対面営業・商談

フリーランスエンジニアの営業|エージェント任せから、直接の紹介で取るまで

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このシリーズの全体像 フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

エージェント任せから抜け出せないのはなぜか

契約更新の1か月前になると、エージェントの担当者から次の案件リストが送られてきます。そのなかから選ぶ。今回もそうやって次の現場が決まりました。

来たら受ける型かもしれません。問い合わせや紹介が来るのを前提に予定が組まれていて、自分から相手を探す時間をカレンダーに取っていない状態です。営業が下手だからエージェントを使い続けているのではありません。案件が途切れたことがないので、自分から探す時間を一度も取ったことがないだけです。

この状態自体もエージェントを使うこと自体も、悪いわけではありません。ただ、使い続けることと、探す枠を一度も持たないことは別の話です。契約更新のたびに同じ選び方をしていると、単価も稼働条件も、いつも相手が決めた範囲の中から選ぶことになります。

ここで「営業を勉強してから動こう」と本を買う人がいます。ですが案件が途切れていないうちは、その本は開かれないまま本棚に残ります。勉強の順番を待っている間も、案件はエージェントから届き続けるからだと考えられます。

5年以上の経験があるフリーランスITエンジニアを対象にした調査では、案件獲得の経路は知人・友人からの紹介が41.8%で最多、フリーランス向けエージェント経由は34.5%でした。回答者の割合で見れば、紹介で仕事を取っている人のほうが多いということです。

この記事で渡す方法は1つだけです。いま稼働している現場で、すでに一緒に働いている人へ「次の話」を1回出すこと。新しい人脈を開拓する話ではありません。今の関係の中に、まだ出していない一言があるだけです。

エージェント経由と直接の紹介は、何が違うのか

5項目で並べます。

項目エージェント経由直接の紹介
探す手間ほとんどない。担当者が案件を持ってくる自分で声をかける必要がある
単価の決まり方エージェントが企業と交渉して提示してくる自分で伝えるか、相手の言い値に合わせるかを選べる
条件交渉の相手エージェントの担当者発注する会社や担当者と直接
案件が切れたときの次の当てエージェントに次を探してもらえる声をかけた相手の反応次第
稼働後の関係担当者経由でのやり取りが続く現場で一緒だった人との関係がそのまま続く

エージェントには実務的な利点があります。案件を探す時間が要らないこと、支払いサイトが比較的安定しやすいこと、条件交渉を代わりにやってくれること。対応の手厚さはエージェントや契約条件によって差があります。これは否定するところではありません。ここを我慢して直接契約に全部切り替える話をしているわけではありません。

表だけを見ると、直接の紹介のほうが得に見えるかもしれません。ですが実際に動くとなると、これまでエージェントに任せていた実務が全部自分に戻ってきます。ここを甘く見ると、案件は取れても回らなくなります。

一方で直接の紹介には弱点があります。支払いサイトや契約書の内容を自分で確認する必要があります。稼働がすでに埋まっていれば、声をかけられても受けられません。仕様の認識違いや支払いの遅れで揉めたときも、間に入ってくれる担当者がいません。すべて自分で対応することになります。

たとえば納品後に「思っていたものと違う」と言われたとき、エージェント経由であれば、担当者が間に入って調整してくれる場合があります(対応の範囲はエージェントによって異なります)。直接の紹介では、その場で自分が説明し、必要なら仕様のすり合わせからやり直すことになります。トラブル対応まで含めて自分の仕事になる、という前提を持っておくと、直接の紹介を受けたときに慌てません。

同じ調査では、企業との直接契約と過去の取引先からのリピートも、それぞれ37.3%を占めていました。エージェント経由と直接契約や紹介を併用している人が珍しくない、という実態として読めます。

全部を直接に切り替える話ではありません。稼働の一部を直接の紹介で埋められる状態を作っておくと、単価を下げて受ける場面が減ります。この調査はエンジニア向け転職エージェントを運営する会社が2025年12月に自社で行ったもので、対象は110名と多くありません。傾向として読む程度にとどめておくのがいいと思います。

単価を下げざるを得ないのはなぜか

同じ調査では、単価を下げざるを得なかった人が31.8%いて、妥協した理由の多くは「収入を確保する必要があったから」というものでした。交渉が下手だから折れているのではなく、収入が途切れる不安のほうが先に立っているということです。

交渉のタイミングで単価交渉力が変わることを示す対比図

これは在庫の問題です。稼働の空きが迫っていて、他に当てがない状態で交渉しているから、金額の話で折れてしまいます。同じ相手、同じ条件でも、いつ交渉するかで結果が変わります。手元にある選択肢の数が、言える言葉を決めています。

稼働終了の2週間前に条件の話をすると、「その金額だと厳しいです」と言いにくくなります。断ったら翌月の稼働がゼロになるかもしれない、という不安が背景にあると考えられます。同じ条件でも3か月前に話していれば、「その単価だと難しいです」と言えます。次の当てがまだ他にもある状態であることが理由として考えられます。

