対面営業・商談

お酒が飲めない人の会食|断り方と注文の仕方

お酒が飲めない人の会食|断り方と注文の仕方のイメージイラスト

このシリーズの全体像 対面営業の作法・人脈術 完全ガイド

お酒が飲めないことが問題なのではなく、その場で言い出せないことが問題

メニューが回ってきた3秒が一番きつい

店に着いて席につき、幹事が「とりあえず生で大丈夫ですか」と全員を見回す。あの3秒が一番きついという声をよく聞きます。ここで「あ、はい」と流してしまうと、あとから静かにグラスを残すか、無理して一口だけ飲むかの二択になります。

「あ、はい」と流したあとは、グラスに口をつけないまま置いておくか、注がれるたびに少しずつ減らして時間をやり過ごすかのどちらかになりがちです。どちらも神経を使う割に、誰の得にもなりません。

体質だからではない。言った瞬間に立場が下がる気がするから言えない

飲めないと伝えると失礼にあたる、場が白ける——そう思って言えないと思われがちです。ですが本当の理由はそこではありません。伝えた瞬間、相手が気を使う側に回り、自分と相手が対等じゃなくなる気がするから、つい濁してしまうのだと思います。

切り出せない型かもしれません

これは切り出せない型に近いかもしれません。まだ仕事をしたことのない相手に、仕事の話を切り出せない型です。飲めないという条件も、値段の話も、次に会う約束も、切り出す場所はいつも同じです。だから同じところで止まります。取引先や目上の相手であればなおさらです。関係がまだ浅いうちほど、条件を一つ出すだけで下手に見られるのではないかという不安が強くなります。

お酒を飲むと体内にできるアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)をつくる遺伝子が、生まれつき2本とも弱いホモ欠損型の人は日本人の1割弱、1本だけ弱いヘテロ欠損型の人は3割強です。合わせると、決して少なくない人が「飲めない・弱い」体質にあたります。特殊な事情ではなく、先に伝えておく条件のひとつとして扱っていい話です。

この記事で渡す方法はひとつだけです。「その場で断る」をやめて、「誘いの返信の時点で伝えておく」に変える。以降の見出しは、すべてこの一つの分解です。

断り方より、最初の1杯の注文の仕方で決まる

聞かれてから断るとNoになる。自分から言うと注文になる

聞かれてから断るとNoになり、自分から先に言うと注文になる比較図

幹事が全員に「とりあえず生で大丈夫ですか」と聞く前に、自分から先に「私はノンアルコールビールで乾杯させてください」と言ってしまう。順番を一つ入れ替えるだけで、断る場面そのものが発生しなくなります。聞かれてから答えると返事は常にNoになりますが、自分から言えば最初から注文になります。

言い方は3点セット

体質・代替・場への肯定、この順で言うとそれ以上聞かれません。

  • ①体質:「飲めない体質でして」
  • ②代替:「ノンアルで」「ウーロン茶で」
  • ③場への肯定:「乾杯はご一緒させてください」

NG例:

  • 「いや、大丈夫です」→ 大丈夫の中身が伝わらず、もう一度聞かれる
  • 「あまり飲めなくて…」→ 量の話にすり替わり、「少しなら」と勧められる
  • 「少しなら…」→ 1杯目が2杯目を呼ぶ

濁した言い方は、勧める側に余地を残します。同じやりとりが3回繰り返されるのは、たいてい最初の一言が濁っているからです。

実際に使うとこうなります。「幹事さん、生ビールの前に一つだけ。私は体質でお酒が飲めないので、ノンアルコールビールで乾杯させてください。もちろん場にはご一緒します」。ここまで言えば、それ以上聞かれることはまずありません。

