。

3行が書けない電話はかけません。3行が書けたら、その電話は緊張していても失敗しません。

メールで済ませていい場面と、電話でないと進まない場面

判断の軸は「自分の得意不得意」ではなく「相手の手間」

電話かメールかを決める基準は、自分が電話が得意か苦手かではありません。相手の手間がどちらで少なくて済むかです。

相手が読めば済む話はメールにします。相手が考えて決めないと進まない話、相手に不利が出る話は電話にします。

「電話が苦手だからメール」ではなく、「相手の手間が少ないほうを選ぶ」と決めれば、電話を減らしても後ろめたさは残りません。

場面別の判断表(持ち帰り用)

場面電話かメールか理由
日程調整メール候補日を3つ書けば、相手は選ぶだけで済む
見積の送付メール相手が読んで考える時間が要る
見積を送って返事がないまずメール1通、反応がなければ電話いきなり電話は催促に見えやすい
納期が遅れる連絡電話のあとメール相手に損が出る話はメールだけだと軽く見える
作業中の小さな確認メール相手が空いた時間に読めば済む
初めての相手への最初の連絡メール電話は相手の時間を突然もらう形になる
お礼・近況メール相手の手を止める必要がない
トラブルのお詫び電話が先文字だけでは温度が伝わらない

メールで済ませると困る話の見分け方

次の3つの条件のどれかに当たれば、電話にします。

1つ目は、返事がはい・いいえで終わらず、相手が考えないと出せない話。2つ目は、相手に不利になる話(遅れ・値上げ・お断り)。3つ目は、日が空くほど言いにくくなる話です。

NG例は、納期が遅れそうなのを金曜の夕方にメールだけで送り、相手が月曜まで読まないケースです。相手が損をする話をメールだけで済ませるのは、自分が楽なだけで、相手の手間を増やしています。

取引先への電話で緊張する人のための、かけ始めの言葉

名乗り→都合の確認→用件一文の順で言う

「〇〇の(名前)です。いま2〜3分よろしいですか。見積の件で1点だけ確認したくて」。この順番で言います。

都合を先に聞くと、相手に主導権を返せます。相手が「いま無理です」と言えば、「では何時ごろがよいですか」で終えていい。それだけで1本の電話が成立します。

緊張は電話をかけた直後にいちばん強くなります。だからこの部分だけ、紙に書いておきます。

受け手は「話し方」を見ていない

受け手側から見て困る電話は3つあります。用件が分からない電話、長い電話、何を返せばいいか分からない電話です。

声が震えても、言葉に詰まっても、用件と頼みごとがはっきりしていれば相手は困りません。逆に、流ちょうに話していても用件が見えない電話のほうが、相手には負担になります。

緊張していることは、自分が思っているほど相手に伝わっていません。

詰まったときの逃げ道の一言

「いま手元にないので、確認してメールします」「その点は改めてご連絡します」。この一言を用意しておきます。

沈黙を自分で埋める必要はありません。

NG例は、沈黙が怖くて、その場で「じゃあ少しお安くします」「それもサービスでやります」と言ってしまうことです。電話で決めなくていいことは、メールに逃がしていいのです。

見積を出したあと返事が来ない。電話するかメールで待つか

「あとは相手の番」で止めない

見積を送って1週間、催促と思われそうで電話できない。よくある場面です。

相手が黙っているのは、「高いと思った」からとは限りません。社内で決められずに止まっているだけのことも多くあります。電話は催促ではなく、「決めるのを手伝う」連絡だと位置づけます。

メール→電話の順番と目安の日数

送ってから数日〜1週間(業種によって変わる目安です)たったら、まずメールを1通送ります。「見積の件、ご不明点があれば口頭でご説明します。返事の目安日だけ教えてください」。要点を1行、頼みごとを1つに絞ります。

さらに数日たっても反応がなければ、電話にします。電話の用件は「見積の件で、気になる項目が1つでもあれば教えてほしい」です。

この順番なら、電話が「いきなり催促」にはなりません。

電話で聞くのは「返事」ではなく「引っかかり」

「ご検討いただけましたか」は、相手にはい・いいえを迫る質問になり、答えにくいものです。

代わりに、「どの項目が一番気になりますか」「時期の問題ですか、内容の問題ですか」と具体的に聞きます。引っかかりが分かれば、分割の提案や時期をずらす提案など、次の手が打てます。