3か月前に話す内容も、2週間前に話す内容も、言っている単価は同じかもしれません。違うのは、聞いている側が「他にも当てがありそうだ」と感じるか、「ここで逃したら次がないかもしれない」と感じるかです。焦りは伝わります。伝わった焦りは、金額の話にそのまま跳ね返ってきます。

調査で「案件選定時に重視する項目」を尋ねたところ、単価の高さが47.3%で最多でした。重視しているはずなのに実際には下げてしまうのは、選ぶ順番が来る前に、条件交渉を始めてしまっていることが理由として考えられます。空きが迫ってから探し始めると、選ぶ側ではなく選ばれる側で交渉することになります。

今日やれることは1つです。いまの契約終了日をカレンダーに入れて、その60日前に「次の話を出す日」を置いてください。空きが迫ってから探すのではなく、まだ余裕があるうちに動き始める、というだけの違いです。

紹介は今の現場のどこから出るのか

紹介を頼む相手には優先順があります。①いまの現場で一緒に働いている社員や、他社から来ているフリーランス、②過去に常駐した現場の担当者、③前の職場の同僚、の順です。

紹介を頼む相手の優先順位を3段階で示した図

ここで動いているのは紹介営業の基本と同じ仕組みです。相手が思い出しやすく、勧めやすい状態を日頃からどれだけ作れているかで、声がかかるかどうかが変わります。

技術力を実際に見た人でないと、紹介はできません。ポートフォリオや職務経歴書を見た人ではなく、隣で仕事をしていた人が「あの人ならできる」と言えます。これは営業が得意かどうかとは関係ない話です。

優先順を①から③にしているのは、関係が新しいほど記憶が鮮明だからです。③の元同僚になると、一緒に仕事をした具体的な場面を相手が思い出すのに時間がかかります。声をかける頻度は多くなくていいので、思い出してもらえる状態を切らさないことのほうが大事です。

常駐先の社員が転職すると、転職先で人が足りなくなったときに「前の現場にいたあの人」を探すことがあります。ただ、連絡先を知らなければそこで探すのをやめてしまいます。連絡が取れる状態を残しておくかどうかで、声がかかるかどうかが決まります。元同僚についても同じです。プロジェクトが終わって連絡先アプリの中に埋もれたままだと、向こうも思い出しようがありません。

「まだ何も頼めることがないのに連絡していいのか」と迷う人もいます。ですが紹介は仕事の依頼ではなく、状況を知らせる連絡です。相手が今すぐ何か頼む必要はありません。あとで思い出してもらえれば十分です。

今日やれることは、いまの現場で名前と顔が一致する人を5人書き出すことです。そのうち、社外でも連絡が取れる手段(メール、SNS、個人の連絡先)があるのは何人か数えてみてください。ゼロという人も珍しくありません。

稼働が終わってからまとめて連絡するのはおすすめしません。関係が切れたあとの連絡は、営業の連絡に見えてしまいます。まだ一緒に仕事をしている間に、次の話を出しておくほうが自然に届きます。

稼働中に次の話はどう切り出すか

切り出す場面はリリース直後、フェーズの区切り、契約更新の話が出たタイミングです。仕事の話の流れの中で、ついでのように出します。改まって「相談があります」と切り出す必要はありません。

現場の人へ: 「この案件、◯月で一区切りになります。もし社内で人が足りない話が出たら、声をかけてもらえると助かります」

過去の取引先へ: 「以前◯◯の改修でお世話になりました。来月から少し手が空くので、もし動いていない案件があればお声がけください」

元同僚へ: 「そちらの開発、いま人足りてます? ◯月から週2〜3日なら動けます」

担当者が異動や転職をするタイミングも一言を出しやすい場面です。 「異動されるんですね。もしよろしければ、後任の方にもご挨拶させてください」 新しい担当者に顔を覚えてもらえるかどうかで、次に声がかかる確率が変わります。

言わないほうがいいのは「何でもやります」「単価は相談で」です。何ができて、いつから、どれくらい動けるかの3つだけを入れてください。条件をぼかすほど、相手は声をかけにくくなります。

頼むのが気が引ける場合は、「仕事をください」ではなく「空く時期を伝える」だけにしてください。相手はそれを依頼ではなく情報として受け取ります。忘年会や懇親会のような場でも、この一言だけなら自然に言えます。

面談の自己紹介は何を話せばいいか

よくあるのは、言語やフレームワーク、参画した年月を時系列で全部話してしまうパターンです。5分かかって、相手は結局この人に何を頼めるのか分からないまま終わります。面接官が知りたいのは経歴の全体量ではなく、今回の募集に当てはまるかどうかです。

自己紹介で話す順番を3段階で示すフロー図

話す順番を変えてください。①今回の募集で自分が担当できる範囲を先に言う、②それを裏付ける案件を1つだけ、規模・立場・やったこと・結果の順で話す、③残りは「他は経歴書に書いた通りです」で渡す、の3段階です。