ノンアルは今は「代わり」ではない

サントリーの調査では、ノンアルコール飲料を月1日以上飲む人の約7割が「何かの代わりではなく、積極的に選んでいる」と回答しています。「飲めないからノンアル」ではなく「これが飲みたい」で頼める言い方に変えるだけで、注文の重さが変わります。同じ調査では7割以上が、今後飲食店でノンアルコール飲料を飲める機会が増えることを希望しています。頼むこと自体が浮く場面は、以前より減っているとみられます。

乾杯のグラスの形だけ、周りと揃えておくと視覚的に浮きません。ジョッキならジョッキ、ワイングラスならワイングラス。中身の説明は、聞かれない限り自分からしなくていい話です。

誘われた返信の1行で、当日の断りを全部終わらせる

前日までに伝えると準備、当日席で言うと恥をかかせる

返信で伝えると準備、当日に言うと恥になることを示す時間軸図

店を押さえたあとに飲めないと分かると、相手は「気づけなくてすみません」と言うしかなくなります。黙って我慢するほうが控えめに見えて、実は相手に気を使わせています。ここは受け手側の視点で一度ひっくり返して考えたほうがいい場所です。

返信テンプレは1行

誘いの返信に、この一行を足すだけで十分です。

「ありがとうございます、ぜひご一緒させてください。お酒は体質で飲めないのですが、その分ゆっくりお話しできればと思います」

理由の説明は長く書かないでください。長いほど詫びに読めます。返信で一度伝えておけば、当日は注文の場面で3点セットを添えるだけで足ります。同じ説明を2回する必要はありません。

店を選べるなら自分が取る

飲めない側が幹事を引き受けると、ノンアルコールの品数がある店、個室、コースの終わり時間まで自分で決められます。飲まない人こそ、場を作る側に回れます。対面営業の作法で言えば、会食は酒を飲む場ではなく、次に会う口実を一つ持ち帰る場です。店を選ぶ権限を持つと、その口実の作りやすさも変わります。

二次会に行くかどうかは、行く前に自分の中で決めておきます。一次会だけで失礼するのか、二次会は顔を出して30分だけにするのか。その場で決めようとすると、勢いに押されて断れなくなります。

「一杯だけなら」に応じるかどうかの判断基準

体質で飲めない人は、一杯も選ばなくていい

飲めない体質・弱い・今日は飲まないの3パターン別の答え方の分岐図

お酒を飲むと体内にできるアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)をつくる遺伝子が、2本とも弱いホモ欠損型の人は、少量の飲酒で血液中のアセトアルデヒド濃度が急激に上がり、顔が赤くなる・吐き気や頭痛が出るといった激しいフラッシング反応を起こします。1本だけ弱いヘテロ欠損型の人にもフラッシング反応が起こるため、飲まない人や少量にとどめる人が多くみられます。付き合いで飲む量を減らすかどうかという話ではなく、体質の話です。一杯も選ばなくていいという判断があっていいはずです。

飲める体質の人は、数字で自分の線を持つ

飲める体質の人は、「何杯まで」ではなく「純アルコール何gまで」で自分の線を決めておくと、その場の空気に流されにくくなります。純アルコール量(g)は、摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8で計算します。ビール500ml(度数5%)なら純アルコール量は20gです。生活習慣病のリスクを高める量は、1日あたりの純アルコール量で男性40g以上、女性20g以上とされています(これは個々人の許容量を示したものではありません)。アルコールの影響を受けやすい体質を考慮する必要がある場合は、より少ない飲酒量とすることが望まれるとされ、女性は男性に比べて少量かつ短期間の飲酒でアルコール関連肝硬変になる危険性が高まるとされています。

3パターンの答え方を先に用意しておく

その場で考えると濁ります。先に3つに分けておくと、聞かれた瞬間に答えが出ます。

パターン答え方理由の出し方
①飲めない体質断り切る体質の一言だけで十分
②弱い乾杯の一杯だけ、以降はノンアル最初に宣言しておく
③飲めるが今日は飲まない運転・服薬・翌日の商談理由を具体的に言う

