対面営業・商談
キャリアコンサルタントの独立|資格を取ったあと、最初の依頼をどこから取るか
このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか
キャリアコンサルタントの独立で最初の依頼が来ないのは、経験が足りないからではない
結論から言うと、最初の依頼が来るのは、あなたが資格を取ったと伝えた相手からです。経験の量ではなく、伝えたかどうかで決まります。
資格は名前を守るもので、仕事を運ぶものではない
キャリアコンサルタントは、登録すれば「キャリアコンサルタント」と名乗れる名称独占資格です。登録制で、5年ごとに更新します。労働者の職業選択や職業生活設計、職業能力の開発について相談に応じ、助言や指導を行う立場だと、この資格があることで名乗れます。
ただし、名乗れることと、依頼が来ることは別の話です。資格は「この名前を使っていい」という許可であって、「この人に仕事を頼んでください」と誰かに知らせてくれるものではありません。資格を取った瞬間に依頼が増えるわけではなく、誰かがあなたの資格を知って初めて話が動きます。
名称独占資格は「名乗る資格」であって「仕事が回ってくる資格」ではありません。だからこそ、名乗った後に誰に何を伝えるかが、資格そのもの以上に結果を左右します。
切り出せない型かもしれません
独立したのに最初の依頼が来ない人の多くは、切り出せない型かもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型です。相談に乗る側の資格を取ったのに、いざ自分が「相談に乗らせてください」と頼む側に回ると、対等じゃなくなる気がして言えなくなります。
依頼が来ないのは、経験が足りないからではありません。資格を取ったことを、仕事の話として誰にも伝えていないからです。
頼まなくていい。近況を伝えるだけでいい
ここで渡したい許可は一つです。頼まなくていい、近況を伝えるだけでいい、ということです。
知らせていない相手からは、どれだけ実力があっても依頼は来ません。まず「頼む」ではなく「伝える」から始めれば、対等じゃなくなる感覚を避けたまま動けます。
独立1年目の依頼はどこから来るか|4つの依頼元を順番に並べる
独立1年目の依頼元は、だいたい決まった順番で来ます。
前の職場・元同僚
人事や総務、現場の管理職は、面談や若手の相談で困っている人を一番よく知っています。「今度こういう資格を取った」と伝えておくだけで、誰かに相談があったときに名前が挙がる位置に立てます。前職との関係が悪くなければ、ここが一番早い依頼元になりやすいです。
在職中は同僚だった相手でも、独立後は「相談を受けられる立場の人」として見え方が変わります。以前の肩書きで連絡するのではなく、資格を取った今の立場で改めて近況を伝えることが、依頼元として認識してもらう最初の一歩になります。
養成講座・勉強会で会った同業
養成講座や勉強会で知り合った先輩・同業も大きな依頼元です。案件を抱えすぎて手が回らない先輩から、面談の一部を任されて始まる仕事は少なくありません。同業は「発注する側」ではなく「一緒に受ける側」に回ってくれる相手です。
公的窓口・学校・団体の登録枠、そして個人の相談者
ハローワークや学校、各種団体の相談員登録枠も依頼元の一つです。ただし、これは最初にやることではなく、前の職場や同業への連絡と並行して進めるものです。登録から採用の連絡が来るまでに時間がかかることが多いので、連絡だけ先に済ませておき、返事を待つ間に前の職場や同業への声かけを進めるくらいがちょうどいいです。
個人からの相談は、この中で一番あとに来やすい依頼元になります。個人は、あなたという相談相手の存在を知る手段が一番少ないからです。組織に属していれば同僚や上司から自然に名前が伝わりますが、個人にはその経路がありません。個人向けの依頼から集めようとすると、動き出しが一番遅くなります。
NG例: サイトと名刺を作り、登録サイトに登録して待つ。独立1年目に一番多い動きですが、一番依頼が来ない動きでもあります。誰もあなたが資格を取ったことを知らないまま、待つだけの時間が過ぎていきます。
持ち帰り表
| 依頼元 | 頼まれやすいこと | 最初の一言 |
|---|---|---|
| 前の職場・元同僚 | 社員面談、若手の相談 | 「資格を取りました。面談で困っていたら声かけてください」 |
| 養成講座・勉強会の同業 | 面談の一部を任される | 「手が回らないときは一部だけでも受けられます」 |
| 公的窓口・学校・団体 | 相談員としての登録枠 | 「相談員として登録できますか」 |
