対面営業・商談

フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするか

フリーランスの営業の仕方|営業を教わらずに独立した人が、まず何をするかのイメージイラスト

「営業が苦手だから仕事が来ない」のではない。会社員のときは、会う相手が用意されていた

先に結論を書きます。フリーランスの営業の仕方で最初にやることは、新しい人を探すことではありません。会ったことのある人をA・B・Cに分けて、依頼ではなく近況を伝える1通目を出すことです。ここから、その手前で足が止まる理由と、具体的な手順を順番に説明します。

会社員と独立後の工程比較。独立すると「相手を用意する」工程だけが空席になる図

案件が終わった翌週、予定表が白いままの日

納品を終えた朝、コーヒーを飲みながら予定表を開くと、その週の欄が白いままだと気づきます。次の仕事の当てがないわけではなく、正確には「誰に連絡すればいいか」が思い浮かばない状態です。会社員のときは、こういう朝は来ませんでした。担当が割り振られ、次の案件は勝手に降ってきていたからです。

人見知りだからでも、売り込みが下手だからでもない

ここで「自分は営業が苦手だから」と結論を出しやすいのですが、それは違います。会社員時代は、会う相手を用意する仕事を、別の誰かがやっていました。営業部が問い合わせを受け、上司が同行先を決め、既存の取引先リストが会社の資産として残っていました。

独立すると、その一工程だけが空席になります。腕の問題ではなく、工程がひとつ抜けているだけです。

目の前優先型かもしれません

目の前優先型かもしれません。営業がいつもあとまわしになり、自分が動かないと仕事が入らない型です。予定表が白いのは、意志が弱いからではありません。

目の前の納品を優先するほど、次を仕込む時間が後ろに回るからです。今日やるのは、決意を新たにすることではなく、このあと書く名簿を紙に書き出すことだけで十分です。

独立の理由を見ても、自分の裁量で仕事をするため73.6%、働く時間・場所を自由にするため69.0%が上位で、収入を増やすためは33.3%です。売上を伸ばすことを一番の動機にして独立した人ばかりではありません。だから営業が予定に入っていないのは、意志が弱いからではなく、最初からそこに枠がなかっただけです。

「まずマインドを変えましょう」「売り込みではなく価値提供です」という書き出しの記事はよく見かけますが、こうした記事は抜けている工程そのものを埋めないので、読んでも何も変わりません。埋めるべき工程は一つです。新しい人に売り込む前に、会ったことのある人をA・B・Cに分けて、依頼ではなく近況を伝える1通目を出すことです。

最初にやるのは新規開拓ではなく、会ったことのある人を全部書き出すこと

数字が示す順番

仕事の獲得経路を棒グラフで比較。人脈と取引先が上位で、新規系は下位

仕事の獲得経路は、人脈(知人の紹介含む)72.8%、過去・現在の取引先61.0%、自分自身の広告宣伝活動33.4%、エージェントサービス25.3%、クラウドソーシング23.3%の順です。さらに「最も収入が得られる経路」を1つだけ選ぶ設問でも、1位が人脈35.6%、2位が過去・現在の取引先29.9%です。稼ぎにつながっている経路の上位2つは、どちらも「すでに会ったことのある人」です。

30分でやる手順

新しい人と知り合う前に、今日30分で次をやります。

  1. 名刺入れと名刺アプリを開く
  2. スマホの連絡先を開く
  3. メールの送信済みフォルダを1年分さかのぼる
  4. SNSの相互フォローを開く
  5. そのうち「実際に会って話したことがある人」だけを1行1名でスプレッドシートに写す

判断に迷ったら残します。目標は件数を増やすことではなく、4か所を一度ずつ開き切ることです。

名簿がないと、営業は毎回いちからになる

連絡先が4か所に散っていると、誰に連絡したか思い出す作業からやり直しになります。だから忙しい時期になるほど真っ先に消えます。1枚に集めた時点で、次からは「思い出す」ではなく「開くだけ」に変わります。

新規開拓から始めたくなりますが、それはリストを買う、面識のない会社にDMを一斉送信する、SNSのフォロワーを増やしてから連絡しようとする、といった動きにつながりがちです。どれも、すでに手元にある上位2つの経路を使わずに、下位の経路から手をつけている状態です。

この考え方をもう少し掘り下げたい人は→紹介営業のはじめ方 完全ガイド

書き出した名簿を3つに分ける(A・B・C)

分ける基準は「一緒に仕事をしたか」「会ったか」の2つだけ

名簿をA・B・Cの3列に分ける図。分ける基準は仕事をしたか・会ったかの2つ

書き出した名簿を、次の3つに分けます。

  • A 一緒に仕事をしたことがある人(過去・現在の取引先。獲得経路61.0%、最も収入が得られる経路として2位29.9%)
  • B 会って話したが、まだ一緒に仕事はしていない人
  • C 一度きりの場や大人数の場で会い、相手が自分を覚えていないかもしれない人