NG例: 飲めないのに「今日は車なので」と事実でないことを言う。次に電車で来た日に食い違います。

ハイボールや日本酒にも度数の表示があるので、同じ式に当てはめれば、その日飲んだおおよその量を自分で把握できます。

どのパターンに当てはまるかは、会食に向かう前に自分の中で決めておきます。当日その場で考えると、相手の顔色を見て甘くなりがちです。

飲まない人の方が、会食では有利になる

最後まで話の中身を覚えていられる

素面の利点である記憶・メモ・役回りの3つを示す放射状の図

相手が3杯目に話したことを、翌朝そのまま思い出して返せます。飲んだ側は覚えていないことがあるので、「昨日おっしゃっていた◯◯の件ですが」の一言が効く相手は、実は飲まない側のほうが多いはずです。

メモに残すのは1つだけ

出身地や趣味ではなく、相手が困っていることを1つだけ拾います。帰りの電車で3行だけ書いておく。誰が、何に困っていて、いつまでのことか。次に連絡する口実は、ここからしか出てきません。

たとえば会食の相手が「営業までひとりで手が回っていない」とこぼしたとします。その一言だけメモに残しておけば、後日、力になれそうな話があったときに、それをきっかけに連絡ができます。

飲まない人にしかできない役回りを取る

会計の段取り、タクシーの手配、上着や忘れ物の確認、店の予約。素面だからこそ気づけて、動けます。翌日「昨日は助かりました」と言われる位置に立てると、次の会にも呼ばれます。

NG例: 飲めない負い目から場を盛り上げようとして、自分がしゃべり続ける。聞くために来たはずの席が、説明の席に変わってしまいます。

勧められたとき/自分が誘う側になったときの線引き

勧める相手を責めない返し方

NPO法人ASKが示すアルハラの定義5項目では、本人の体質や意向を無視して飲酒をすすめること、宴会に酒類以外の飲み物を用意しないことなどが挙げられています。とはいえ、その場で「それはアルハラです」と言い返す場面ではありません。断りは同じ言葉で1回だけ繰り返します。言い換えると、かえって弱く聞こえます。

3回目まで来たときの逃げ道

グラスを空にしない。注ごうとされたらグラスに軽く手を添える。相手のグラスに先に注いで、話題を相手側に戻す。「今日はもう十分いただきました、ありがとうございます」と言いながら相手のグラスに注ぎ返すと、自然に流れが変わります。表情はにこやかなまま、動作だけで断ると、相手も引っ込めやすくなります。席を立って逃げると「気を悪くさせたか」があとに残るので、席の中で処理したほうが後腐れがありません。

自分が誘う側になったら先に一言聞く

ASKは、会席にはアルコール以外の選択肢を用意することを求めています。飲めないことを侮辱する、無理強いする、知らぬ間にアルコールをコップに入れる、といった行為は重大な人権侵害とされています。飲む飲まないは個人の自由であり、体質的に飲めない人や、飲んではいけない事情がある人がいることも前提として置かれています。アルハラにあたるかどうかの具体的な判断や社内での対応は状況によって異なるため、人事労務の窓口や社労士など専門家に相談することをおすすめします。

誘いのメッセージに「お酒は召し上がりますか」の一言を入れておくと、相手が同じ思いをしなくて済みます。「お酒は召し上がりますか、それとも他のものがよろしいですか」くらいの聞き方であれば、深刻に聞こえず気軽に答えてもらえます。自分が言えなかった側だったからこそ、誘う側になったときに先回りできます。

そのまま使える文例集(5場面・NG例つき)

5場面の文例

場面OK文NG文
誘われた返信ありがとうございます、ぜひご一緒させてください。お酒は体質で飲めないのですが、その分ゆっくりお話しできればと思いますすみません、飲めなくて
乾杯の注文私はノンアルコールビールで乾杯させてくださいあまり飲めなくて…
勧められたときありがとうございます、今日はこちらで大丈夫ですちょっとだけなら
二次会今日はここで失礼します、また誘ってくださいすみません、明日早いので
翌日のお礼昨日は◯◯のお話、勉強になりました。次は資料をお持ちします(お礼だけで終わる)

