対面営業・商談
専門外・できない仕事の断り方|ほかの人を紹介して、次も相談してもらう
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
専門外・できない仕事は「早く・短く・代わりを置く」の3つで断る
断れないのは気が弱いからではない
知り合いの社長から「これもできる?」と、専門外の相談が届く。返事に迷って、3日が過ぎる。結局「やってみます」と引き受けて、夜中に調べながら作業している。そんな場面に心当たりがある人は多いと思います。
断れない型かもしれません。断ったら次が来ない気がして、合わない仕事も受け続けてしまい、いい話が来たときには手が空いていない型です。
本当の構造は「まだ選べる立場じゃない」という自分への言い渡し
断れないのは、気が弱いからではありません。「断ったら次は来ない。自分はまだ仕事を選べる立場じゃない」と、自分に言い渡しているからです。そう考えている人が多い、と私は見ています。
腕がないわけでも、度胸が足りないわけでもありません。断り方の順番を習っていないだけです。
結論を先に渡す:3つがそろえば、断っても次の相談につながりやすい
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| ① 早く | 返事はその日のうちに | 寝かせるほど言いにくくなり、相手の段取りも遅れる |
| ② 短く | 理由は一文だけ | できない理由を長く書くほど、言い訳に聞こえる |
| ③ 代わりを置く | 紹介先・できる範囲・次に頼める時期のどれか1つ | 相手の困りごとが残らない |
この3つがそろえば、断っても「また相談しよう」と思ってもらいやすくなります。専門外の仕事でいちばん効く「代わり」は、ほかの人の紹介です。この記事は、その紹介の選び方と渡し方を中心に書いています。
断ることは、相手を突き放すことではありません。相手の時間を守ることです。性格はそのままでいい。順番を覚えるだけでいいのです。
断る前に決める:受ける・断る・一部だけ受けるの線引き表
迷ったら4つの質問で判定する
返事を寝かせてしまう一番の原因は、自分の中で基準がないことです。基準があれば、迷う時間が短くなります。次の4つを順に聞いてみてください。
- 自分の専門の範囲か
- 納期までに、今の仕事と並べて回せるか
- この金額で赤字にならないか
- うまくいかなかったとき、自分で責任を取れるか
1つでも「いいえ」なら、断るか、一部だけ受けるかを考えます。
判定表(持ち帰り用)
| 状況 | 判定 | 返し方 |
|---|---|---|
| 4つとも「はい」 | 受ける | 納期と範囲を確認して、引き受ける |
| 専門外だが、一部はできる | 一部だけ受ける | できる部分だけ受け、残りは紹介する |
| 納期だけが無理 | 時期をずらす | 「この日からなら着手できます」と提案する |
| 専門外で、責任も取れない | 断って紹介する | 結論を先に言い、紹介先を添える |
この表をスマホのメモに入れておくと、相談が来た瞬間に当てはめられます。
「とりあえず受ける」が一番高くつく理由
断ると関係が切れる気がして、とりあえず受ける。これが一番高くつきます。起きる順番はこうです。
- 専門外のロゴ制作を受ける
- 慣れない作業に時間がかかり、修正のやりとりが何度も続く
- 本業の締切が押して、本業の取引先にも迷惑がかかる
- 結局、ロゴの相談をくれた社長にも、本業の取引先にも、いい印象が残らない
断ったときに失うのは、その1件です。とりあえず受けて失敗したときに失うのは、その1件と、これまで積んだ信用です。
ほかの人を紹介して断る:紹介先の選び方と渡し方
紹介は貸し借りではない
紹介を頼むと借りができる気がして、言い出せない人がいます。その人ほど、紹介する側に回るのもためらいがちです。「勝手に人を紹介していいのか」「失敗したらどうしよう」と考えるからです。
ただ、紹介は貸し借りの話ではありません。相談してくれた人の困りごとを、片づける手伝いです。相手は困っていて、紹介先は仕事を探している。つなぐだけで、相談者・紹介先・自分の3者が助かることが多いです。
紹介先の選び方
次の3つを満たす人に絞ります。