好き嫌いや「脈がありそうか」では分けません。基準は事実として確認できることだけです。

分ける理由——出す言葉が正反対になるから

Aには「その後どうですか」がそのまま成立します。Bには、自分がいま何をやっている人かをもう一度渡す必要があります。Cには、まず自分が誰かを思い出してもらう一文が要ります。同じ文面を全員に送ると、Cには唐突すぎて止まり、Aには近況も聞かずに用件だけ送るような失礼にあたります。

持ち帰れる表

区分相手から見た自分1通目の目的絶対に書かないこと次にやること
A一緒に仕事をした相手近況の共有「お仕事があれば」だけの一文相手の直近の動きを1つ調べる
B会ったが仕事はまだの相手自分の仕事をもう一度伝える商品説明を並べる会った場の話題を1つ思い出す
C覚えていないかもしれない相手思い出してもらう返信の催促日付・場所を先に書く

名簿は多いほうがいいわけではありません。まず各グループから3件だけ印を付けます。全員に連絡しようとすると、その日のうちに手が止まります。

1通目に書くのは依頼ではなく近況——A・B・Cそれぞれの文例

Aへの1通目(一緒に仕事をした相手)

◯◯の件から半年経ちました。あのあと△△は動いていますか。こちらは最近、□□の仕事が増えていて、◯◯さんのときにやった××をそのまま使っています。またお手伝いできることがあれば声をかけてください。

仕事の依頼を頼まず、いまの自分が何をやっているかだけを置きます。

Bへの1通目(会ったが仕事はまだ)

◯◯の集まりでご挨拶した△△です。あのとき話に出ていた□□、その後いかがですか。私はいま××をやっていて、△△のような場面でよく相談をもらいます。

会った場を先に書き、自分の仕事は最後に1行だけにします。

Cへの1通目(覚えていないかもしれない相手)

◯月の△△でご一緒した□□です。名刺だけのご挨拶になってしまいました。もし覚えていなければ申し訳ありません。◯◯の仕事をしています。

思い出してもらう情報(日付・場所・話題)を先頭に置き、返信を求めません。

NG文例と、それが止まる理由

「お仕事があればぜひお願いします」だけの文は、相手に「いま案件があるか探す」という宿題を丸ごと渡しています。相手は探せないので返事が書けず、結果として返信が来ません。返事が来ないのは断られたのではなく、書くことがなかっただけ、という読み方もできます。

頼んだ瞬間に対等でなくなる気がして手が止まる人は少なくないと思います。1通目は頼まなくていいものです。近況を伝えるだけでも、名簿は動きます。

ホームページより先に用意するのは、名刺と自己紹介1枚

実際に使われている道具の順番

営業ツールの利用率は、ビジネス用メールアドレス62.8%、名刺62.6%、SNSアカウント49.3%、ホームページ38.8%、ポートフォリオ・冊子23.8%、自己紹介資料(PDF)21.5%の順です。上位に来ているのは、会った相手にその場で渡せるものと、返事を受け取れる場所です。

自己紹介1枚に書く4項目

A4横1枚のPDFに、次の4つだけ書きます。

  1. 何ができるか(作業名ではなく、相手の困りごとの言葉で)
  2. いくらか(最小の受け方と目安の幅)
  3. どこまでやるか(引き受ける範囲と、やらない範囲)
  4. いまの空き(今月あと何本受けられるか)

これがあると、Bへの2通目で送るものが決まります。

先に作りたくなるが、後でいいもの

屋号のロゴ、ホームページ、実績が3件しかないポートフォリオサイト。作っている間は営業をしている気持ちになれますが、作っている間、名簿は1件も動きません。ホームページの利用率は38.8%で、名刺・メールアドレスより下です。

自己紹介1枚に、経歴と受賞歴と対応可能技術を全部詰め込みたくなりますが、それはやりません。詰め込むほど、読む人が自分の場面を重ねる余白がなくなります(実績並べ型に近づきます)。

クラウドソーシングとエージェントは「実績と時間を買う道具」として位置づける

「みんな使っている」ではない

仲介事業者・仲介サービスについて、主に利用している12.0%、利用することもある15.3%に対し、利用していない(専ら依頼者から直接仕事を受けている)が72.7%です。使っていない人のほうが多数派です。使わない選択も普通のことです。

使う理由の内訳が、そのまま使いどころ

仲介を利用する理由は、仕事を探す手間や時間を節約できるため41.9%、実績が少なく自身の営業で案件を獲得するのが困難なため35.4%、スキルとマッチした案件を探しやすいため34.0%、自分では取引が難しい相手(大手・遠方)とも取引できるため32.6%です。時間・実績・接点の3つを買う道具だと考えると、使うかどうかを判断しやすくなります。