悪い例: 「Javaを8年、その後Go、AWSも一通り、直近はSRE寄りのこともやってまして……」

良い例: 「決済まわりの改修とテスト整備が中心でした。直近は10人規模のチームで、決済APIのリファクタとテストの自動化を担当して、リリース後の障害対応の件数が目に見えて減りました」

面談の前に、募集要項を読んで「今回はどの工程で困っているか」を自分なりに予想しておくと、自己紹介の順番を組み立てやすくなります。予想が外れていても構いません。的外れな仮説を持って質問するほうが、白紙で聞くよりも会話が具体的になります。

早口で経歴を並べるほど、聞いている側は情報を追うだけで精一杯になります。担当できる範囲を一文で言い切ったあとは、少し間を置いて相手の反応を見てから続けると、一方的な説明になりません。

聞き返す質問も2つ持っていってください。「今いちばん詰まっている工程はどこですか」「入った人に最初の1か月で何をしてほしいですか」。この2つがあると、話が自分の説明だけで終わりません。

面談は選ばれる場であると同時に、こちらが現場を見る場でもあります。質問を持たずに聞かれたことにだけ答えていると、受け身な印象になります。

3か月で直接の当てをどう増やすか

1か月目は、いまの現場と過去の現場で連絡が取れる人を10人リスト化します。会社名、立場、最後に話した時期だけ書けば十分です。10人に届かない場合は、過去のプロジェクトの議事録やメールの署名を見返すと出てきます。それでも5人に届かないときは、「一緒に仕事をした人」ではなく「同じ現場にいた人」まで範囲を広げてみてください。直接の担当ではなくても、名前と顔が一致していれば十分です。

3か月で直接の紹介を増やす進め方を示すタイムライン図

2か月目は、稼働中の現場で「次の話」を1回出します。出す相手は1人でかまいません。反応があったかどうかだけ記録してください。

3か月目は、過去の取引先2社に近況の連絡を出します。案件を頼む連絡ではなく、「◯月から手が空きます」という一報だけで足ります。

記録は4列で十分です。名前、どこで一緒だったか、最後に連絡した日、次に連絡する月。ツールは何でも構いません。スプレッドシートでもメモアプリでも動きます。

うまくいかないときは、返事が来ていないのか、そもそも連絡を出せていないのかを見分けてください。ほとんどの場合は後者です。出す前に止まっていることのほうが多いです。

エージェントとの契約を切る必要はありません。並行して直接の当てが1本増えるだけで、稼働の空きが迫った状態で単価の話をする場面が減ります。それだけで、条件面で折れる回数は変わってきます。

3か月後、次の契約更新のときにエージェントからリストが届いたら、今度はその中に自分で動いた選択肢も並んでいるはずです。選ぶだけの更新から、選べる更新に変わります。

よくある質問

フリーランスエンジニアはエージェントを使わないほうがいいですか

どちらか一方を選ぶ話ではありません。エージェントは案件を探す時間と条件交渉を肩代わりしてくれます。並行して直接の当てを1〜2本作っておくと、稼働の空きが迫ったときに単価を下げて受ける場面が減ります。

フリーランスエンジニアの案件はどこから来ることが多いですか

5年以上の経験があるフリーランスITエンジニアを対象にした調査では、知人・友人からの紹介が41.8%で最多、フリーランス向けエージェント経由は34.5%でした。企業との直接契約と過去の取引先からのリピートも、それぞれ37.3%を占めていました。ただしエンジニア向け転職エージェントを運営する会社が2025年12月に自社で行った調査で、対象は110名と多くはないため、傾向として読む程度にとどめたいところです。

フリーランスエンジニアの面談で自己紹介は何を話せばいいですか

経歴を時系列で並べないことです。今回の募集で担当できる範囲を先に言い、それを裏付ける案件を1つだけ、規模・立場・やったこと・結果の順で話します。残りは経歴書に任せて構いません。

営業したことがないのですが、何から始めればいいですか

新しい相手を探すところから始めなくて大丈夫です。今の現場と過去の現場で一緒に働いた人を10人書き出し、そのうち社外で連絡が取れる人が何人いるかを数えるところから始めてください。技術力を実際に見た人しか紹介はできません。

稼働中に次の仕事の話をするのは失礼になりませんか

「仕事をください」と頼む必要はありません。「◯月で一区切りになります」「◯月から少し手が空きます」と時期を伝えるだけで十分です。相手はそれを依頼ではなく情報として受け取ります。

参照した情報源

  1. 【フリーランスエンジニアの案件獲得調査】案件獲得「知人紹介」が41.8%で最多、3人に1人が「単価を下げざるを得なかった」経験あり~自由な働き方と安定収入、両立のカギとは~(株式会社キッカケクリエイション)・確認日 2026-09-01

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