- 自分が仕事ぶりを実際に見たことがある人
- 相手の予算感と合う人
- 連絡がすぐ取れる人
知らない人を、名前だけで紹介してはいけません。うまくいかなかったとき、自分の信用も一緒に下がります。
渡し方は3ステップ
- 紹介先に先に一報を入れる。 「こういう相談が来ているが、受けられそうか」と確認します。
- 相談者に一言添えて紹介する。 「この人なら、こういう理由で合うと思います」と、理由を1つ添えます。名前と連絡先だけでは、相手は選べません。
- 1〜2週間後に、双方に様子を聞く。 「その後いかがですか」の一言で十分です。
この③が、次の相談につながります。紹介して終わりにせず、結果まで気にかけている人は、次も頼みやすいからです。
NG例
- 紹介先に断りなく、連絡先だけ相談者に渡す
- 紹介したきり、その後を聞かない
紹介先に迷惑がかかり、相談者にも「放り出された」印象が残ります。
専門外で断るときの文面例(書面・LINE・電話)
書面の型は5行
順番は次の5つです。
- 相談への感謝
- できないことを一文で
- 理由を一文で
- 代わり(紹介・一部対応・時期)
- また相談してほしい一言
件名は「〇〇のご相談の件(お返事)」のように、用件が分かる形にします。「Re:」のまま返すと、相手は中身を開くまで結論が分かりません。
文例:専門外で、ほかの人を紹介する場合
件名:ホームページ制作のご相談の件(お返事)
〇〇様 お世話になっております。ご相談いただきありがとうございます。 今回のホームページ制作は、私ではお受けできません。 普段はチラシや名刺などの紙のデザインが中心で、サイトの制作は専門から外れるためです。 Web制作を専門にしている△△さんは、私が実際に仕事ぶりを見ており、ご紹介できます。先方にも確認を取りますので、ご希望でしたらお知らせください。 紙のデザインのご相談でしたら、いつでもお受けします。
LINEの型は3〜4行
LINEは短くします。長いと、それだけで重く受け取られます。
ご相談ありがとうございます。 今回の〇〇は、私の専門から外れるためお受けできません。 △△が得意な方をご紹介できますが、いかがでしょうか。 〇〇の件ならいつでもお受けします。
電話・対面は「結論から」
電話や対面では、最初に「結論から言うと、今回は難しいです」と言い切ります。前置きを長くすると、相手は期待したまま聞き続けるので、最後に断られたときの落差が大きくなり、かえって気まずくなりがちです。言い終えたら、間を空けずに代わりの提案を続けます。
「結論から言うと、今回は難しいです。専門から外れていて、責任を持てないためです。ただ、この分野が得意な方を知っていますので、よければご紹介します」
沈黙が怖くて理由を足したくなりますが、足さなくて大丈夫です。理由は一文、すぐに代わりです。
納期や金額で断る場合
納期や金額で断る場合の例文は、フリーランスの仕事の断り方にまとめています。この記事は、専門外の仕事を紹介で断る場面に絞っています。
断ったあとに「また相談しよう」と思ってもらう一言
断りの最後に、受けられる仕事を1つ書く
「また何かあれば」だけでは、相手は何を頼めばいいのか分かりません。自分が受けられる仕事を、具体的に1つ書きます。
「チラシや名刺など、紙のデザインのご相談なら、いつでもお受けします」
この一文があると、相手の頭の中で、自分の名前と仕事内容が結びつきます。
時期を言えるなら言う
「来月半ばからなら手が空きます」のように、次に頼める時期を伝えます。相手の手帳やカレンダーに、自分の名前が残ります。断った時点で終わりにせず、次の接点を置いておく感覚です。
断った相手への後日の連絡
紹介の結果を聞く連絡は、営業ではなく、近況の確認として自然に送れます。
「先日ご紹介した△△さんとは、その後いかがですか。もし進め方などで気になることがあれば、気軽に聞いてください」
売り込みの文は1行もありません。それでも、相手の中には「ちゃんと気にかけてくれる人」として残ります。
断ったことで関係が終わるとは限りません。「正直に言ってくれる人」として、相談先に残れます。曖昧に受けて失敗する人より、できないことをできないと言える人のほうが、安心して頼めると私は見ています。
関係を悪くする断り方のNG例と直し方
