対面営業・商談
名刺の渡し方|立ったまま・座ったまま・立食での違い
このシリーズの全体像 対面営業の作法・人脈術 完全ガイド
名刺を出す手が止まるのは、作法を知らないからではない
名刺交換は立って行います。机越しではなく、へだたりがない場所まで歩み寄り、名刺入れの上に名刺をのせて両手で持ち、胸の高さで相手に差し出す。ここまでが基本の所作で、覚えること自体はそう多くありません。
それでも名刺入れを持つ手が止まる人がいます。理由は、持ち方や角度を知らないからではありません。名刺を渡したあと、何を言うか決めていないから、手元だけが不安になるのです。
切り出せない型かもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型です。所作さえ完璧にすれば会話が続くと思い込み、練習の的が手つきのほうに向かっている状態だと思います。
交流会の会場で、名刺入れを握ったまま話しかける相手を探して壁際を2周する。渡す作法は覚えたのに、渡したあとの3秒が空くのが怖い——そんな場面に覚えがある方もいるはずです。
先に言っておきます。名刺交換の場で仕事の話をする必要はありません。渡した直後にやることは、相手の名刺を1行読んで質問を返すだけで十分です。この記事の後半で、その質問の作り方まで具体的に置きます。
この記事では、立ったまま・座ったまま・立食の3場面の手順を先に整理し、最後に「渡したあとの5秒」を1つの型として置きます。手つきの練習で終わらせず、渡したあとまでをワンセットで覚えてください。
まず場面別の早見です。
| 場面 | 立つ位置 | 手の使い方 |
|---|---|---|
| 立ったまま | 机を挟まず相手の正面 | 両手で名刺入れごと持ち、胸の高さで差し出す |
| 座ったまま | 立ち上がってテーブルの角を回り込む | 何もない場所まで移動してから両手で渡す |
| 立食 | 皿とグラスを置ける位置 | 皿とグラスを置き、両手を空けてから渡す |
対面で信頼を積む所作の全体像は対面営業の作法にまとめています。名刺交換はその入口の1工程です。
立ったままの基本形を、手の動きで分解する
手順は5つです。

- 名刺入れから名刺を取り出す
- 名刺入れを座布団のようにして、名刺をその上にのせる
- 相手が読める向きに回す
- 両手で持ち、軽くお辞儀をしながら胸の高さで相手の名刺入れに向かって差し出す
- 目下側から名乗る
向きの基準は具体的に覚えておくと迷いません。自分から見て文字が逆さまになっているのが正しい向きです。差し出す直前に回そうとすると手元が乱れるので、名刺入れから出した時点で相手向きにしておきます。
高さの基準は胸の位置です。腰の高さから下手に出す渡し方も、顔の高さまで持ち上げる渡し方も、どちらも相手が受け取りにくくなります。慣れないうちは、名刺入れを持った両手をみぞおちの前で構えてから相手に近づくと、高さがぶれにくくなります。
やりがちなNGを並べます。
- 片手で出す
- 指で社名や氏名を隠す
- 名刺入れを持たず、名刺だけ抜いて渡す
名乗り方も事前に決めておくと安心です。「株式会社◯◯の◯◯です」のように、屋号ではなく個人名を最後に置きます。独立していて肩書きが説明しづらい人ほど、名乗りの一文を先に決めておいたほうが、その場で言葉に詰まりません。
お辞儀は深く沈める必要はありません。名刺を胸の高さに保ったまま、頭だけ軽く下げれば十分です。深く下げようとして名刺の位置が下がると、相手の胸元まで届かず受け取りにくくなります。名乗りの一文は、会場に向かう電車の中や訪問先のエレベーターの中で、一度声に出しておくと本番で詰まりにくくなります。
座ったままがNGな理由と、応接室での動き方
座ったままの名刺交換はNGです。理由は感情論ではなく構造の話です。これから交流が始まる場面で、テーブル越しに名刺を渡すのは、わざわざ間に障壁をつくっているのと同じで、相手に対して失礼にあたります。

動き方は次の手順です。
- 椅子から立つ
- テーブルの角を回り込み、相手の正面に立つ
- 互いの間に何もない位置で交換する
応接テーブルなら角を回るだけで2歩です。それだけで机越しを避けられます。
タイミングも実務として決めておきます。着席してからカバンの中で名刺入れを探すと動きが止まるので、部屋に入る前に名刺入れを手に持つか、上着の内ポケットに移しておきます。
