やたの視点

名前も忘れた人が、1億のスターを生んだ

名前も忘れた人が、1億のスターを生んだのイメージイラスト

代理店ビジネスをやっていると、ときどき説明のつかないことが起きます。今日はそのなかで、私がいちばん忘れられない話を書きます。

以前、ある商材の代理店網を広げていたときのことです。参加してくれた人のひとりに、正直なところ印象の薄い方がいました。紹介してくれた案件は1件だけ。それも成約しませんでした。数字の上では、何の成果もなかった人です。

ただ、その方があるとき「面白がりそうな社長がいるから」と、ひとりの経営者を引き合わせてくれました。

会ってみると、地域で影響力のある会社の社長でした。商品を説明すると「これはいいね、売れるよ」と言って、自社の営業を7人つけて参画してくれた。立ち上がりには何ヶ月もかかりましたが、軌道に乗ってからは一気に伸びて、最終的にこの会社だけで約1億円を売りました。私たちのネットワークで間違いなくスターと呼べる存在です。

で、ここからが本題です。

そのスターを連れてきてくれた最初の方の名前を、私は思い出せません。

冗談みたいな話ですが、本当です。それくらい薄いご縁でした。会ったのは数回、成約はゼロ。それでも、その人がいなければ1億はなかった。この体験は、私の人との付き合い方を根本から変えました。


社会学に「弱いつながりの強さ」という有名な研究があります。転職や新しい機会は、親友よりも「たまにしか会わない知人」からもたらされることが多い、というものです。理屈はシンプルで、近い人は自分と同じ世界を見ているけれど、遠い人は自分の知らない世界とつながっているからです。

代理店ビジネスは、この理屈がそのまま数字になって表れる世界です。目の前の人が売ってくれるかどうかは、実はそれほど重要ではありません。その人の後ろにいる誰か、そのまた後ろにいる誰かが、思いもよらない成果を連れてくる。私の1億は、二つ先の縁から来ました。

だから私は、成果の出ていない人との縁を「見込みがない」と整理することを、やめました。

紹介が1件も出ていない人にも、近況を聞く。商品のアップデートを伝える。たまに会いに行く。それは優しさというより、合理的な判断です。どの縁の先にスターがいるかは、誰にも分からないからです。

もしあなたがいま、代理店や紹介のネットワークを育てている側なら、数字が出ていない人への接し方を一度見直してみてください。そして自分が紹介する側なら、「自分は大した紹介はできない」と思う必要はまったくありません。あなたの一本の紹介が、二つ先で誰かの1億になっているかもしれない。

薄い縁を、切らないでください。私の商売でいちばん大きな果実は、いつも薄い縁の先になっていました。

— やた

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