返事を寝かせる
NG: 「検討します」と返して、数日放置する。
相手は待っている間、次の手が打てません。その間に、断りの言葉はどんどん重くなります。
直し方: その日のうちに「今回は難しいです」だけでも先に返します。詳しい理由は後でいい。
曖昧に断る
NG: 「ちょっと厳しいかもしれません」
相手は「頼めばやってくれる」と受け取って、再度お願いが来ることがあります。断ったつもりが、断れていません。
直し方: 「お受けできません」と言い切って、代わりを置きます。
断る代わりに安く受ける
NG: 「専門外なので、半額で」
結果に責任を持てない仕事を安く受けると、相手も自分も損をします。相手は「半額なら仕方ない」と思う一方で、仕上がりには同じ期待をします。
直し方: できる部分だけ正規の金額で受けるか、紹介に回します。
対比表
| NG文 | 直した文 |
|---|---|
| 検討します(そのまま数日放置) | 今回は難しいです。詳しい理由は改めてお伝えします(当日中) |
| ちょっと厳しいかもしれません | 今回はお受けできません。△△さんをご紹介できます |
| 専門外なので半額でやります | この部分だけお受けできます。残りは得意な方をご紹介します |
| すみません、お力になれず…(長い謝罪が続く) | ご相談ありがとうございます。今回は難しいです。代わりに〇〇ならお受けできます |
お詫びを長く書くほど、「断ったのは悪いこと」という空気になります。感謝は一言、結論は短く、代わりは具体的に。これで十分です。
断れない状態から抜ける最初の一歩
今日やること
いま手元にある「本当は受けたくなかった相談」を1つ思い出して、上の判定表に当ててみてください。どこで「いいえ」になったかが分かります。
次に、同じ相談が来たときの返事を、書面の型で1通だけ下書きして、保存しておきます。送るのは、次に同じ相談が来たときでいい。下書きがあるだけで、返事を寝かせる時間が短くなります。
紹介できる人を3人書き出す
自分の専門の隣にいる人を、3人書き出します。たとえばデザイナーなら、コピーライター、カメラマン、Web制作の人です。名前と得意分野だけをメモします。
これがあるだけで、「断る=相手を困らせる」が「断る=つなぐ」に変わります。紹介先が手元にあれば、断る言葉も出しやすくなります。
断ることで空く時間の使い道
断れない型の行き着く先は、いい話が来たときに手が空いていないことです。断って空いた時間は、本当に受けたい仕事のために取っておきます。
仕事の取り方全体の順番は、フリーランスの営業のしかたにまとめています。断り方は、その中の「仕事を切らさない」ための一部です。
なお、契約や法律に関わる判断が出てきた場合は、個別の事情によって変わるため、専門家に相談してください。
よくある質問
できない仕事を断ると、もう依頼が来なくなりますか?
早く・短く・代わりを置いて断れば、関係が切れるとは限りません。曖昧な返事や、引き受けて失敗するほうが信頼を損ねやすいです。受けられる仕事を具体的に伝えておくと、次の相談につながりやすくなります。
専門外の仕事を断る文面はどう書けばいいですか?
感謝、できないことを一文、理由を一文、代わりの提案、また相談してほしい一言、の5行の順番で書きます。件名は「〇〇のご相談の件(お返事)」のように、用件が分かる形にします。
専門外の仕事を頼まれたとき、ほかの人を紹介してもいいですか?
かまいません。ただし、紹介先に先に一報を入れて受けられるか確認し、自分が仕事ぶりを知っている人に限ります。紹介後に双方へ様子を聞くと、次の相談につながります。
断るのが申し訳なくて、つい安く引き受けてしまいます。
安く受けても結果に責任を持てなければ、相手も困ります。できる部分だけを正規の金額で受けるか、得意な人を紹介するほうが、相手のためになります。
断りの返事はいつまでに出すべきですか?
できるだけ早く、目安はその日のうちです。詳しい理由は後でもよいので、「今回は難しい」という結論だけ先に伝えると、相手は次の手を打てます。
本記事は、当編集部の制作基準——出典との照合・表現・重複の多段検証——を通過したものだけを公開しています(下書きにはAIを活用)。 仕組みの詳細は編集プロセスの開示をご覧ください。