避けたいNGはこの3つです。
- 相手が座ったままなので合わせて座って渡す
- 立ち上がったのにテーブル越しに腕だけ伸ばす
- 自分の席の前に立ち、相手が来るのを待つ
相手が先に座ったまま名刺を出してきたときは、相手の姿勢を正そうとせず、こちらが立って回り込みます。相手を動かさないのも配慮のうちです。
初めて訪問する会社では、受付や応接室の担当者に案内されて席に着くまでの動きが読めません。案内の途中で相手と鉢合わせることもあります。そのときも原則は同じで、座る前に名刺を交換してしまってかまいません。着席は交換のあとと決めておけば、テーブル越しになる場面そのものを避けられます。
立食・交流会は「手をどう空けるか」で決まる
原則はひとつです。右利きなら皿とグラスを左手に重ねて持ち、右手を食事や名刺交換、握手に使えるようにしておきます。皿とグラスを両手で持つのではなく、片手で持つのがマナーです。

会場に入った時点で持ち物を減らしておきます。カバンはクロークか足元へ。名刺入れは右手ですぐ取れる位置——上着の右ポケットか、右手側から取り出せるカバンの外ポケット——に固定します。
名刺交換になったら、皿とグラスを一度テーブルに置いてから両手で渡します。片手渡しをしないための置き場所は、会場で立つ位置を決める段階で確保しておくものです。
起こりやすいNGです。
- グラスを持った右手で握手や名刺を受ける
- 皿を持ったまま片手で名刺を出す
- 両手がふさがったまま「すみません」と言いながら中腰で交換する
どうしても近くに置き場がない場面もあります。そのときの一言も決めておきます。「失礼します、置いてきます」と言って一度離れ、置いてから戻る。離れて戻るのは失礼ではなく、両手で渡すための段取りです。
立食での名刺交換は、渡したあとが本番です。名刺止まりで終わらせないために、相手の名刺を1行読んで質問を1つ返すところまでをセットにしておきます。
主催者に別の参加者を紹介されるタイミングは、こちらの都合では選べません。皿を持ったまま声をかけられたら、「少しお待ちください」と一言添えてから置きに行けば十分です。慌てて片手で受けるより、数秒待たせるほうが印象を損ないません。
順番の決め方:独立すると、いつも自分が先に出す側になる
ここがこの記事の独自の角度です。名刺交換は受注側が発注側に対して先に差し出します。独立した個人は、相手が誰であってもほぼ常に受注側になります。複数人での順番など基本ルールの詳細は名刺交換の順番マナーにまとめたので、ここでは独立して働く人特有の話に絞ります。
会社員時代との違いを具体的に書きます。会社にいたころは、上司や先輩が先に名刺を出し、自分は横で順番を待てばよかったはずです。独立するとその盾がなくなり、毎回自分が最初に頭を下げる形になります。
ここで解釈を入れておきます。先に出すのはへりくだりではありません。目下側から先に名乗るのは順番のルールであって、値打ちの上下を表明する行為ではないのです。ここを取り違えると、名刺を出す動作そのものが嫌になっていきます。
「自分ばかり先に頭を下げている」と感じるとしたら、それは順番のルールを、値打ちの上下と混同しているからだと思います。受注側が先に出すのは、道を譲るのと同じ段取りの話です。相手の役職や実績とは関係なく、その場にいる全員が同じルールに従っているだけです。
渡したあとの5秒で、名刺止まりから抜ける
名刺交換の目的は、名刺を渡すことではありません。次に会う口実をつくることです。所作が完璧でも、渡して終われば、その名刺は財布の中の紙で終わります。

受け取った名刺を1行読みます。会社名の下の事業内容、部署名、住所の地名——どれでもかまいません。読んで出た疑問を、そのまま質問にします。「◯◯もやられているんですね、いつ頃から始められたんですか」というように。
質問は仕事の売り込みではありません。切り出せない型の人ほど「頼まなければ話しかける資格がない」と思い込みがちですが、頼まずに聞くだけで会話は続きます。
別れ際の一言も、1つだけ決めて持っていきます。「今日いただいた話、もう少し詳しく伺いたいので、また改めてご連絡してもいいですか」のように。その場で考えようとするから言えなくなります。
渡した直後のNGです。
- 渡した直後に自分の実績説明を始める