NG例は、「難しそうなら結構です」と自分から引き下がることです。相手はまだ断っていません。

電話を減らしても仕事が止まらないメールの書き方

メールにも「相手にしてほしいこと」を1つ

件名に用件を入れます。「〇〇見積の件/返事の目安日のお伺い」のようにです。本文の冒頭に頼みごとを書き、そのあとに期限を書きます。

「ご確認ください」だけのメールは、相手が何をすればいいか分からず、返事が来ません。

NG例は、挨拶3行、経緯5行のあとに「いかがでしょうか」で終わるメールです。電話が苦手な人ほど、メールに電話の役割を持たせる書き方が必要です。

電話に切り替える一文を入れておく

メールの末尾に「お電話のほうが早ければ、〇日の午後にこちらからかけます」と入れておきます。

こう書いておくと、電話をかける日と口実を自分で作れます。相手が「メールで大丈夫です」と返してくれば、電話は不要になります。どちらに転んでも、電話の話を自分から切り出さずに済みます。

頼まない連絡は、電話がなくてもできる

まだ仕事をしたことがない相手には、頼まず近況を伝えるだけの1通で十分です。

「最近こんな仕事をしました。似た場面があれば思い出してください」。この一文だけ送れば、それで用は足ります。

これが、切り出せない型から抜ける最小の行動です。電話で切り出す必要はありません。頼んでいないので、対等な関係のままです。

今日やること。電話を1本だけ決める

かける前メモを1枚作る

3行のテンプレートを紙かメモアプリに用意します。用件一文、相手にしてほしいこと1つ、終わりの一言です。

次にかける電話1本分だけ、これを埋めます。埋まらなければ、その連絡はメールにします。埋まったら、その電話は緊張していてもかまいません。

今週かける電話を1本に絞る

目指すのは「電話を克服する」ことではなく、「用件がはっきりしている電話を1本かける」ことです。

候補は、返事待ちの見積、決まっていない日程、遅れそうな納期のどれかです。残りは全部メールでいい。1本かけて、終わりの一言まで言えたら、それで今週は合格です。

電話のあとにメールを1通残す

電話で決まったこと、次の日付を、その日のうちに相手へメールで残します。「先ほどはありがとうございました。〇日に〇〇をお送りします」。

これは言った言わないを防ぐだけでなく、次の連絡の口実を自動で作ります。電話が苦手な人ほど、電話を「メールの起点」にすると、連絡が途切れません。

よくある質問

電話が苦手でも営業はできますか?

できます。電話は営業の道具の1つで、相手が決めないと進まない場面と相手に不利が出る場面だけ電話にし、それ以外はメールでいいです。苦手を直すより、かける前に用件・してほしいこと・終わりの一言の3つを決めるほうが先です。

取引先に電話するとき、最初に何と言えばいいですか?

名乗り→「いま2〜3分よろしいですか」→用件を一文、の順です。都合を先に聞くと相手に主導権を返せるので、自分も楽になります。相手が「いま無理」なら「何時ごろがよいですか」で終えていいです。

見積を送ったあと、いつ電話すればいいですか?

目安は、送ってから数日〜1週間でまずメール1通(返事の目安日を聞く)を送ります。さらに数日反応がなければ電話にします。電話では「検討しましたか」ではなく「気になる項目はどれですか」と引っかかりを聞きます。

メールだけで済ませると失礼になりますか?

相手が読めば済む話(日程調整・見積送付・小さな確認)はメールで失礼になりません。納期の遅れ・値上げ・お断り・お詫びのように相手に不利が出る話は、電話のあとにメールで残します。

電話中に頭が真っ白になったらどうすればいいですか?

「確認してメールします」「その点は改めてご連絡します」と言って、決めるのをメールに逃がしていいです。沈黙を埋めるためにその場で値引きや安請け合いを言わないことだけ守ります。

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