NG例の理由:

  • 「すみません、飲めなくて」→ 謝ると相手が気を使う
  • 「体質的にアルコールを受け付けない身体でして…」→ 説明が長いほど詫びに読める
  • 「ちょっとだけなら」→ 1杯目が2杯目を呼ぶ
  • 二次会で「すみません、明日早いので」だけ→ 次の約束が残らない

相手別の調整

初対面の相手には、体質と代替の2点だけ短く伝えます。「お酒は体質で飲めないのですが、乾杯はご一緒させてください」で十分です。すでに面識のある相手には、体質の説明は省いて「今日もノンアルで」の一言で通じます。目上の相手には、「乾杯だけご一緒させていただきます」とグラスの形を揃え、場の体裁だけ合わせます。

どの文例も最後の一行を足す

「飲めないので」で終わらせないでください。「次は◯◯の件、資料をお持ちします」「来月、店を探しておきます」まで足して、初めて会食が営業になります。翌日のお礼は昼までに、相手が話した内容を一つ引用して送ります。

飲めないことは、断る理由ではなく、営業の材料にできます。断る場面をなくし、注文と返信の一行で先に片づけておけば、あとは飲まない側だからこそ持ち帰れるものに集中できます。話の中身、相手が困っていること、次に会う口実。会食が終わったときに手元に残るのは、飲んだ杯数ではなく、それだけです。

よくある質問

接待でお酒を断るのは失礼ですか?

断ること自体は失礼にあたりません。角が立つのは当日その場で濁すことです。誘いの返信時に「体質で飲めない」と一行伝えておけば、相手は店選びの段階で準備できます。飲めない人への無理強いや、酒類以外の飲み物を用意しないことは、NPO法人ASKが示すアルハラの定義に含まれます

「一杯だけなら」と勧められたらどうすればいいですか?

体質で飲めない人(少量でフラッシング反応が出る人)は一杯も選ばなくてよいです。飲める体質なら杯数ではなく純アルコール量で線を決めておきます。ビール500ml(5%)で20gです。断るときは同じ言葉を1回だけ繰り返し、言い換えないようにします

会食でお酒の代わりに何を頼めばいいですか?

ノンアルコールビール、ウーロン茶、炭酸水が定番です。乾杯のグラスの形だけ揃えれば浮きません。サントリーの調査では、ノンアルコール飲料を月1日以上飲む人の約7割が「何かの代わりではなく積極的に選んでいる」と回答しており、同じ調査で7割以上が飲食店で飲める機会の増加を希望しています

お酒が飲めないと営業で不利になりますか?

不利になるのは飲めないことではなく、黙って我慢して次の約束を持ち帰らないことです。飲まない側は最後まで話の中身を覚えていられ、翌朝一番に相手の言葉を引用して礼が出せます。会計やタクシーの段取りも取れるので、次の会にも呼ばれやすくなります

体質のことを言いたくないときは、どう伝えればいいですか?

「飲めないので」だけで十分で、理由の説明は要りません。ただし飲めるのに「車なので」「薬を飲んでいて」と事実でないことは言わないでください。次に電車で来た日に食い違います。日本人の1割弱がほとんど飲めない体質、3割強が弱い体質とされています

参照した情報源

  1. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚生労働省)・確認日 2026-08-13
  2. 2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)(厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム))・確認日 2026-08-13
  3. アルハラの定義5項目(特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会))・確認日 2026-08-13
  4. アルハラ防止6つのポイント(特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会))・確認日 2026-08-13
  5. ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査 サントリー ノンアルコール飲料レポート2025(サントリーホールディングス株式会社)・確認日 2026-08-13

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