使うと決めたときの一手間

獲得経路として最も収入につながっているのは、人脈35.6%と過去・現在の取引先29.9%です。仲介で受けた仕事の担当者は、案件が終わった時点でAの名簿に足します。ここをやらないと、単価も関係も毎回ゼロから始まることになります。

仲介サービスの登録とプロフィール作成に2週間かけ、その間、名簿への連絡を1件も出さない、という進め方はおすすめしません。登録作業は営業をした気になれますが、名簿を動かす作業とは別物です。

営業をあとまわしにしないための、週30分の枠

取引先が1社という人は少なくない

週30分の営業枠の中身を時間配分で示した図。名簿5件・連絡1件・記録・予備

1年間に取引する依頼者数は、1社30.1%、2社17.1%、3社15.2%、5社以上31.6%です。取引先が1社だと、その仕事が終わった日に収入がゼロになります。営業をあとまわしにできる期間は、いまの案件が続いている間だけです。

30分の中身を先に決めておく

毎回考えるとやらなくなるので、中身を先に固定します。

  1. 名簿を上から5件見る(3分)
  2. そのうち1件に連絡を出す(15分)
  3. 出した相手と日付と内容を名簿に1行書く(2分)
  4. 残り10分は予備

この4つを名簿の1枚目に書いておくと、毎回いちから考えずに済みます。

動かさない条件を1つだけ決める

カレンダーに固定の30分を入れ、「案件が忙しいときは動かさない」と決めます。忙しいときに消えるのが目の前優先型の正体なので、動かすかどうかの判断そのものを、最初に手放します。逆に、体調不良と納品日当日は飛ばしていいことにします。

3か月続けたときに見るのは、返信率でも売上でもありません。「連絡を出した件数」と「取引先が何社になったか」です。件数は自分でコントロールできますが、返事は相手のものです。

よくある質問

フリーランスは営業しないと仕事が来ませんか?

待っているだけで続く人もいるが、獲得経路の上位は人脈72.8%と過去・現在の取引先61.0%で、どちらも人が動いた結果。1年間の取引先が1社という人が30.1%なので、今の仕事が終わると同時に止まる形になりやすい。新規開拓ではなく、会ったことのある人への連絡から始めれば足りることが多い。

営業をやったことがない未経験でも仕事は取れますか?

仲介サービスを使う理由の35.4%が「実績が少なく自身の営業で案件を獲得するのが困難」なので、同じ状態の人は多い。腕の問題ではなく、会う相手を用意する工程を習っていないだけ。最初にやるのは売り込みの練習ではなく、名刺・連絡先・送信済みメール・SNSから会ったことのある人を書き出すこと。

クラウドソーシングだけで食べていけますか?

仲介サービスを利用していない人が72.7%、最も収入が得られる経路としてクラウドソーシングを挙げた人は6.0%。時間と実績と接点を買う道具としては有効だが、そこで出会った担当者を「過去・現在の取引先」の名簿に足していかないと、毎回ゼロから始まる。

知り合いに営業するのは気が引けます。どうすればいいですか?

1通目で仕事を頼まなくていい。書くのは近況ひとつと、いま自分が何をやっているかの1行だけ。頼んだ瞬間に対等でなくなる気がして止まる人は多いが、近況を伝えるだけでも名簿は動く。「お仕事があればぜひ」だけの文は、相手に案件を探す宿題を渡すので返事が書けなくなる。

営業メールの1通目には何を書けばいいですか?

相手が3つのどれかで変わる。一緒に仕事をした相手には案件名と経過時間から、会っただけの相手には会った場と当時の話題から、覚えていないかもしれない相手には日付・場所・自分の名前から書き出す。共通するのは、返信を求めず、依頼をしないこと。

ホームページは作ったほうがいいですか?

営業ツールの利用率はビジネス用メールアドレス62.8%、名刺62.6%に対し、ホームページは38.8%。先に用意するなら、その場で渡せる名刺と、何ができる・いくら・どこまで・いまの空きを書いたA4横1枚の自己紹介PDF。ホームページ作りは営業をしている気持ちになれるが、その間、名簿は動かない。

参照した情報源

  1. フリーランス白書2025(第1章 フリーランス実態調査/仕事獲得経路)(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)・確認日 2026-08-23
  2. フリーランス白書2025(活用している営業ツール)(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)・確認日 2026-08-23
  3. 令和3年度フリーランス実態調査結果(Q5 仲介事業者・仲介サービスの利用)(内閣官房新しい資本主義実現会議事務局・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁)・確認日 2026-08-23
  4. 令和3年度フリーランス実態調査結果(Q55 仲介事業者を利用する理由)(内閣官房新しい資本主義実現会議事務局・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁)・確認日 2026-08-23
  5. 令和3年度フリーランス実態調査結果(Q12 通常1年間に取引する依頼者数)(内閣官房新しい資本主義実現会議事務局・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁)・確認日 2026-08-23
  6. フリーランス白書2025(フリーランス・パラレルキャリアを選んでいる理由)(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)・確認日 2026-08-23

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