| 個人の相談者 | 転職・キャリアの個別相談 | 「こういう相談を受けています」 |
依頼元の順番で迷ったときは、独立者が仕事を取るときの考え方も合わせて読んでみてください。職種が違っても、最初の依頼が来る順番には共通点があります。
「相談に乗らせてください」と言わずに切り出す3つの言い方
近況報告で切り出す
一番使いやすいのは、近況報告です。「資格を取りました。今こんな相談を受けています」とだけ伝えます。頼みません。そのまま使える文面はこうです。
ご無沙汰しています。実はキャリアコンサルタントの資格を取りまして、今は転職や社内でのキャリアの相談を受けています。もし周りで困っている方がいたら、気軽に声をかけてもらえると嬉しいです。
この文面が機能するのは、「相談に乗ってください」ではなく「こういうことをしています」という報告だからです。相手は返事をする義務を感じません。義務を感じないからこそ、思い出したときに気軽に声をかけてもらえます。
聞く側に回って切り出す
「御社で面談って誰がやってますか」と聞く形もあります。キャリアコンサルタントの得意技は聞くことです。その得意技を、そのまま営業の場面に使います。自分の商品を説明するのではなく、相手の状況を聞くところから始めれば、売り込みの感覚が薄くなります。
回数と金額を決めて試してもらう
無料ではなく、回数と金額を先に決めて「試してもらう」形にします。「1回30分、〇円で面談をお試しいただけます」のように、範囲を決めて渡します。無料にすると、相手はかえって頼み返しにくくなります。金額があるほうが、相手も依頼を出しやすくなります。
NG例: 「仕事があればお願いします」。相手に判断を丸投げする言い方です。何を、どの形で頼めばいいか、相手には分かりません。
3つとも共通しているのは、「相談に乗らせてください」と頼む形を避けていることです。近況を伝える、質問をする、試してもらう金額を提示する。どれも主語は自分の行動で、相手に「乗るか乗らないか」を決めさせる形になっていません。切り出せない型から抜けるには、頼む言い方そのものを変えるほうが、勇気を出すより近道です。
依頼が来る前に決めておく3つのこと(ここが空いていると断られる)
依頼元に声をかけて反応があっても、ここが決まっていないと話が進みません。相手に聞かれてから考えるのではなく、依頼が来る前に紙の上で決めておきます。
何の相談に乗るのか
転職、社内のキャリア、復職、若手の定着など、まず1つに絞ります。「なんでも相談に乗ります」は、誰にも頼まれない言い方です。相手は「この人に何を頼めるか」が分かって初めて依頼を出せます。
どの形で受けるか
1回の面談、継続の伴走、企業の面談枠、講座など、形によって金額の出し方が変わります。形を決めないまま金額を聞かれると、その場で答えられず、あとで送る型になりやすくなります。
金額は口で言う前に紙に決める
聞かれてから考えると、その場の空気で下げてしまいます。形×金額の一覧を先に紙に作っておけば、聞かれた瞬間にそのまま答えられます。目安として、次のような表を自分用に作っておくと、口頭で聞かれても迷いません。
| 形 | 想定する相手 | 金額の決め方の考え方 |
|---|---|---|
| 1回の面談 | 初めて相談する個人 | 時間で区切って決める |
| 継続の伴走 | 転職活動が長引きそうな個人 | 回数のセットで決める |
| 企業の面談枠 | 人事・管理職からの依頼 | 稼働時間や枠数で決める |
| 講座・研修 | 団体・学校からの依頼 | 準備時間も含めて決める |
この表はあくまで考え方の型で、実際の金額は自分の経験や地域、相手との関係で変わります。大事なのは、聞かれてから決めるのではなく、先に決めておくことです。
持ち帰りチェック
- 何の相談に乗るか
- どの形で受けるか
- 金額はいくらか
- 所要時間はどれくらいか
- 守秘義務をどう説明するか
守秘義務があるから、実績の見せ方が他の職種と違う
相談の中身は実績として語れない
キャリアコンサルタントには、守秘義務・信用失墜行為の禁止義務が課されています。つまり「〇社の△さんの転職を決めました」というような、相談の中身に踏み込んだ紹介はできません。この点は、他の独立職種と実績の見せ方が根本的に違うところです。
この制約は、不便なだけのものではありません。相談者にとっては「この人は自分の話を外に持ち出さない」という安心材料になります。実績を語れないことを弱みと捉えるのではなく、信頼の土台だと捉え直すと、伝え方が変わってきます。
代わりに見せるもの