- 名刺を見ずにそのまま名刺入れにしまう
- 「よろしくお願いします」だけで次の相手に移る
名刺交換の練習は、手つきではなく、渡したあとの質問1つと別れ際の一言1つを事前に決めておくことに使うものです。
事前に埋めておくひな形を置きます。
- 相手の名刺で読む場所:______(事業内容/部署名/地名のどれか)
- そこから返す質問:「もされているんですね、」
- 別れ際の一言:「今日いただいた______の話、もう少し詳しく伺いたいので、______してもいいですか」
交流会や商談の前に、この3行を紙かメモアプリに書いておきます。当日は名刺の内容に合わせて空欄を埋めるだけなので、その場で言葉を組み立てる必要がなくなります。
よくある想定外と、その場での立て直し方
名刺を切らした。 その場で謝り、口頭で社名と名前を名乗り、相手の名刺だけ受け取ります。後日、お礼の連絡に名刺を同封するか、次に会うときに必ず渡します。「あとで送ります」と言ったら、日付まで決めておきます。
相手が先に差し出してきた。 順番のルール(名刺交換の順番マナー参照)通りでなくても、「申し遅れました」と言いながら受け取り、自分の名刺も出します。順番を訂正しようとして動きを止めるほうが、場が固まります。
名刺入れが見つからない。 カバンを探る時間が長いほど気まずくなるので、探す前に「失礼します」と一言添えます。次からは入れる場所を1か所に固定しておきます。
名刺が折れている・汚れている。 渡す前に確認し、状態が悪ければ使いません。名刺入れには常に予備を入れておき、交流会に行く日は入れ直しておきます。
立ったまま長話になり、渡した名刺が手元でぐしゃぐしゃになる。 受け取った名刺は、会話が終わったら名刺入れにしまいます。片手で握り込まないようにします。
対応でやりがちなNGです。
- 切らしたことをごまかして名刺を受け取るだけで済ませる
- 折れた名刺を「すみません」と言いながら渡す
- その場で名刺に書き足す
どの想定外にも共通するのは、その場で完璧に取り繕おうとしないことです。想定外が起きたときほど、次にどうするかを一言添えて別れるほうが、あとの関係に響きません。
よくある質問
名刺は座ったまま渡してもいいですか?
NG。立ち上がってテーブルを回り込み、互いの間に何もない位置で渡します。テーブル越しは間に障壁をつくるのと同じで、相手に対して失礼にあたります。
名刺交換はどちらから先に出すのが正しいですか?
受注側が発注側に先に差し出します。担当者個人の役職には左右されません。目下側から名乗るのが基本なので、独立している場合はほぼ毎回自分が先になります。
立食パーティーで飲み物と皿を持っているときはどうしますか?
右利きなら皿とグラスを左手に重ねて片手で持ち、右手を空けておきます。名刺交換になったら一度テーブルに置き、両手で渡します。
複数人で名刺交換するときの順番は?
役職の高い人から順に交換し、同等の立場なら年齢や経験を考慮して決めます。双方複数人なら役職が上の人同士から進めます。
名刺を切らしてしまったときはどうすればいいですか?
その場で謝って口頭で社名と名前を名乗り、相手の名刺は受け取ります。後日のお礼連絡に同封するか、次回必ず渡します。送ると言うなら日付まで決めておきます。
参照した情報源
- 名刺交換のマナーを徹底解説!基本の渡し方・受け取り方やNGを解説|クレジットカードなら、三菱UFJカード(三菱UFJニコス(三菱UFJカード))・確認日 2026-08-09
- 名刺交換のビジネスマナー 基本と順番・信頼への影響・場面別チェック・定着のポイント(リクルートマネジメントソリューションズ)・確認日 2026-08-09
- 立食パーティーの基本マナー完全ガイド | 服装から食事、交流まで(ホテルメトロポリタン(池袋)公式)・確認日 2026-08-09
- 正しい名刺交換の方法は?名刺受け渡し時のマナーをおさらい|東京名刺センター|東京オフィスサービス(東京名刺センター(東京オフィスサービス))・確認日 2026-08-09
- 名刺交換のマナーを解説!渡し方・受け取り方、NG例や想定外の対処法も | CANVAS(マイナビエージェント(CANVAS))・確認日 2026-08-09
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