見せられるのは、相談の中身ではなく、どんな場面の相談を受けているか、どんな相手が多いか、受け方の流れです。「20代後半の転職相談を中心に受けています」「初回は現状の整理だけで終わることが多いです」といった、場面と流れの情報を見せます。
面談の進め方そのものも、見せられる情報です。「最初の30分は状況を聞くだけで、こちらから答えは出しません」というような、進め方の説明は守秘義務に触れずに書けます。相談者は、結果よりも先に「どう進むか」を知りたがっていることが多いので、ここを丁寧に書くだけでも安心材料になります。
NG例: 「〇社の△さんの転職を決めた」型の紹介。個別の相談内容の扱いについては、専門家に相談することをおすすめします。
実績ゼロでも名乗れる書き方
実績がゼロでも、場面で語れば名乗れます。文例はこうです。
転職を考えているけれど、何から整理すればいいか分からない方の相談を受けています。初回は状況を聞くだけの回でも構いません。
実績の数を並べるのではなく、受けている相談の場面を並べることで、読む人が自分を重ねられます。
独立してよくある3つの失敗|待つ・無料で続ける・1件で満足する
登録して待つ
登録先を増やしても、自分から相手を探す時間を取らなければ1年目は動きません。登録すること自体は間違っていませんが、「登録した安心感」と「依頼が来ている状態」は別物です。明日からの最小行動は、週に1人、資格を取ったことを伝える相手を決めて連絡することです。
実績づくりだからと無料を続ける
無料を続けると、相手は次を頼みにくくなります。「タダで受けてもらっているのに、また頼むのは申し訳ない」という遠慮が働くからです。実績づくりのつもりが、かえって依頼が止まる原因になります。明日からの最小行動は、次の相談から回数と金額を決めて依頼を受けることです。
1件目のあとに次を頼む一言がない
依頼が終わったときに「他に困っている方はいますか」と聞けるかどうかで、次につながるかが変わります。多くの人は、面談が終わった安心感でそのまま挨拶して終えてしまい、次につなげる一言を忘れます。明日からの最小行動は、面談の最後にこの一言を必ず添えることです。
今日やること|資格を取ったと伝える相手を10人書き出す
10人の選び方
前職の人事・管理職、養成講座の仲間、過去に相談を受けたことがある知人の順で書き出します。関係が近い順ではなく、あなたが資格を取ったことをまだ知らない順に並べるのがコツです。仲のいい友人よりも、少し疎遠になった元同僚のほうが、実は依頼元として動きやすいことがあります。日常的に連絡していない分、近況報告そのものが自然な連絡の理由になるからです。
送る文面
さきほどの近況報告の文面をそのまま使います。頼まない、売り込まない、最後は相手に聞く一言で締めます。文面を毎回考え直す必要はありません。同じ型を10人分、名前だけ変えて送っても失礼にはなりません。
返事が来なかったときの扱い
返事が来なくても、断られたわけではありません。今は用がないだけです。3か月後にもう一度、近況を送れば十分です。返事の有無を「向いているかどうか」の判定材料にしないことが、続けるうえで大事です。
切り出せない型から抜ける最小行動は、今日1人に近況を送ることです。これなら「頼む」を一回も使わずに動けます。
資格を取ったことは、すでに終わった事実です。あとに残っているのは、それを誰に伝えるかだけです。伝える相手を1人ずつ増やしていくことが、最初の依頼につながる一番の近道になります。
よくある質問
キャリアコンサルタントは資格を取れば独立できますか?
登録すれば名乗れる名称独占の資格です。ただし資格が依頼を運んでくるわけではなく、最初の依頼は資格を取ったと伝えた相手から来ます。
独立してすぐ個人向けの相談だけで仕事になりますか?
個人向けは一番あとに来やすい依頼元です。まずは前の職場・同業・団体の面談枠から声をかけていくのが順番の目安です。
実績がゼロのとき、どう名乗ればいいですか?
何の相談に乗るかを1つに絞って名乗ります。実績の数ではなく、受けている相談の場面で語ります。
守秘義務があるのに、実績はどう見せればいいですか?
相談の中身は書きません。相談の種類・相手の傾向・受け方の流れを書きます。個別の判断は専門家への相談を添えてください。
最初の依頼を無料で受けてもいいですか?
無料は相手が次を頼みにくくなります。回数と金額を先に決めて「試してもらう」形にするほうが、次につながりやすくなります。
参照した情報源
- キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント(厚生労働省)・確認日 2026-09-17
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